「ブランド幹部はデジタル理解が驚くほど欠けている」:不満を抱えたマーケターの告白

本来なら、ブランドとエージェンシーは、ともに手を取り合いプロジェクトを進行させていく同士のようなものだ。だが、うまくいくことばかりではない。人間が集まれば、軋轢が生まれ、行き違いも生じることだろう。

アメリカのエージェンシーは、クライアントへそれなりにイラ立ちを覚えており、その思いは当然なものであることが多い。しかし一方で、逆方向の不満もかなり存在する。

エージェンシーの経験もあるブランド側のデジタルマーケターにその不満を告白してもらった。現在、この彼は主にデジタル部門で働いており、この業界のインチキの多さを嘆いている。以下にやりとりの抄録を紹介する。

マーケターの仕事は、ブランドの社内でどう理解されている?

会社のヤツらはまず、押せば口コミが広がるようなボタンがあるものと思い込んでいる。魔法のようにファンを獲得できるんだってね。「某ブランドは500万人のファンがいるじゃないか。何でうちにはいないんだ?」と比較する。その答えはたいてい、その某ブランドはマーケティングにうちの10倍お金を使っているから、というものだ。「箱を作れば向こうからやってくる」という考え方がまだ存在するのにはびっくりだよ。

え、本当に? ブランド側の理解って、そんなものなの?

経営幹部らには、デジタルとソーシャルの理解が驚くほど欠けている。ある意味、一部の幹部は不安感を抱えているんだ。自分の結果に不安なものだから、その分、デジタルへの期待が大きくなる。デジタルを理解していないがゆえに、それを知られるのを怖がる。そして、インスタグラムの有力幹部にディナーへ連れて行かれたもんだから、「我々もインスタグラムに進出するべきだ」なんてことを言う。お断りだ。

プラットフォームがブランドのご機嫌を取ることはよくあるの?

ある。私自身は「ワインと食事で、もてなさなきゃ」と思われるようなクライアントであったことはない。でも、そういうことはある。実は、酒席の接待という意味では、プラットフォームがエージェンシーの座を奪いつつある。要はどちらが上か見せようとする、FacebookとTwitterの戦いなんだよ。 エージェンシーは、豪華なディナーは減らし、誕生日を覚えてくれているなど、日常的な交流を増やしている。いいものだと思うよ。

エージェンシー側とブランド側のいちばん大きな違いは何?

エージェンシーの方がインチキに優しい。エージェンシーの世界が内部の説明責任から守ってくれるんだ。クライアントのCEOやCMOが喜んでいなくても、エージェンシーにいるとブランド側の人間ほどそれを感じない。一定の無関心がある。

ただ、エージェンシー側であることの問題は、犠牲にされやすいということだな。MBAをもっている大口クライアントがいれば、そのクライアントはいつもエージェンシーが悪いんだと言っていると思うよ。言わせてもらうと、クライアントは自分たちが提案を承諾したことを認める必要があるよね。

インチキと言ったね。

ああ、エージェンシーの人間には妙な地位ができあがっているよね。だから、チーフエバンジェリストの肩書きがある幹部なら、インチキにもなりやすいと思うよ。

そうしたエージェンシーのソートリーダー(オピニオンリーダー、思想的リーダー)のなかには、公的なペルソナがあってクビにするのは危険が伴うという理由で、安泰なヤツらもいるんだ。きっと、CCO(最高コミュニケーション責任者)なんかでも、会社にそれほど貢献していないかもしれないけど、フォロアーが多いステキなTwitterアカウントを持っているんだよ。

ブランドはエージェンシーをどう選ぶの?

新しいエージェンシーを探すなら、GoogleのほかにはTwitterアカウントを見るね。自分と同じように考える人を探しているから。エージェンシーのサイトじゃわからないんだ。

エージェンシーのウェブサイトのひどさときたら、まさに紺屋の白袴だよ。だから、自分とウマが合う人を探すのなら、Twitterを見るといい。R/GAのTwitterはにぎやかだろ。本当にあの会社があんなに楽しいのかは知りようがないけど、Twitterは素晴らしいよね。

ブランド社員たちが、ポンコツだと思うところは?

力のある地位にいる人たちは、新しく雇った人間が、デジタルについて自分たちより詳しいかもしれないということをわかっていない。私はSnapchat(スナップチャット)ユーザーとしてはそこまでではないけど、最高のSnapchatユーザーを雇っているよ。22歳のインターンのほうがよい戦略を持っているかもしれないことを気持ちよく認めることが必要なのだけど、MBAも米国のビジネス界もそんなことは教えてくれない。

私はできるだけMBAは雇わないことにしている。柔軟性がないんだよ。起用されたがっていたけど雇わなかった人がいてね。彼はTwitterアカウントを持っていなかった。ソーシャルメディアをまったく使っていなかったんだ。それでは駄目だよと私が言うと、正当化するメモを書いてよこした。そのMBAとはそれっきりだ。

ブランドの経営幹部たちは? 理解不足という話だったけど?

アイビーリーグに行って、会社を率いた、たくさんの人たちが、どこかの誰かがその番組を好きだと言ったからって、お金のかかるテレビ広告を買うんだよ。

通りを車で走っていて「ここに看板を設置するべきだと思った」という理由でで、たくさんのお金が費やされるのを見たことがある。うちにはお金をかけた大きなメディアチームがあるというのに。説明責任なんてものは存在しない。存在したのはインチキばかりだ。彼らは政治ゲームがいちばん得意なんだよ。

たとえば、どんな風に?

ヤツらはあとから自分を包み隠すのがとてもうまいんだ。ほかの部門を槍玉に挙げ、そいつらが期待以下だから採算が取れないんだという。

はっきり言って、いま現在、印刷がもっとも効果的な実施計画だと言っているヤツは全員嘘つきだよ。雑誌を取り上げて「この印刷広告はいいね」というミレニアル世代なんていない。

インチキはどうやって見抜けばいい?

会議でたいそうな主張をして大ボラを吹くけど、それで終わりというヤツはみんなそうだ。一方で、ずっと静かに「考えて」いるばかりで、何が進んでいるのかまったくわからないから「それについて考えてみよう」としか言わない人もいる。

そして最悪なのはソートリーダーたちだ。「考えをリードする」なんて大層な仕事だよと常々思っている。すごいね。月曜の朝はどんな様子なんだろうね? あまりに大きなものを考えるものだから、責任なんて絶対にとれないんだ。どの会社も、こうした人間を嗅ぎ出す最高ナントカ責任者を設ける必要があると思うよ。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)
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