メディア戦略企業のマグナグローバル(Magna Global)とメディアエージェンシーのゼニス(Zenith)が発表したレポートは、中国の広告市場が諸外国の主要な広告市場を上回るペースで成長を続けること、2017年にはついにデジタル広告支出がテレビ広告支出を上回ることを予測している。
新しい年まで残り2週間を切った。来年の広告市場を予測する時期の到来だ。
メディア戦略企業のマグナグローバル(Magna Global)とメディアエージェンシーのゼニス(Zenith)がそれぞれ発表したレポートは、中国の広告市場が諸外国の主要な広告市場を上回るペースで成長を続けること、2017年にはついにデジタル広告支出がテレビ広告支出を上回ることを予測している。調査担当者らはまた、広告市場における世界的な増加部分のほぼすべてをモバイルが占め、ソーシャル動画がモバイルの成長を牽引する主力になると予測する。
本記事では、2017年の世界広告市場の展望を、5つのグラフとともに説明する。
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成長を続ける中国
マグナのデータによると、2016年の広告売上は、米国市場のみで約1800億ドル(約21兆円)と予測され、世界全体の約37%を占めるという。米国市場は依然として中国市場のほぼ2倍の規模だが、中国における広告支出は米国との差を縮め続けるとみられる。米国を別にすると、中国はほかの諸外国を撃破しつつある。
中国の広告市場に成長をもたらしている要因には、同国の規模や、国民1人あたりの国内総生産(GDP)の増加、オンライン接続環境の改善などが考えられると、調査会社フォレスター(Forrester)のアナリスト、ブランドン・バーブロウ氏は語る。

米国を除く主要国の広告支出(インフレ調整後)
デジタルがテレビを上回る
ゼニスのデータによると、北米では2017年、デジタル広告支出がテレビ広告支出をはじめて上回る見込みだという。ゼニスは、テレビへの支出が伸び悩む一方、デジタルへの支出は増加し続けると予測する。
「この逆転がいずれ起きることはわかっていた」と、ゼニスでパブリケーションマネージャーを務めるアン・オースティン氏は語る。「それはいつかという問題に過ぎなかった」。

北米の広告支出(インフレ調整後)
変化する支出の内訳
2016年と2019年の世界広告支出の内訳を比較すると、モバイルがシェアを伸ばす一方、ほかの主要な広告セクターは軒並みシェアを減らすと予測される。
「モバイルは、ソーシャルメディアへの参加、メールの利用、(モバイルアプリを介した)ブランドや小売店との関わりに最適なデバイスであることに加えて、アドブロックソフトウェアの影響を受けないし、適合率と反応率を高める重要な位置情報をマーケターに提供する場合も多い」と、調査会社レリバンシーグループ(Relevancy Group)で調査担当バイスプレジデントを務めるニック・アインシュタイン氏は指摘する。
モバイルが成長を独占
ゼニスの予測によると、広告支出に占めるモバイルの割合が増加するとともに、モバイルは広告支出の増加部分を実質的にすべて吸い上げるという。とりわけデスクトップ広告は、モバイル広告の急増と対照的に減少が見込まれている。
「詰まるところ、どこで広告支出が増えるのかを予想するには、どこで人々がもっとも長く時間を過ごすかを調べる必要がある」と、調査会社アルティミターグループ(Altimeter Group)のアナリスト、オマー・アクタル氏は語る。「この問いに対する答えは、ますますモバイルになりつつある」。

セクター別の世界広告支出の変化(2016年と2019年の比較)
ソーシャル動画の成長
ソーシャル動画は、予測されるモバイルの成長を牽引する主力になる。Facebookの「ライブ動画」からSnapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」まで、各プラットフォームは近年、動画プロダクトを強化しており、この傾向は今後も続くだろうと、調査担当者らは予測する。マグナによると、ソーシャル動画への広告支出は、2016年の約20億ドル(約2300億円)から2018年の80億ドル(約9200億円)に跳ね上がる見込みだという。
「モバイルの利用時間の多くはソーシャルにあてられるので、モバイル動画消費の高まりはソーシャル動画に恩恵をもたらすだろう」と、バーブロウ氏は語る。「私の予想では、ソーシャルプラットフォームが動画の推進に一層力を入れることも、ソーシャル動画消費が増加する一因になるだろう」。

米国におけるソーシャル動画広告支出の推移
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Creative Commons