デジタル広告市場における、GoogleとFacebookの勢力拡大に気をもむパブリッシャーは多い。だが、米デジタルエージェンシー360iのCEO、ブライアン・ウィーナー氏によると、こうした不安は見当違いなのだそうだ。
「GoogleとFacebookが最大手であることに異論の余地はない。だが、デジタル広告市場は、20%以上の成長率を示している」と、ウィーナー氏は米DIGIDAYのポッドキャストで述べる。
デジタル広告市場における、GoogleとFacebookの勢力拡大に気をもむパブリッシャーは多い。だが、米デジタルエージェンシー360iのCEO、ブライアン・ウィーナー氏によると、こうした不安は見当違いなのだそうだ。
GoogleとFacebookが収益の大部分を支配していても、デジタル広告分野は成長市場。だから、パブリッシャーが差別化した広告プロダクトを販売する機会は、十分に残されている。両社がうまくやっている分野で、パブリッシャーは競合しようと焦らなくていいのだ。
「GoogleとFacebookが最大手であることに異論の余地はない。だが、デジタル広告市場は、20%以上の成長率を示している」と、ウィーナー氏は米DIGIDAYのポッドキャストで述べる。
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「2016年におけるこの分野は、500億ドル(約5兆円)市場になる見込みだ。そのうち、GoogleとFacebookが市場の3分の2を占めることになる。多くの企業が市場シェアの行く末を心配しているようだが、これは間違いだ。成長市場においてフォーカスすべき対象は、サービスの行き届いていない部分であり、業界のリーダーではない」。
以下、ポッドキャストにおけるウィーナー氏の発言のハイライトを紹介する。
ブランディングが苦手なネット広告
GoogleとFacebookは、デジタル市場のダイレクトレスポンス広告でほかを圧倒している。膨大なユーザーデータと高度なターゲティング能力をもつ両社は、ダイレクトマーケターにとっては夢のような広告出稿先だ。しかし、実際は需要創出側とのあいだに大きなギャップがあり、ブランド広告は遅れを取ったままだと、ウィーナー氏は指摘する。これまでのインターネット広告は、ブランディングが「ひどく下手」だったのだ。
「検索広告を通じて、プロダクトやサービスとのエモーショナルなつながりを作ろうとしてもうまくいかない。そして、それこそ我々が全力で臨む勝負どころになる」と、ウィーナー氏。「いかにしてインターネットをエモーショナルなつながりを作る体験に、またプロダクトを差別化する体験にできるか。そして、それを、どうすれば大きな規模で展開できるかだ」。
また、コンテンツパブリッシャーであれば、記事が読まれているときに広告の効果は高くなると、ウィーナー氏は語る。「なぜなら、記事を読んでいるときはゆっくりとスクロールされるが、ニュースフィードでは視認される前に、さっさとスクロールされてしまうからだ」。
アドブロックはパブリッシャーの責任
ことわざにもあるように、太りすぎた豚は肉にされる(強欲は身を滅ぼす)。これと似た力学が、デジタルメディアの世界にも働いている。
広告料の低下を受けたパブリッシャーの対応は単純で、ページ数を増やしてより多くの広告を掲載するというものだった。当然の帰結として、コモディティ化はさらに進み、ユーザー体験は耐え難いほど悪化。ユーザーがアドブロッカーを導入するに至った。
ウィーナー氏は、パブリッシャーに必要なのは、売上を犠牲にしてでもサイトを大改修することだと話す。さもなければ、メディアバイヤーに対して「プレミアム」を名乗る資格はない。
「広告の観点からも、ユーザーの怒りを買ったという意味でも、パブリッシャーは自らプロダクトの価値を下げてしまった。いま必要なのは、身を削ってでもプレミアムな体験を創出すること。たとえ一時的な売上減となっても、そこにこそブランディングのチャンスがある」。
3番手はベライゾンではなくスナチャ
マーケターは得てして、人々の生活のより中心にあるメディア企業と仕事をしたがる。これはデジタルメディアに関しても、アナログメディアの場合と同様だ。
米大手通信キャリアのベライゾン(Verizon)は、AOLと米ヤフーを買収したいま、GoogleとFacebookに次ぐナンバー3の座を狙っている。ベライゾンは2020年までにサービス利用者20億人という目標を掲げ、データ解析の強化を計っている。
ただし、ウィーナー氏によると、ベライゾンが買収によって取りそろえた資産には、重要なものが欠けているという。それは、人々の日常生活に組み込まれた体験を提供できるサービスをもっていないという点だ。
「Facebookやインスタグラム、Snapchat(スナップチャット)のように、サービスへ再訪したくなるような、引き込まれる魅力をもったプラットフォームがない。実際には、3番手になる最高のポジションにいるのは、ベライゾンではなくSnapchatだ。我々は常々、Snapchatに注目すべき理由をクライアントに説明している」と、ウィーナー氏は語った。
Snapchatのメディア移行は気まぐれ
Facebookや最近のSnapchatなどのプラットフォームは、広告主のニーズにフォーカスすることなく、数億人のユーザー規模にまで成長してきた。しかし、そうしたプラットフォームも、移り気なユーザーの期待に応えることと、競争力のある広告プロダクトを展開することのバランスを、見い出すべき段階を迎えている。Snapchatの場合、そのプロセスは「気まぐれに」進んできたと、ウィーナー氏は話す。
「過去6~8カ月で、Snapchatは営業部門を巧みに強化してきた。彼らにとって営業は、以前はまったく優先事項ではなかったはずだ。Snapchatの評価額が示すとおり、コンシューマーファーストに注力するという彼らの優先順位は正しかった」と、ウィーナー氏。「その後、ターゲティングと効果測定については大きく進歩したが、まだまだ成長の余地はありそうだ。巨大プラットフォームになることを目指す前に、効果測定をさらに高度化する必要がある」。
「また、エージェンシーとマーケターのエコシステムも、メッセージングプラットフォームにもっと慣れるべきだ。成熟するまでには、しばらく時間がかかるだろうが」。
Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)