独身の日に進化する、アリババの最先端「スマートストア」:単なるイベントから実験の場へ

巨大テック企業のアリババ(Alibaba)にとって独身の日(11月11日)は、たった1日で数百億ドルの売上をもたらすショッピングの祭典というだけではない。同社が小売業界にイノベーションを起こすべく、さまざまな実験を行う機会でもあるのだ。

アリババは今年、独身の日をプロモートする従来のイベントであるオープニング・ガラ(お祭り)、「see-now-buy-now(いま見て、いま買う)」スタイルのファッションショー、拡張現実(AR)モバイルゲーム「キャッチ・ザ・キャット(Catch the Cat)」に加えて、新たな試みを用意した。傘下のB2Cマーケットプレイス「Tモール(Tmall)」が、ARやモバイル決済といったアリババの小売テクノロジーを備えた60のポップアップストア(期間限定の実店舗)を、中国国内12都市52カ所のショッピングモールにオープンさせたのだ。アリババによると、この試みにはロレアル(L’Oreal)、ユニリーバ(Unilever)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、レゴ(LEGO)など100以上のブランドが参加したという。

「我々はこれまで、ブランドがひとつかふたつの新商品を先行販売するオンラインポップアップストアは(Tモール上に)何度も開設した。だが、独身の日に実店舗のポップアップストアを設置するのは、これがはじめてだ」と、アリババのプレジデント、マイケル・エバンス氏は語る。同氏はさらに、この実験はアリババの「新小売」構想に沿ったものだと付け加えた。アリババの調査によると、中国の小売市場において、オンラインの割合は18%に過ぎず、残りの82%は依然として実店舗での売上だという。そこでアリババは、在庫管理、店舗マネジメントから物流、決済に至るまで、小売業者がオンラインとオフラインの全事業を統合できるよう支援したいと考えている。

実験場としての「独身の日」

独身の日は中国における巨大イベントだ。アリババは今年、この日最初の数時間で90億ドル(約1兆円)近い売上を記録した。

「3年前、独身の日は単なるオンラインイベントだった」と、エバンス氏は振り返る。「昨年、我々は『新小売』構想の実現に着手し、今年はそれがショッピングの祭典の大きな割合を占めるまでになった」。

ロレアルのポップアップストアで「マジックミラー」を試す買い物客。Image credit: Alibaba

ロレアルのポップアップストアで「マジックミラー」を試す買い物客。Image credit: Alibaba

ポップアップストアの営業期間は10月31日から11月11日まで。ストアの目玉のひとつが「マジックミラー」と名づけられたデジタル画面で、買い物客はこれを使ってサングラスや化粧品、衣料品をバーチャルに試着できる。商品を気に入ったら、スクリーン上のQRコードをスキャンして、アリババのモバイル決済サービス「アリペイ(Alipay)」で購入できる。別の目玉が拡張現実(AR)ディスプレイエリアで、買い物客はここで商品画像をスキャンして、Tモールの商品掲載ページにアクセスしたり、クーポンを受け取ったりできる。また、ロレアル傘下の音波洗顔器ブランド「クラリソニック(Clarisonic)」は、ポップアップストアに自動販売機を設置し、レジの列に並ばなくても商品を購入できるようにした。

「独身の日のキャンペーン期間中、我々は常に新小売のコンセプトを試している。ポップアップストアはブランドが自社商品をPRするいい機会だ」と、エバンス氏は語る。「我々の狙いは、顧客の反応と売上の結果をモニターして、こうした小売におけるアイデアがさらなる投資に値するものなのか、それとも修正が必要なものなのかを判断することだ」。

小売業界のイノベーション

「新小売」戦略の一環として、アリババは今年の独身の日を前に、GAP、BOSE、カシオ計算機などのブランドを扱う「スモールストア」10万店を、国内の31省334都市にオープンさせた。ストアの目玉のひとつである「クラウドシェルフ」は、RFIDタグ対応のデジタル画面で商品タグを自動的に追跡したり識別したりできる技術だ。これにより、買い物客が画面の前に商品を置くと、その商品のTモールでの在庫状況やカスタマーレビューといった情報が表示される。気に入れば、客は商品のQRコードをスキャンして、Tモールで購入できる。

「クラウドシェルフ」を試す買い物客。Image credit: Sohu(中国のニュースサイト)

「クラウドシェルフ」を試す買い物客。Image credit: Sohu(中国のニュースサイト)

「またしても、アリババが小売業界のイノベーションの未来を示した」と、Tモールに出店しているスニーカー販売店「スタジアムグッズ(Stadium Goods)」の共同創業者、ジェド・スティラー氏は語る。「このようなスマートストアを使って、アリババは顧客に新たなショッピング体験を提供し、物を買う方法を変革し続けている」。

昨年の独身の日、アリババの取引総額は約200億ドル(約2.2兆円)だった。エバンス氏は今年の11月11日について、参加するブランドの数が去年の10万を大きく上回って14万になったと述べた。そのうち約6万が国外のブランドで、その数は昨年から「大幅に伸びた」という。

Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Header image via Alibaba’s company blog Alizila