「ads.txt は、特効薬ではない」:限界を指摘するメディアバイヤー

パブリッシャーが自社のWebサーバーに置く、インベントリー販売権限を持った会社を列挙したテキストファイル、すなわちads.txt(アズテキスト)をインタラクティブ広告協議会テックラボ(IABテックラボ)が発表して依頼、広告バイヤーは広告詐欺と闘うための確実な手段としてads.txtに期待をかけてきた。しかし、解決するべき課題は依然として残されている。

最大の課題は、パブリッシャー自身がads.txtファイル上に販売権限のある会社名のスペルを間違って登録してしまう点だ。また、権限のない会社からのインベントリー購入を回避するために、どれだけのデマンドサイドプラットフォーム(DSP)が実際にads.txtに利用しているのか、わからない点も問題視されている。さらにメディアバイヤーの指摘によれば、ads.txtは詐欺に遭う可能性を最小限に食い止めてくれるとはいえ、偽のインプレッションを見極めることも、権限のある会社のインベントリーフォーマットを特定することもできないという。

ads.txtが抱える限界

「総合的に見れば、ads.txtは業界にとって素晴らしい試みだ。しかし、あらゆる問題を解決してくれる特効薬の誕生、という我々の期待には応えられていないと思う」。こう語るのは、グループ・エム(GroupM)のプログラマティックパートナーシップ担当アソシエートディレクターを務めるマイク・ムーア氏だ。「そもそもads.txtの導入に限界があるうえ、アドエクスチェンジやアドネットワークはads.txtがやろうとしていることとは逆の方向を探っているという事実もある」。

ads.txtの限界としてムーア氏は、権限のある会社のテキストファイルへの追加がパブリッシャーの手作業に任されている点を上げた。そのため、社名の入力時にスペルミスが起こり、権限のある会社がはじかれてしまう可能性があるという。たとえばムーア氏のチームでは先ごろ、パブリッシャーらのadx.txtファイルに登録されたアップネクサス(AppNexus)やGoogle AdXの社名について、45種類以上ものバリエーションを発見したという。「DSPはスペルミスのある社名を読めないので、権限のある会社を認識できない場合がある」。

もうひとつの欠点としてムーア氏は、権限のある会社のインベントリーフォーマットをads.txtが特定できない点を指摘した。そのため、たとえばディスプレイインベントリーの販売権限しか有していないサプライサイドプラットフォーム(SSP)が、ビデオインベントリーの販売権限もあるかのようなフリができるのだという。「この欠点があるために、アドエクスチェンジやSSPが、ディプレイをビデオのように偽ってインベントリーを販売できてしまう」と、ムーア氏は説明した。

不透明なDSPの動き

また、Googleの後押しもあってパブリッシャー側でのads.txtの普及に弾みがつく一方で、果たしてDSPの大部分がads.txtを参照して権限のない会社からのインベントリー購入を止めているのかどうかが不明だという現状もある。GoogleのDoubleClick Bid Managerやアップネクサス、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、メディアマス(MediaMath)といったDSPはすでに、ads.txtを利用して権限のない会社をフィルタリングにかけることを表明している。しかし、ほかのDSPがads.txtを自社プラットフォームに100%統合し、嘘偽りのないリポーティングを行うかどうかは不透明だ。ads.txtの利用は、最終的には利益の減少を招く恐れがあるからだ。

グッドウェイ・グループ(Goodway Group)の最高執行責任者であるジェイ・フリードマン氏は、DSPの多くはすでにads.txtを「統合」しており、メディアバイヤーは大抵の場合、そうしたDSPの言葉を信頼するしかないと語る。しかしここで言う「統合」が、単にすべてのads.txtファイルをダウンロードし、内容を読み取って、オークション時に参照できるようにどこかにファイルを保存するだけの意味だったら? このプロセス自体は1週間もかからないし、DSPが真の意味でads.txtを利用しているとは限らない−−このような懸念を示すのは、コンテンツマーケティングプラットフォームを手がけるインスティンクティブ(Instinctive)の共同創業者でCEOのマニ・ガンドハム氏だ。

「問題は、DSPが実際にオークション時にads.txtを参照し、登録されていない会社のインベントリー販売をブロックしているかどうかだ。現実にこれをやれば、販売量と利益はたちまち減少する。したがって、DSPがこれを実践しているかどうかは不透明だが、事実を明らかにするには調査が必要だ。自社の利益が損なわれる恐れのある何らかの措置を講じたとDSPが主張しても、にわかには信じがたい」と、ガンドハム氏。

パブリッシャーの疑念

ads.txtには、依然としてプログラマティック広告の大きな脅威であるドメインのスプーフィング(なりすまし)問題を解消する力がある。アドネットワークはすでに反ads.txtの方向に進んでいるが、ads.txtにまったく効果がないなら、そもそもそのような方針は取らないはずだ。

たとえば、今週あるパブリッシャーの幹部は米掲示板サイトのレディット(Reddit)で、某アドネットワークから各社の社名をads.txtに登録してほしいとeメールで依頼されたことを暴露した。パブリッシャーのパーチ(Purch)でプログラマティック収益担当ディレクターを務めるマーク・ロペラト氏も、自身のチームがそのようなeメールを直接取引のない複数のサードパーティから受け取ったが、頑として断ったことを明かしている。

「我が社がads.txtを利用するのはそもそも、販売権限をすでに有しているベンダーに確実にインベントリーを購入してもらうためだ。にもかかわらず、取引関係のないサードパーティから社名を登録してくれと頼まれるのだから、おかしな話だ」

用心深くする必要あり

一方、エージェンシーのハーメリン・メディア(Harmelin Media)でデジタル戦略およびイノベーション担当バイスプレジデントを務めるブラッド・バーナード氏はads.txtの問題点について、偽のトラフィックを検知できない点を上げている。このため結局パブリッシャーは、どこに販売権限を与えるか用心深く選択しなければならない。

「パブリッシャーがこの選択を誤れば、自らキツネと手を組み、万全なセキュリティという間違った印象をバイヤーに与えることになる。広告主の側でも、インプレッションが本当に人によるものか、検証可能なものか、確実に評価するプロセスとテクノロジーを依然として必要としている、というのが実情だ」とバーナード氏は語った。

Yuyu Chen(原文 / 訳:SI Japan)