Vox Mediaが「経験価値マーケティング」分野を強化:ストーリーテリングは実世界が要

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バネッサ・フォンタネス氏

現代型パブリッシャーの典型を自認する、米デジタルメディア企業のVox Mediaは、同社のデジタルブランドを現実世界にも展開する必要があると判断を下した。

Vox Mediaは、同社が手がける「Vox.com」や「The Verge」「Curbed」など8つの特化型Webサイトの枠をイベントに拡大するため、バネッサ・フォンタネス氏を初代の「経験価値マーケティング」担当エグゼクティブディレクターに登用した。フォンタネス氏は「GQ メン・オブ・ザ・イヤー」や「ビルボード・ミュージック・アワード」「フード&ワイン・クラシック・イン・アスペン」など、数多くの有名な消費者参加型イベントに取り組んできた人物だ。今回の登用は、これらの経験が買われてのことだった。彼女はVox Mediaの社内クリエイティブ&ブランド・マーケティング部門であるVox Creativeに所属し、ブランド戦略のグローバル責任者を務めるリンゼイ・ネルソン氏の指揮下に入る。

この採用は、メディア企業が広告売上だけでは生きていけないと認識していることを示す、新たな兆候だ。イベントは売上を生み出すための手法として人気が高い。なぜならイベントは、唯一の体験手段がオンラインである消費者に対しては、コンテンツを生で体験できる機会を与えられるし、広告主には購入可能な新たなプラットフォーム(そのプラットフォームにおいて、広告主は消費者と直接交流できる)を提供できるからだ。

「Re/code」の買収がキッカケ

Vox Mediaは昨年、テクノロジーニュースサイト「Re/code」の買収を通じて、カンファレンス事業に参入(「Re/code」は「Code Conference」などのイベントを手がけている)。広告主に向けた消費者参加型イベントの企画を開始している。

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Vox「インフィニティ」イベント

2015年秋、料理ニュースに特化したVox Mediaのブランド「Eater」は、日産の日本国外向け高級車ブランド「インフィニティ」およびニューヨークの「ミュージアム・オブ・フード・アンド・ドリンク(MOFAD)」と協力して、展示スペース(右画像)を設置した。参加者らは、この展示スペースで、インフィニティの座席から一人称視点で料理ツアーを体験した。「今回のイベントは、初となる社内での仮想現実(VR)体験だった。画面上では体験できないことだ」と、ネルソン氏は語った。

「経験価値マーケティング」への進出という決定は、オンラインのみでのブランドの確立はむずかしいという認識でもある。米アイウェア通販のワービーパーカー(Warby Parker)や、Amazonのようなeコマース企業でさえ、自社ブランドを実店舗に拡大しているのだ。

であるなら、新手のデジタルパブリッシャーにとって、状況はなおさら厳しい。ユーザーが記事コンテンツをソーシャルメディアのニュースフィードで見つける傾向はますます強まっており、その出典となるサイト(そこでは、パブリッシャーがブランド体験を完全にコントロールできる)を訪問する機会は、決してないとは言えないまでも、稀なことかもしれないからだ。

ユーザーをイベントに来場させる力

すべてのデジタルメディアブランドがユーザーをイベントに来場させる力を持っているわけではない。しかし、たとえば「Eater」のイベントのように、ブランドを使って現実のオーディエンスを意のままにできるところにまでVox Mediaは到達していると、同社は考えている。

ネルソン氏は次のように述べている。「ストーリーテリングの重要な部分は実世界で行われるということを実感した。オンラインだけでブランドを確立するのは、やりがいと同時に困難を伴う。我々は、現実の世界にタッチポイント(接点)を設けた。こちらのほうがユーザーとの感情的なつながりを築きやすい」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Vox Media.