「通知」機能入手のため Facebookを受け入れる新聞社:「巨人の肩の上に立てばいい」

米新聞社ボストングローブ(The Boston Globe)は、多くのパブリッシャー同様、オーディエンスのスマートフォンにニュース速報の通知を直接送信したいと考えている。しかし、2017年のはじめにいくつかの方法を検討したとき壁に突き当たった。自社アプリに手を加えたり、別のプラットフォームに接続するために開発者を割り当てるのは、相当のリソースを要することがわかったのだ。

結局、Facebookメッセンジャーがもっとも安価でもっとも簡単なチャンネルだったと、ボストングローブのオーディエンスエンゲージメント責任者、マット・カロリアン氏は語る。同社は3月第2週からFacebookでの通知を開始し、すでに80%の開封率を達成している。

「Facebookという巨人の肩の上に立てばいい」と、カロリアン氏は語る。「導入コストは安く、デバイスを問わない。Facebookはありとあらゆるデバイスからアクセスされ、頻繁に使われている。リーチできるターゲットがはるかに増えるというわけだ」。

AI活用にはまだ早すぎる

多くのパブリッシャーがFacebookメッセンジャー用のチャットボットに入れ込んだが、ボストングローブは一方通行のプッシュ通知を選んだ。米大統領選挙のあいだ、テキストメッセージベースのチャットボットも試したこともある。しかし、ほとんどのチャットボットは性能不足で話し言葉に対応できない。

さらにパブリッシャーたちは、おすすめ記事を本格的にパーソナライズするのに必要な、コンテンツを深層分析するテクノロジーを持ち合わせていない。同じ理由で、多くのブランドはチャットボット熱から冷めつつある

「AIはまだ十分に発達していない」と、カロリアン氏は指摘する。「コンピューターと話しているのが丸わかりだ」。

ボット開発者の共通課題

これは、ボット開発者なら誰でも直面している問題だ。「会話が行き詰まることなく、新鮮に感じられるメッセージを送り続けるのは難しい」と、ベータワークス(Betaworks)のクリエイティブ部門を率いるジェームズ・クーパー氏は語る。同社は、天気予報ボット「ポンチョ(Poncho)」やボットプラットフォーム「デクスター(Dexter)」を開発した。「パブリッシャーはボットを研究したがっているものの、リソースが足りないのだ」。

基本的なボットなら安価に導入できることもあるが、全面的にコミットするには相応のリソースを要する。ベータワークスのポンチョは、ライターとエンジニアからなる8人体制のチームで運営されている。

また、手段が通知であれボットであれ、ユーザーが受け取るアラートを自ら選択でき、よりパーソナライズされるものでなければ、価値を認めてもらえないと、テッククランチ(TechCrunch)でオーディエンス開発責任者を務めるトラビス・バーナード氏は指摘する。テッククランチも早い時期から、Facebookメッセンジャー用のボットを開発していた。一方、単純にプッシュ通知を送る場合、パブリッシャーがあまり頻繁に送りすぎると、逆効果になってしまうリスクがある。

ボストングローブの考え方

ボストングローブは、独自の手法でそうしたリスクを巧みに回避しているように思われる。その手法とは、他紙にはない調査報道チーム「スポットライト(Spotlight)」の記事を通知するというものだ。

boston-facebook-notifications

ボストングローブは、3月第3週の暴風雪がメッセンジャー通知の最初の試練になると予想している(※編集部註:原文記事は3月14日掲載)。その前の週にサービスがローンチしてから、ほとんどプロモーションを行っていなかったにも関わらず、数百人が登録した。通知の開封率は80%にのぼり、クリックスルー率は15%だが、オプトアウト率は1桁にとどまっている。

ボストングローブが今年メッセンジャーを使いはじめたのは、Facebookの膨大なオーディエンスへのリーチをできる限り増やす取り組みの一環でもある。同社はすでに、購読者がニュースについて議論できるFacebookのプライベートグループを開設。4月のボストンマラソンでは、Facebookの360度動画も活用する計画だ。

ボストングローブはこうした取り組みを、Facebookの戦略変更やアルゴリズム変更への対抗策と考えている。Facebookがニュースフィード中のニュースコンテンツを削減すると決定したとしても、ほかの方法でオーディエンスにリーチできるというわけだ。

「パブリッシャーはまだFacebookで十分に活用できていない部分が多くあるはずだ」と、カロリアン氏は語った。

LUCIA MOSES(原文 / 訳:ガリレオ)