英タイム社、デジタルエージェンシー買収で得たものとは?:担当役員「これははじまりに過ぎない」

パブリッシャーとエージェンシーの境界線は相変わらず曖昧だ。「タイムUK(Time Inc. UK)」によるデジタルクリエイティブエージェンシー、コレクティブ(Collective)の買収を見れば分かる。

ロンドンに拠点を置くコレクティブとその47人の社員は、「タイムUK」から独立して営業を続けるが、顧客との折衝では今後、タイムUKの社員と協力していく。コレクティブは、O2、スカイ(Sky)、ディズニー(Disney)、ユニリーバ(Unilever)などの顧客を抱えており、そうした顧客にブランデッドコンテンツやディスプレイ広告、動画などのサービスを提供していた。また、タイムUKがようやく注力しはじめた、デジタルネイティブアド商品もある。

タイムUKの最高収益責任者サム・フィンレー氏によると、今回の買収をきっかけに今後、ほかの多くの分野、それも主にネイティブアドや動画、プログラマティックの分野でさまざまな動きが見られるだろうという。

これははじまりに過ぎない

フィンレー氏は、米DIGIDAYの取材で次のように語っている。「これははじまりに過ぎない。我々は、雑誌を超えたサービスを顧客に提供する、新たな方法を見出すために進化しようとしている。読者と当社ブランドとのあいだには、長年をかけて築いた輝かしい関係性があるが、いまは新しいビジネスモデルで、そうした信頼関係を利用しようとしている」。

コレクティブが「タイムUK」の規模拡大に役立つと思われる2つの分野がある。それは、プログラマティックとネイティブアドだ。「タイムUK」は、ネイティブ・コンテンツスタジオを社内に設置する動きが比較的遅かったが、いまは急いで遅れを取り戻そうとしている。フィンレー氏によると、2016年に入ってクリエイティブソリューション部門、ザ・ファウンドリー(The Foundry)を発足させたが、それ以来、売上は「二桁」の伸びを示しているという。まだ体制を整えているところだが、ザ・ファウンドリーは、「タイムUK」が規模拡大を計画している主要分野だ。

「コレクティブが秀でている分野のひとつは、顧客向けのクリエイティブスタジオと、ネイティブアド、自社で策定したインパクトの大きいディスプレイ広告フォーマットだ。我々は、顧客獲得単価(CPA)から直接的な反応を受けるようなビジネスを行わない。それよりも、ブランドとコンテンツが重要であり、コレクティブもそれは同じだ。コレクティブがそうしたものをプログラマティックと連携させることができるなら、我々がその分野で成長するのにも役立ってくれるだろう。同社は、国際的な潜在力も大きい」とフィンレー氏。

不安定な状況を生き抜くため

欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が英国で実施されたのを受けて、この数週間は誰にとっても先行き不透明な時期だった。現在流れているニュースは、英国のEU離脱(ブレグジット)一色だ。その直接的な結果として顧客が広告支出を削減するという報道が流れており、メディアにとって今後の見通しも厳しい。

フィンレー氏は、広告主は確かに広告支出を削減しており、それをブレグジットのせいにしていると指摘して、次のように付け加えた。「(メディア)市場はもともとそれほど安定していたわけではないので、ブレグジットによるプラスの影響などない」。

メディア分析企業エンダーズ(Enders)のCEO、ダグラス・マケイブ氏は、広告支出の大部分がGoogleとFacebookに回されようとしている時期だけに、広告主が本当に求めているもの、そして、それを市場で提供する方法について、パブリッシャーはじっくりとよく考える必要があると述べている。

「自然な成長に頼っていたら、パブリッシャーは十分な速さで進歩できないかもしれない。コレクティブのような企業の買収は、パブリッシャーの対応を迅速化し、かなりの柔軟性と幅をもたらすことができる。これは、双方が非常に好ましい成果を得て、既存のプランやその強みに真の価値を加えるための取引の一例でもある」とマケイブ氏は語った。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)