WSJ、ペイウォール戦略の「抜け穴」を完全に塞ぐ

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)がペイウォール戦略の引き締めを強化している。

記事の見出しをコピー&ペーストしてGoogle検索にかけることで、ペイウォールを回避できる「Googleの初回クリック無料機能」が2月6日以降、無効化された。WSJは昨年、40%のオーディエンスに対して4つのセクションに渡って、この機能を無効にするテストを行っている

驚くべきは、このテストを実施した2週間、サブスクリプション登録者数が86%も上昇したことだ。WSJは、今回の完全な無効化は、ひとつの実験にすぎないというが、どれくらいの期間続けるのかについてはコメントしていない。

過去最大の前四半期対比増

ダウ・ジョーンズのチーフ・マーケティング・オフィサー、スージ・ワトフォード氏は、「一定数の人たちがペイウォールを避けてきていた」と述べる。WSJは2016年の最後の3カ月、前四半期と比べて、サブスクライバーが11万人増え、110万人になった。広報担当者の説明によると、過去最大の前四半期対比増を叩き出したという。

ちなみに、過去6カ月の上位20記事のうち13記事は政治に関するものだった。この成長要因のひとつは、まさにトランプ効果だと考えられる。だが、その一方で、昨夏から同紙で実施されている取り組みも、結果に寄与している可能性が高い。それは、ペイウォール戦略の引き締めや登録メッセージの微調整、ソーシャルメディア上でリンクシェアを可能にしたことなどだ。

「ペイウォールを20年ほど続けているが、これまでほとんど変更してこなかった。そこで、我々は考えた。どうすればペイウォールを最適化してサブスクリプションの売上につなげ、かつ広告主にとっても有効であり続けることができるのかを」と、ワトフォード氏は述べた。

出版業界ではまれな存在

WSJは、広告よりも読者からより多くの収益を得ているという点で、出版業界ではまれな存在だ。そのためペイウォール戦略を保護しており、それには自社プラットフォーム外での記事配信に対して排他的であることが含まれている。しかし、プリント広告の衰退に伴い、WSJは購読収益を増やす方法を模索している。同紙の読者調査から判明したその解決策候補は、アドフリー版、個々の記事への課金、さらには宅配料金の追加請求などだ。

動画は、いまだにペイウォール戦略の枠組みの外におかれている。動画の広告料は高く、WSJはその視聴数を最大化することを望んでいるからだ。また、そうした施策は、リードの勧誘にもなるが、その可能性は高くない。ちなみに、去年の夏から、これまで無料だったアートやライフスタイルなどのセクションが、ほかと同様にロックされた。

その間、サブスクリプションがいつでもキャンセル可能であることを伝え、料金情報を前面中央に押し出すことが効果的なことを学んだ新チームは、人々をコンバージョンさせるためにサブスクリプションのメッセージ機能を微調整している。ペイウォール戦略を引き締めて以来、人々をサブスクリプションに向かわせた記事の平均数は66%増となったとWSJはいい、こちらは同社がいうところの、ロングテールの強さの証しになっている。

サブスクリプション戦略の今後

Googleの初回クリック無料機能は現在終了しているが、WSJはソーシャルメディア上でサブスクライバーやスタッフによってシェアされた無料リンクを人々に読んでもらうことで、新規オーディエンスへの露出を増やしている。その変更を行ってから、WSJはソーシャルメディア、主にFacebookからのトラフィックが30%増加している。WSJは、2014年にローンチしたWSJ+、無料のサブスクライバーメンバーシッププログラムから獲得できるものに似た、サブスクライバーへの特典のように、そのソーシャルシェアリング機能を扱ってる。

「ソーシャルでの活動に関する戦略にとても自信を持っている。それは会員特典だ。我々には多くの影響力のあるオーディエンスがいる。有料会員がそれらの記事をシェアできることを確実にしていきたい」と、ワトフォード氏は語った。

しかし、どれくらいこの好調が続くのかはまだわからない。なにしろ11万人の新規サブスクライバーは、セール価格(たとえば3カ月で12ドル[約1350円])で申し込んだ人がほとんどだ。また、申込み期間も2カ月、3カ月、6カ月、1年間と、さまざま入り混じっている。それらの契約が終わり、通常価格に戻ったときに、人々は契約更新するどうかが問われる。WSJのスタンダード年会費は、プリント版またはデジタルアクセスで396ドル(約4万5000円)。

サブスクライバーの多くはビジネスマンのため、それを社用経費として計上できるかもしれない。だが、それでも安い金額ではないし、サブスクリプションに基づいたパブリッシングには、伸びに限界がある。ニューヨークタイムズ(The New York)やワシントンポスト(Washington Post)がさらに低い価格を設定している期間は、なおのことだ。

Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac)