アドテク業界は、いくつかの倒産劇を含む数年間の苦境を乗り越え、再び一般投資家から支持されるようになった。この好調を支えているのは、デジタルメディアへの支出を倍増させているブランドと、上場した企業の輝かしい成功事例だ。だが、すべてのCEOがこの流れに乗る必要はないと、業界の幹部らは述べている。
アドテク業界は、いくつかの倒産劇を含む数年間の苦境を乗り越え、再び一般投資家から支持されるようになった。だが、すべてのCEOがこの流れに乗る必要はないと、業界の幹部らは述べている。
投資銀行のLUMAパートナーズ(LUMA Partners)によれば、株式市場に上場したアドテク企業の数は20社を超えているという。わずか1桁台だった2年前とは隔世の感だ。
この好調を支えているのは、デジタルメディアへの支出を倍増させているブランドと、上場した企業の輝かしい成功事例だ。トレードデスク(The Trade Desk)の時価総額が約400億ドル(約4兆6170億円)となり、IPG、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)、WPPの2倍以上に増えたのはその一例に過ぎない。SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)についてはいうまでもないだろう。
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「いまは狙うべき時期ではない」
だが、何事にも周期があり、すべての企業があわてて資金の獲得を目指す必要はないと、SSP(サプライサイドプラットフォーム)の上場会社マグナイト(Magnite)でCEOを務めるマイケル・バレット氏はいう。同氏は、業界情報メディアのアドエクスチェンジャー(AdExchanger)がニューヨークで2月22日に開催した「インダストリープレビュー(Industry Preview)」カンファレンスのパネルディスカッションで、自身の考えを披露した。
上場を強く希望している他のCEOへのアドバイスを求められたバレット氏は、こう答えている。「どうしてもお金が必要というわけでないなら、待ったほうがいい。(中略)昨年は上場した(アドテク企業の)数が多すぎた。これは否定的な意味でいっているわけではなく、素晴らしい会社になるチャンスはどの企業にもあるということだ」。
パネルディスカッションのモデレーターを務めたLUMAパートナーズのCEO、テレンス・カワジャ氏によれば、今後数カ月間以内に株式市場にデビューすることを検討している業界の企業は、最大で8社に上る可能性があるという。この発言を受けて、バレット氏はさらに自身の考えを説明した。「いまのダイナミックな状況だけを踏まえても、フィデリティ(Fidelity)がアドテクに出資できる金額から考えて、(中略)さらに8つもの選択肢は必要ない。したがって、今すぐ資金を必要としていないのなら待つべきだというのが私のアドバイスだ」。
コンテンツ検証企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)のマーク・ザゴルスキー氏もパネリストとして参加し、「絶好の機会を狙っているのなら、いまは狙うべき時期ではない」と注意を促した。同氏は、2021年4月にニューヨーク証券取引所に上場した同社でCEOを務めている。「目指すべきは、会社を支え、上場に最適な場所に持っていくことだけだ。良い会社であればいつでも上場できる」。
上場することの目的を明確に
また、効果測定企業インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)でCEOを務めるリサ・アッツシュナイダー氏もパネリストとして登壇し、上場のスピードよりも上場の目的を明確にするよう忠告した。そのうえで、「明確なビジョンを定め、確固たるプランを練ること(が必要)だ。そして、繰り返しになるが、急いではいけない」と付け加えた。同社は2021年6月にNASDAQに上場している。
マグナイトは2月23日、2021年第4四半期の売上高が1億6100万ドル(約185億8500万円)となり、前年同期比で97%増となったことを明らかにした。この成長をけん引したのは、急成長を続けるCTV(コネクティッドTV)市場に注力し、この市場での売上が全売上高の40%以上を占めたことにある。
一方、インテグラル・アド・サイエンスとダブルベリファイは、それぞれ3月3日と3月8日に第4四半期決算を発表する。
[原文:Public ad tech CEOs: ‘If you don’t need the capital right now, then wait’]
RONAN SHIELDS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)