モバイルアプリ、ビューアビリティ計測の落とし穴

デジタルメディア界にはいま、互いに相反する2大トレンドがある。「ビューアビリティ(可視性)の基準を強化しようとする動き」と「(特にアプリの)モバイルへのシフト」だ。

広告バイヤーらは、計測会社がパブリッシャーのアプリへの食い込みに苦労しているため、モバイルのビューアビリティに関して間違った報告を受けているという。実際、報告される数字と事実は異なる。アプリのインベントリー(在庫)に対するサードパーティーのチェックを受け入れるパブリッシャーが増えるまで、バイヤーは、クライアントに報告されるモバイルビューアビリティの数値がキャンペーンの真の成果を表していないことを認識すべきだ。

「間違っていることが多い」

「アプリ内を計測する本当にシンプルな方法はない、というのが一般通念だ」と、ゲームプラットフォームのジンガ(Zynga)でブログラマティック販売担当ディレクターを務めるリー・ガーフィールド氏は言う。ジンガの場合、アプリを通じた利用がおよそ80%を占める。「良きにつけ悪しきにつけ、そうした理由で、人々は認証会社の言い分を認めてしまう」。

22スクエアード(22squared)のアソシエイトメディア担当ディレクター、ケイティー・ファーマー氏は、自分が担当したクライアントのモバイルキャンペーンのいくつかについて、計測会社がインプレッション全体のわずか5%しか計測していなかったことに気づいてから、アプリ内ビューアビリティに関してベンダーが提供する数字に疑問を抱きはじめた。だが22スクエアードは、最低でもひとつのキャンペーンのインプレッションの30%を含まないようでは、そのサンプルが有効だとは考えない。

「それでも(ビューアビリティの)数字を報告してくるが、間違っていることが多い」と、ファーマー氏は語る。

アプリとモバイルウェブ

モバイルインプレッションのうち5%しか計測されなかったのは、パブリッシャーのアプリインベントリーを計測する手段がベンダーになかったからだ。キャンペーンはモバイルキャンペーンとして大々的に展開され、アプリとモバイルウェブとのあいだに区別はなかったが、ベンダーのレポートは、モバイルウェブから得られる数少ないインプレッションからキャンペーン全体の指標を導き出してしまった。

匿名希望のある広告バイヤーは、アプリでの購入の多くが表示不可と評価されてしまったせいで、モバイルキャンペーンのビューアビリティの平均がたった35%ということがあったと話してくれた。このバイヤーにとって、これは問題だった。クライアントであるブランドは、ビューアブルなインベントリーを購入するようエージェンシーに求めており、エージェンシーが売れ残りのインベントリーを購入し、ブランドの指示に従っていないと受け取ったからだ。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、ユーザーはいまや、デジタルメディア利用時間の58%をアプリ上で過ごしていることになるため、この種のことは業界全体にとっても厄介な話となる。

アプリ内計測に関して懸念を抱いている広告バイヤーは、アプリとモバイルウェブを分けてベンダーと契約することもできる。だがそうするには、バイヤー側でクライアントごとに2種類のタグを用意し、追加のデータセットをモニターする必要がある。バイヤーはさらに、ベンダーがアプリ内で設けている制限も認識しておく必要もあるだろう。

アプリ内のビューアビリティ

計測会社がアプリ内ビューアビリティを計測する方法はふたつあるが、それぞれに限界があると、計測会社フォレンジック(Forensiq)のデータ科学担当ディレクターであるアミット・ジョシ氏は指摘する。ひとつは、ベンダーがパブリッシャーにベンダー側のソフトウェア開発キット(SDK)を採用させることだ。これによりサードパーティーが機能をアプリに組み込めるが、ベンダーはそれぞれ独自のSDKを持っていて、それぞれのSDKを採り入れていくとアプリサイズが大きくなり、ユーザーは頻繁にアップデートをダウンロードしなければならなくなる。パブリッシャーもまた、開発者にSDKを組み込んでもらわねばならず、SDKの実装がレイテンシーの原因になることもありうる。

もうひとつの方法は、ベンダーがパブリッシャーのモバイルページにタグを設置することだと、ジョシ氏は言う。だが、この戦術は、モバイルウェブから記事を引き出しているアプリでしか使えない。アプリに直接アップロードする方がページ読み込みにかかる時間が短くて済むので、この方法を使うパブリッシャーは多くない。そのため、アプリ内のビューアビリティを正確に計る技術をベンダーがもっていても、その技術が広告バイヤーの役に立つのは、パブリッシャーがアプリの構造を変えて、ベンダーがアクセスできるようにした場合に限られる。

デジタルエージェンシーのデジタスLBi(DigitasLBi)でメディア技術担当バイスプレジデントを務めるロブ・オージェ氏は次のように述べている。「ブラウザ内で検証を行う場合、追跡対象がCNNであろうとニューヨーク・タイムズ(The New York Times)であろうと、我々は普遍的なシステムのなかにいる。だがアプリ内では、そのアプリが開発された方法に縛られることになる」。

広告業者の悩みのタネ

本記事の執筆にあたり、ダブルベリファイ(DoubleVerify)、モート(Moat)、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)に取材を申し込んだが断られた。だが、これらの企業も、アプリ内のビューアビリティ計測にまつわる数々の課題をしっかり認識している。パブリッシャーによるアプリ内検証採用に拍車をかけることを期待して、米国のインタラクティブ広告評議会は、ベンダーが利用できるオープンソースSDKを開発した。複数のベンダー間で柔軟に使える単一のSDKを与えることで、パブリッシャーは多くのSDKをアップロードする必要がなくなり、アプリにサードパーティーの検証を実装しやすくなるだろう。この計画は成功しそうに見えるかもしれないが、ここでもまた、サプライサイドの導入がなければ、その力は限られてしまう。

モバイルのビューアビリティに関する、こうしたまどろっこしい状況は、広告業者にとって本当の悩みのタネだ。2016年のアプリ内広告に関する支出は331億ドル(約3.6兆円)に達し、デスクトップインベントリーに支出された249億ドル(約2.7兆円)を上回るというeマーケター(eMarketer)の報告がある。モバイルでの消費は増え続けているが、ファーマー氏は、22スクエアードとしては「追跡できないのであれば、アプリ内インベントリーから手を引かざるを得ない」かもしれないと述べた。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)