「ソーシャルメディアはブラックホールだ」:コマースに取り組むパブリッシャー、Facebookで問題に直面

コマースに注力するパブリッシャーの多くが、Facebookで問題に直面している。

多くのパブリッシャーが、広告業界をめぐる困難な状況のなかで収益を上げるためにコマースに取り組んでいるが、Facebookを戦略上うまく活用できずにいる。

原因のひとつは、コマース狙いの投稿記事の収益モデルが、広告表示型とは異なることにある。だがそればかりではなく、eコマースにおけるFacebookの役割がいまだに変わり続けているために、パブリッシャーによるアフィリエイトコマース戦略の障害となっているのだ。

進むコマース対応、しかし

「ソーシャルメディアはブラックホールだ」と、コマースに注力するあるパブリッシャーの幹部は語った。

eコマースの売上高は過去10年で3倍に達した。米商務省によると、2017年度第2四半期は1050億ドル(約11兆8000億円)で、アメリカ全体の小売売上高の9%を占めた。

米国小売業の総売上高に占めるEコマース売上高の比率の推移

米国小売業の総売上高に占めるEコマース売上高の比率の推移(2008年第1四半期~2017年第2四半期)。青:未調整値、赤:調整値。出典:米商務省

 

eコマースの発展にともない、Facebookはさまざまなアプローチで参入を試みてきた。2007年に同社初のマーケットプレイスを導入したが、2年後に打ち切った。2015年、店舗ページのように機能する「ショップ」タブを追加。さらに2016年、新しいフリマ機能「マーケットプレイス」の提供を開始した。最近では、「キャンバス広告」「カルーセル広告」などの購買意欲をかき立てる数々の広告フォーマットを導入。こうしたツールの大半は小売業者やマーケター向けだが、ショップタブを試験的に利用しているパブリッシャーも少数ながら存在する。

タイミングやリーチに難あり

だが、多数のパブリッシャーがオーディエンス獲得のために利用しているFacebookの「ニュースフィード」は、コマース狙いのコンテンツと相性が悪い。フィードはアルゴリズムで動作しているため、コンテンツがオーディエンスの目に触れるのは数時間後か、悪い場合には数日後だからだ。狙ったタイミングで販売を行うには、これではうまくいかない。

コマースに注力するパブリッシャーは次善策をとってきた。たとえばギズモード・メディア・グループ(Gizmodo Media Group)は、キンジャディールズ(Kinja Deals)というブランドを中心にコマース戦略を展開するなかで、最近FacebookのMessengerで「キンジャディールズ・ボット」の運用を開始した。このボットは、モバイルのプッシュ通知機能により、オファーをオーディエンスに直接送信する。

タイミングの問題をさておくとしても、ニュースフィードは、購買意欲がある人にリーチするのに最適な手段だとはいえない。「Facebookユーザーの購買意欲はとても低い」と、コマースに注力する別のパブリッシャーの幹部は語った。「パフォーマンスマーケティングはまったくうまくいかない」。

コンテンツが抱える問題も

ほかにも、Facebookはパブリッシャー向けプロダクトとしてインスタント記事と動画をプッシュしており、パブリッシャーはそれらをなんとか使おうとしているが、どちらもコマース戦略にはあまり適さない。「Facebookは動画の使用を強く推奨してきている。だが動画は商品を薦めるのにはあまり向いていない。eコマースで成果を出せる素晴らしい動画は少ない」と、コマースに注力する別の幹部は述べた。

さらにコマース狙いのコンテンツは、ソーシャルプラットフォームで共有される広告コンテンツに対して情報開示を義務づける米連邦取引委員会(FTC)の規制対象となる場合がある。

通常は、コマース狙いのコンテンツは広告とは見なされない。だが問題がないとは言い切れないため、パブリッシャーにとって懸念材料が残る。「はっきりとルールで線引きされていないため、パブリッシャーはソーシャルプラットフォームでどう振る舞うべきか、よく分からずにいるのではないか」とまた別の幹部は語った。「我々としても、コマースのコンテンツでFacebookとどう付き合っていくべきか分からない。ソーシャルプラットフォームも、この点にあまり注目してもらいたくはないだろう」。

活路はどこに

だが、Facebookで満足のいくコンバージョンを得られないパブリッシャーがいる一方で、Facebookをオーディエンスの興味に関するデータの獲得手段として捉え、収益につなげるパブリッシャーもいる。「コマース狙いのコンテンツは、通常のコンテンツとあまり変わらない」と語ったのは、ハーストデジタルメディア(Hearst Digital Media)のトロイ・ヤング氏。「違いは、広告主のために商品を宣伝するパブリッシャーにとって、役に立つデータを収集するチャンスが生まれることだ。コンテンツ、商品、オーディエンス間のデータを結び付けられるパブリッシャーが将来、優位に立つ」。

Facebookでの販売活動にも、実際上の問題がある。グレーのTシャツに関する記事を、ターゲットに合わせて適切に作成できたとする。だが投稿を見たオーディエンスが、そのTシャツのサイズや色を自分の好みに合わせて選択し、購入するというプロセスが、すべてFacebookの内部で完結する日は、まだ来ていない。「すべてを結びつけるには、技術的な課題がある。当分は先の話だろう」と、リネン製品のブランド、ブルックリネン(Brooklinen)のCEOリッチ・ファロップ氏は語った。

それにFacebookも、十分なレベルのサービスを提供できるようになるまでは、急ぎはしないかもしれない。「消費者が求めているのは、Amazonのようなサービスだ」とフォレスター(Forrester)のシニアアナリスト、スーザン・バイデル氏は述べた。「他のプラットフォームが、いますぐにそれほど洗練されたサービスを提供できるようになるとは考えられない。競争できるレベルになるまで試験運用を避けるだろう」。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)