米新聞社がSnapchat「ディスカバー」に参加して学んだこと

「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」は2016年1月、米国の新聞社としてはじめて、Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」に参加した。

「ディスカバー」は、ミレニアル世代に人気のメッセージアプリ、Snapchatにおけるコンテンツコーナー。ユーザーのメッセージが24時間で消失する同アプリの「ストーリー」機能同様、媒体社からのコンテンツであっても24時間で消失する。こうしたプラットフォームは新聞業界には向いていないと見る者もいた。だが、参加から2カ月が経って、ソーシャルメディア編集者のサラ・マーシャル氏によると、WSJは「ディスカバー」を大変気に入っているという。

最新データによると、Snapchatのアクティブユーザーは1日1億人に達し、「ディスカバー」に注目する新聞社は増えている。英国のタブロイド紙「サン(The Sun)」は、近く参入する予定だし、独アクセル・シュプリンガー社のタブロイド紙「Bild(ビルド)」も検討中だ。現在のパブリッシング・パートナー数は20社。新聞社にとっても、「ディスカバー」はジャーナリズムについて考える新たな方法と見られているのだ。

マーシャル氏は、米DIGIDAYが2016年3月7日~9日にイタリアのボローニャで開催した「パブリッシングサミット(Publishing Summit)」において、Snapchatを通じて同社が学んだことを説明してくれた。

各エディションを全体的に閲覧

WSJのチームは、Snapchat向けのオリジナル記事を週に5本制作している。毎日発行される編集記事のなかで、ビジネスやマーケット、テクノロジーにまつわるさまざまな記事のなかから、8つずつスナップをまとめたものだ。内容はより描写的で、よりビジュアルに訴えるコンテンツになっている。各オリジナル記事は、米国東部標準時で午前7時に配信されるという。

マーシャル氏によると、読者がひとつのスナップを閲覧するのに費やす時間はだいたい30秒だ。各エディションを最後まで見る(ついでに広告も見る)人は、驚くような数にのぼるという。ただし、具体的な数は教えてくれなかった。

毎日のエディションを、ちょうどテレビやラジオのニュース番組のように全体的に閲覧してもらえることは、WSJが記事の適切な組み合わせを見つけ出すうえで役に立っているという。「初期のテストでは、記事をアジャストできていないことがわかった。多様な読者を取り込もうとして、記事の種類を多くしすぎた」と、マーシャル氏は米DIGIDAYに語った。

WSJの「ディスカバー」コンテンツ

プラットフォームを理解する

WSJは、プラットフォーム主体の時代には、ひとつのルールがすべてに通用するわけではない、ということをすぐに学んだ。

「トップスナップはそれぞれ10秒しか見られない。我々やほかのパブリッシャーたちは、ストーリーを伝えるのは10秒と考えていた。しかし、実際の読者の行動を見てみれば、読者はスナップをもっと素早くスワイプしていくため、ストーリーももっと素早く伝えなければならなくなった」と、マーシャル氏。

WSJはこれまでも、Facebook動画で無音の自動再生機能を活用しながらストーリーを上手く伝える方法を学んできたが、Snapchatには同じルールが当てはまらないと、同氏は説明する。Snapchatでは、見たいものをスワイプして選べるので、動画のサウンドをオンにしたがるユーザーが多いからだ。

配信はスマートに

WSJのSnapchatチームのなかでは、マーシャル氏だけがロンドンをベースに活動している。残りは全員、米国でアリソン・マーロン氏の下で働いている。こうした状況のおかげでマーシャル氏は、米国東部標準時午前7時(グリニッジ標準時午前11時)に各エディションが配信される前に、話題のニュースのスナップを3~4個追加できる。

マーシャル氏は2016年1月11日、WSJ編集者からの電子メールニュース「ページワン(Page One)」と「テンポイント(The 10 Point)」にインスピレーションを得て、デヴィッド・ボウイの逝去とパワーボール(アメリカの宝くじ)の抽選結果、ゴールデングローブ賞の結果に関するスナップを制作した(上記動画)。これにより、WSJはCNNを出し抜くことができた。CNNは通常、WSJより前の米国東部標準時午前3時頃に「ディスカバー」向け配信を行っているが、その時点ではこれらの出来事を報道するには、タイミングが早すぎたためだ。

Snapchatは長期的戦略

デジタルニュースの編集部は、テストをしてすぐに結果を見たいと考えがちだ。だが、Snapchatに関しては、ニュース編集者やパブリッシャーは長期的な視点をもつ必要がある。

WSJがSnapchatを利用する理由は、いまから5年後に購読者になってくれることを願って、まだ購読習慣がついていない、より若い世代の新しいオーディエンスと接点をもつことにある。

「これは、新しいプラットフォームにおける新しいオーディエンス獲得に向けての取り組みだ。すぐに購読者になるユーザーの獲得を目指しているわけではない」と、マーシャル氏は最後にコメントした。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)