テクノロジーはすべてを台無しにしている、広告も含めて:失業中コピーライター(56歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。

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果たして、本当に人類の役に立った発明を最後に見たのは、いつだろうか。おそらく小さい太陽発電パネルがついた電卓であろう……ああ、そういえばインターネットとかスマートフォンなんてものもあったっけ。しかし、大抵の場合は、シリコンバレーが我々に突きつけてくる「イノベーション」なんて、大して役に立たないモノばかりだ。

いまから80年も経てば、我々人間が行っている仕事の半分はロボットに取って代わられて、残りの半分は脳にチップを埋め込んでロボットの手下として働いていることだろう。もしくは、気候変動か戦争か病気か革命か何やらかんやらで、絶滅しているかだ。

シリコンバレーのテクノロジーが若さの泉を人類に提供して人類全体が救われる、なんてことは起こらないだろう。テック業界は、オレたちのことや国全体のことなんて、本気で心配なんかしていないからだ。彼らはあくまで次の「ユニコーン」が何で、そのユニコーンをどれだけ生き長らえさせるか、そしてそのあいだに、投資家たちをダマして金を搾り取ることに尽力しているに過ぎないのだ。それが終われば、次のやつに転向するだけだ。

スマホの奴隷たちよ

そのあいだ、皆さんはハイテク技術に囲まれて素晴らしい生活を過ごす……なんて妄想しているかもしれないが、その時間のほぼすべては、スマートフォンのスクリーンを眺めるのに費やされることを忘れてはいけない。とにかく四六時中スクリーンを見つめている。

トイレにいるあいだも、死ぬ直前まで画面を見つめているだろう。NATO・ロシア・中国間における戦争がはじまれば、ミレニアル世代のパイロットは空からセルフィーを届けてくれるのだろうか(と考えるだけムダかもしれない。きっとロシアは我々の兵器システムをすべてハッキングしてしまっているから)。

はいはい、と冷たく笑って、この文章を読み飛ばしたければ、そうしていただきたい。ただ忘れてはいけない。そんな、アンタもこの文章をスマートフォンで読みながら貴重な時間を費やし、そして、あらゆる情報がトラッキングされているのだ。その情報を利用しているのは、広告主から当局、ハッカー、ヒットマン、と果てはない。

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テックブランドの広告はすべて終わっている。オラオラ系男子が広告を書くからだ。

本当の友だちはどこよ?

Facebookが嫌いだと口では言いながらも「フィード」を15分おきにチェックして、「友達」たちが自分よりも良い人生を送っているか、悪い人生を送っているかを確認しているはずだ。それなのに、まさにその携帯電話を使って「友達」と直接話そうとはしていない。ましてや実際に面と向かって話すことなんてない。「仲が良い」ってのは、いまやキミらにとっては、スマートウォッチ上で「元気?」とメッセージを送ることを意味している。

ピザからスニーカー、ビールまで、何か欲しいものがあれば小さい黒いデバイスタワーに向かって叫ぶだけで注文できるようになった(オレはできないが)。スニーカーを買うのに歩きも走りもしないというのは、なんとも不思議な状況だ。アレクサ(Alexa)はキミらの親友と呼べるくらいになっただろうか(正直に答えて欲しい)。

キミらの回答がどうであれ、すぐにアレクサはミンナの親友になるだろう。そのうちユーザーの気分、感情を読み取ることができるようになり、恋人よりも(恋人がすでにデバイスでなければの話だけれど)ずっと身近な存在になるからだ。心地よい声で、パーフェクトな回答を与えてくれる。アレクサは生活用品を買い揃えてくれるし、薬を買ってくれるし、きっと一番痛みの少ない自殺の仕方も教えてくれる。

広告だって破綻するさ

テックはまた、広告も破壊している。これは驚くことではない。広告は気持ちが悪いくらいプライバシーを侵害するストーカーの体を成してきている。それでいて効果がないのだ。とは言っても飛び回るドローンが吊り下げるビルボード広告は、もしかしたらテック広告のなかでも効果はある方かもしれない。それならただテックを使った伝統的な広告と何ら変わらないからだ。ビルボードを頑張って視界に入れないようにしたとしても、ネット上のビルボードはアナタについて必死に情報を得ようとしている。テックはあらゆることを台無しにしつつある。

そしてネイティブ広告だ。効果は無いし、売れもしないし、誰も何の広告だったか覚えてもいない。「広告」と名前がついているにしては酷い内容だと思わないか。「マーテック(MarTech:マーケティングとテックの融合)」と「アドテック」はどちらがより存在価値が無いかについて激しく競い合っている。アドテックは広告にとって最悪の出来事であることに間違いはない。

ボット、ソフトウェア、AIによってあらゆる分野のクリエイティブの仕事をジワジワと奪いつつある。コピーライター、アートディレクター、グラフィックデザイナーといった人々は役職名を「社会的デジタル的人類学者」や「広告ささやきさん」「クリエイティブコンセプト屋」と変える必要がある。

とタラタラと書き連ねてしまったが、これもすぐ、電気自動車がAIを使ってすべて代わりに書いてくれるようになるだろう。

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)
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