結婚式を2021年まで延期していたカップルも、今年はもう待てないだろう。実際、来年を待たずにカジュアルなスタイルの既製品ドレスの購入を検討するブライドが増えているという。新型ウイルスの感染拡大が懸念される間は豪華なウェディングを避け、 駆け落ち婚 (エロープメントウェディング)、つまり小さな結婚式にする考えだ。
新型コロナウイルス感染者数が再び増加傾向にあるなか、婚約中のカップルには、できるうちに結婚式を挙げようと、ジュエリーやドレスを購入して結婚式の準備を始めた人たちもいる。
2021年4月、老舗ブライダルサロン、クラインフェルド(Kleinfeld)の共同経営者、マラ・アーシェル氏は米モダンリテール(Modern Retail)のインタビューに、ウェディングは「もう先延ばしにする必要なし」と話していた。花嫁と花婿は皆、間もなくやってくるポストコロナの未来のために、もう一度凝りに凝った結婚式の準備に着手した。それからわずか4カ月。今度は新型コロナウイルスの変種株が猛威を振るいはじめ、感染者数が再び増加の一途をたどっている。その一方、ホテルやブライダル関係者の間には、「顧客は結婚式の再延期にうんざりしている」という声が聞かれるという。
小規模な結婚式が人気
2020年は結婚式の計画を白紙に戻し、2021年にやり直そうと考えていたカップルにしてみれば、今年はもう待てないだろう――そう話すのはデイビッズ・ブライダル(David’s Bridal)のシニアバイヤー、ケルシー・ハーン氏だ。実際、来年を待たずに、カジュアルなスタイルの既製品ドレスの購入を検討するブライドが増えているという。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている間は、豪華なウェディングを避けて、いわゆるエロープメントウェディング(直訳で「駆け落ち婚」)、つまり小さな結婚式にしようという考えだ。
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同じような消費者行動に気づいたブランドはほかにもある。たとえば、オンラインで手頃なドレスを提供するブライダルブティック、アザジー(Azazie)では、2020年と比較すると、即納できるドレスの売上が2020年に比べて年間で200%増加し、直近4週間は前週比が70%増を示した。米国とカナダで293店舗を抱える前述のデイビッズ・ブライダルでは、独自の顧客向けロイヤリティプログラムに今年加入した花嫁の75%は近々挙式を予定している。7月だけを見ても、6カ月以内に結婚式を挙げる予定だとするロイヤリティプログラム加入者は5%増加している。
「パンデミックがピークを迎えた、秋から冬は小規模な結婚式が人気を博した」とハーン氏。「そして、春が過ぎ、夏になり、ワクチン接種が始まると、豪華な式への回帰が確実視されていた。……しかし残念ながら、デルタ株が猛威を振い始めたため、私たちは、規模の小さな結婚式へと舵を切り始めている」。
カジュアルスタイルが好まれる傾向に
アザジーCMOのラヌ・コールマン氏によると、カップルは再び安全を優先しなければならない状況にあるいう。「新型コロナウイルスのデルタ株の先行きが不透明であるうえに、新たな変種株が明らかになるなか、招待客の安全を最優先に考えると、エロープメントウェディングという選択肢はますます人気が高くなっている」とコールマン氏。
アザジーは、オートクチュールのスタイルも提供しているが、サイトでは現在、既製品ドレスの販売を促進している。即納タイプのドレスは70%オフの最終セールを展開中。サイトのトップページや各ページのバナーでは、一部のブライドメイド用ドレスの「毎日出荷」プロモーションも実施している。
デイビッズ・ブライダルのハーン氏によると、同ブランドでは、既製品が注目されるようになったおかげで、白いジャンプスーツやワンピースのほか、式の後にも着られるオシャレなドレスなど、カジュアルテイストの強いスタイルも売上が伸びているという。ここ数カ月にわたるこうした顧客の好みの変更に対応するため、「リトル・ホワイト・ドレス」コレクションを拡充している。また、ユニークなサイトを構築し、花嫁のカジュアルな装いが映えるさまざまなシーンも紹介している。
「私たちは変化し続けるウェディング市場で常に柔軟に対応し、花婿・花嫁たちに寄り添い続けている」とハーン氏。
以前は「ウェディングドレス」というと、オーダーメイドドレスを扱うブティックが6カ月から9カ月かけて一着一着仕立てて販売するのが一般的だった。しかし、新型コロナウイルスの感染状況が2~3カ月先でさえ不透明な今、ブライドには従来のようなゆったりとした計画を立てる余裕はない。
デイビッズ・ブライダルには、ふんだんに時間をかけて仕立てられたオーダーメイドのドレスを提供するブティックも300店舗近くあるが、新しい「リトル・ホワイト・ドレス」では90%のドレスが即納可能である。
「ブライダルの売上自体には影響ない」
豪華な結婚式のニーズが再び鈍化する可能性はあるものの、ハーン氏によると、ブライダルの売上自体には影響ないという。2021年4月の時点で、デイビッズ・ブライダルのマーケティング&IT部門担当役員、ケリー・クック氏が米モダンリテールのインタビューに対して、2021年の結婚式関連の売上は、2020年と比較すると「20%から50%」上昇すると答えていたが、新型コロナウイルスの感染者数が増加している現在も、この数字は変わらないとシニアバイヤーのハーン氏は話す。
「結婚式をさらに先延ばししたい人などいない」とハーン氏。「お客さまはこれまですでにおそらく2~3回は計画を変更してきた。もう結婚式を挙げたいはずだ。実際、たとえ招待客の数を減らして、式の規模を縮小したとしても、延期せずに挙式しようと考えているカップルが増えている。だから、当社の予測も変更していない」。
[原文:Brides embrace ready-to-ship styles as elopements are on the rise]
Maile McCann (翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)