Google&Facebookが熱視線、ローカルニュースがいま熱い:手厚いサポートが供与される理由

GoogleやFacebookとの関係について大手パブリッシャーに尋ねれば、非対称かつ機能不全な関係についてこぼす声が多く聞けるだろう。しかし、GoogleやFacebookとハネムーンのような時期を迎えているパブリッシャーのグループがある。それは、ローカルニュースたちだ。

フラッグシップメディアとしてザ・マーキュリーニュース(The Mercury News)を運営するベイエリアニュースグループ(Bay Area News Group)は、カリフォルニア北部の地方紙やローカルニュースサイトを扱うグループだ。同グループにはGoogleによって資金援助されているトレーナーが定期的に訪れてくる。そのトレーニングのおかげで、Google検索やフュージョンテーブル、地図などを報道へ巧みに組み込むようになった。Facebookもまた、グループのエグゼクティブたちを近くに位置するFacebook本社に招待し、アナリティクスやFacebookライブの活用法について支援することを行っている。

「彼らはローカルなジャーナリズムを支援することに、より関与するようになったようだ。私としては得られる助けは、すべて使いたい」と語るのは、ベイエリアニュースグループのエグゼクティブエディター、ニール・チェイス氏だ。

ふたつの大手プラットフォームがローカルニュースにより関心を強めていると気付いているのは、チェイス氏だけではない。Facebookはニュース団体との関係を強化するべく、Facebookジャーナリズムプロジェクトをローンチしたが、ローカルニュースはその一部となっている。このプロジェクトがローンチされたのは、今年の1月。フェイクニュースがFacebookのニュースフィードで拡散されたことに対する批判を集めた時期だった。

プロジェクトの一環として、Facebookは地方を回って意見聴取を行っている。すでにアトランタ、ダラス、サンディエゴ、シアトル、そして、デンバーとシカゴを訪れるという。Facebookのニュースパートナーシップチームにパートナーマネージャーとして去年末に雇われた人材に、ジョシュ・マブリー氏がいる。チームを率いるのはTVニュースのベテランであるキャンベル・ブラウン氏だ。Facebookがローカルニュースに専念する形で人材を雇ったのは、これがはじめてとなる。今春、初のローカルニュースに専念するプロダクトマネージャーとして、アンセア・ワトソン・ストロング氏を就任させた。

ローカルニュースに先に注意を向けたのはGoogleだった。Googleの方が歴史が長く、健全なニュース産業を維持することはGoogleの成功にとって常に鍵となってきた。ローカルのニュース部門に対してGoogleはもう10年以上、トレーニングを提供している。しかし去年、プロフェッショナルジャーナリスト協会(Society of Professional Journalists)とパートナーシップを結び、資金援助するトレーナーの数を2倍の17人にまで増やした。そしてポインター(Poynter)と共同で、類似のプログラムをローンチする計画も発表している。

去年の5月、Googleは「ローカルソース(local source)」というタグを導入した。これはあるストーリーが全国的な注目を集めたときに、そのニュースフィードにローカルのニュースソースを優先的に表示させるというものだ。そしてGoogleもFacebookも、ローカルニュース協会の集まりには定期的に出席している。

「限られた予算」

ニュースのエコシステムのなかで、もっとも脆弱な部門として存在してきたのがローカルニュースだ。新聞社たちはデジタルへのビジネス移行に苦しみ、ローカル新聞社の数とニュース部門の規模は縮小した。Googleに在籍する10人のトレーニング開発マネージャーのひとり、ニック・ウィットテイカー氏によると、全国紙とは異なり、地方紙のニュース部門は基本的な部分でのトレーニングをより必要としている。そのためトレーニングはそういった分野に集中するという。「資金、時間、人材という面で限られている。そしてスタッフは同時に複数の役割をこなしている」。

GoogleとFacebookは、彼らのプロジェクトがローカルジャーナリズム、そして地域の文化への貢献となっていると語るが、これは決して善意だけで行われているわけではない。GoogleもFacebookも両方ともにビジネスなのだ。Googleのビジネスにおいて、全世界の情報をオーガナイズするという能力が重要になる。それには当然、ローカルも含まれるというわけだ。Facebookのビジネスの場合、ユーザーをその閉鎖的なプラットフォーム上に滞在させることが重要だ。それにはユーザーが気にしているコンテンツを提供する必要がある。ローカルニュースのエコシステムが健全なものであることは、FacebookにとってもGoogleにとってもビジネス上のメリットがあるのだ。

極めてローカルなサイトを複数所有するパッチ(Patch)のウォーレン・セイントジョンCEOは、最近のフェイクニュースやでっちあげが大流行してしまうという事態があったため、プラットフォームはローカルニュースに意義を見出しはじめたのだと考える。「ローカルニュースを盛り上げることができれば、ユーザーはエンゲージする。またフェイクニュースと混同してしまう可能性もずっと低い。バイラルの真逆だからだ」と彼は語る。

小規模なニュース組織にプラットフォームが組み込まれて利用されることで、ニュース部門もよりそこへの依存度を増すことになる。

ニュース部門の自立

Googleがベイエリアニュースグループにトレーニングを提供するとき、当然そのフォーカスは、Googleプロダクトの使用法になる。Google検索を使って彼らの記事をどうやって表示させるか、Googleアナリティクスを掘り下げて彼らのオーディエンスをさらに理解するためにはどうすれば良いか。YouTubeを利用してリーチを広げるにはどうすれば良いか。Facebookは最近買収したソーシャルアナリティクスツール、クラウドタングル(CrowdTangle)をパブリッシャー向けに無料公開した。高価なベンダーを雇う資金のないローカルニュースにとって、この利益は大きい。その結果、ローカルニュースによる利用が急増した(現在、800媒体が利用している)。

働きかけはビジネスサイドにも及んでいる。独立系のパブリッシャーにブランデッドコンテンツやテック関連のコンサルティングを提供するスタートアップ、ハッシュタグラブズ(Hashtag Labs)のジョン・シャンクマン氏は言う。GoogleとFacebookはこの1年に、独立系にも彼らの広告テックを使うための働きかけを強めてきたと。

そこで得られる広告収益はGoogleとFacebookにとっての収益にもなる。と同時に、パブリッシャーは収益の面で、よりGoogleとFacebookに依存するようになる。「彼らのパブリッシャー対応部門は、確実に以前よりも忙しくなっている」と、シャンクマン氏は語った。

しかし、この皮肉な事実に、ローカルパブリッシャーたちが気付いていないわけではない。プラットフォームが台頭することで、ニュース消費のデジタル化は進んだのだ。それこそがローカルニュースがそもそも苦しんでいる原因なのだから。「Facebookの新しい本社を見て回ったときに言ったんだ。『新聞社たちが失ってきた収益がどこに行ったのか分からなかったけど、見つけた。ここだ』とね」と、ベイエリアニュースグループのチェイス氏は言う。

しかし、ローカルパブリッシャー自身の責任でもあると、チェイス氏は語った。ローカルパブリッシャーは迅速にイノベーションを行うことができなかった。トラフィックソースの分散化は、彼らにとって必須事項だと。「もしFacebookが我々のサイトへの唯一のトラフィックソースで、我々がほかのチャンネルを開発することに時間をまったく費やさなかったら、それは私たちの怠慢となる」。

一時的な注目か、長期的なものか

ローカルが集めるこの注目が長続きするかは誰にも分からない。歴史が示しているように、大手プラットフォームはいつ考えを改めるか分からない。Facebookはビデオコンテンツをプッシュしてきているが、これは文字ベースのレガシーパブリッシャーたちが成功しようとすると難しく、またコストがかかる分野だ。ましてや、リソースの限られるローカルのメディアにとっては、さらに難しくなる。ローカルニュースがかつての繁栄へと返り咲きたいのであれば、何回かトレーニングを受けるだけでは足りないだろう。長い苦しみの時期は、今後も続くことは確実だ。

しかし、いまのところは、大手プラットフォームから無視されてきたローカルのパブリッシャーたちは、この注目を喜んで受け入れている。ワシントニアン(Washingtonian)のシニアエディターであるアンドリュー・ブージョン氏によると、彼らのところにGoogleが11月に訪れてきて、ワシントニアンのレストランレビューのスプレッドシートを求めたという。いまではワシントンD.C.のレストランをGoogleで検索すると、ワシントニアンのレビューが最初に表示される。「我々のレビューがそこに表示されるのは素晴らしいことだ。私たちにとっては素晴らしいブランディングだ」と、ブージョン氏は言う。

ニューヨークで最近Facebookが開催したローカルパブリッシャーのためのミーティングに、パッチのセイントジョン氏は出席した。その会合でFacebookは、パブリッシャーたちを4つのグループに分け、それぞれにどんな機能をFacebookに開発して欲しいか提案をさせたという。提案のなかには、サイトを強化するためのコンテンツ管理システムを作って欲しいというものや、Facebookユーザーがニュースレターや課金制コンテンツに登録するのを簡単にして欲しいというものがあった。「大手プラットフォームたちがローカルの力に目覚めた瞬間の、ちょっとしたスポットライトを経験している」と、彼は言う。

フィラデルフィアのローカルニュースサイト、ビリーペン(Billy Penn)を運営するスタートアップ、スピリテッドメディア(Spirited Media)のCEOでありファウンダーのジム・ブレイディ氏は、FacebookとGoogleについて次のように言う。

「彼らはローカルニュースとますます多くの会合をもっている。これは、いままで見たことがない。まだはっきりと功績として示せるものは出てきていないが、彼らがローカルにフォーカスを集めるという動きは、はじまったばかりだということから考えると、それは自然なことだ。私は希望があると感じている」。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)