「バイラルメディアのバブルは弾けた」:関心を失うメディアバイヤーの本心

バイラルパブリッシャーの勢いに陰りが見えてきた。

バイラルノバ(ViralNova)ディストラクティファイ(Distractify)をはじめとするバイラルパブリッシャーは、話題にしたくなるコンテンツをFacebookでシェアすることで、大規模なオーディエンスを築いた。だが、メディアバイヤーたちが米DIGIDAYに語ったところによると、これらのサイトはプラットフォームへの依存によって、Facebookのアルゴリズム変更や不安定なトラフィックといった問題にさらされたままであり、そのため彼ら(メディアバイヤー)の関心は薄らいでしまったという。

また、一部のバイラルパブリッシャーはアドフラウド(広告詐欺)とビューアビリティ(可視性)の問題を克服できていないと、とある消息筋は語る。サードパーティーのデータによると、トラフィックが減少したパブリッシャーもあるようだ。

アップワージーという先駆者

「以前と比べると、バイヤーからの注目は減り、出稿の候補対象となることも少なくなった。その理由のひとつとして、バイラルパブリッシャーの流行は一時的なものであり、そのバブルが弾けたことが挙げられる」と、デジタルエージェンシーのオールマイティー(Almighty)で、最高イノベーション責任者(CINO)を務めるロブ・グリフィン氏は語る。

クリックを誘う見出しと、感情に訴える内容を利用することで、バイラルパブリッシャーの先駆者たるアップワージー(Upworthy)は急成長を遂げた。インターネット調査企業のクアントキャスト(Quantcast)によると、アップワージーは2013年末まで1カ月あたり4500万~8500万人のユニークビジターを集めていたという。

その成長に目をつけて、やり方をマネようとするバイラルパブリッシャーも何社か出現した。だが、そういったパブリッシャー――バイラルノベルティー(Viral Novelty)やファンティスタ(Funtista)、ワシントンポスト(The Washington Post)のノウモア(Know More)など――のなかには、過去1年間にコンテンツを1度も配信していないところもある。またそれら以外のバイラルパブリッシャーも、以下のインタラクティブチャートからわかるように、トラフィックが減少してきた。

 

 

「いまなお売上を伸ばせる」

トラフィック減少に悩まされているパブリッシャーのなかには、それでもソーシャルメディアを通じてリーチ拡大に成功しているところもある。アップワージーは今年10月、ソーシャルメディアを通じてリーチするユーザー数を、昨年10月の790万人から1010万人へと増やした。

「ユーザーがどこにいようと、これだけ莫大な数の人々にリーチできることに我々は満足している」と、アップワージーのエディトリアルディレクター、エイミー・オリアリー氏は語る。アップワージーは、ディスプレイ広告やバナー広告(これらはマネタイズにオンサイトトラフィックを必要とする)よりもブランデッドコンテンツを頼みの綱としているため、ソーシャルメディアコンテンツを介して、いまなお売上を伸ばせると同社の広報担当者は言う。

だが、必ずしもすべてのバイラルパブリッシャーに、アップワージーのような提携先ブランドがあるわけではない。また一般に、コンテンツをマネタイズするパブリッシャーの能力は、ソーシャルプラットフォームでは自社サイトよりもはるかに大きく制限される

トラフィックが失速した理由

ニュース記事リサーチ会社のニュースウィップ(Newswhip)がまとめた以下のデータは、フィールグッド(ほっこり)系パブリッシャーの大半が、Facebookに投稿した記事に対するインタラクション数を対前年比で増加させたことを示している。ただし、このデータは、インスタント記事をパブリッシャーのウェブページに表示される記事と区別していない。

したがって、たとえFacebookのインタラクション数が増加していても、インターネット調査会社のコムスコア(comScore)とアナリティクス企業のシミラーウェブ(SimilarWeb)のデータが示すように、パブリッシャーのウェブサイトを訪問するユーザー数が減少していることを否定できないのだ。

 

 

これらの一部のトラフィックが失速してきた理由のひとつは、プラットフォームに大きく依存しているだけでなく、ユーザーの親類縁者の投稿がパブリッシャー投稿よりも目立つようにFacebookがアルゴリズムを変更したため、パブリッシャーがオーガニックリーチを増やしにくくなったことだと、デジタルエージェンシーのディープフォーカス(Deep Focus)で最高経営責任者(CEO)を務めるイアン・シェイファー氏は語る。

アドエージェンシーGSD&Mのブロードキャストリサーチ部門でアソシエートディレクターを務めるジル・イシャーウッド氏も、プラットフォームのユーザーが増えるペースを上回るペースでバイラルサイトが現れているため、バイラルコンテンツ分野は過密状態にあるという。「クリックベイト(釣り記事)に対する疲労も起きているのではないだろうか」と、イシャーウッド氏は説明する。

広告主がプレミアム媒体へ移行

数年前とは異なり、バイラルサイトと新たな関係を結ぶ大手広告主の噂を、定期的に耳にすることはもはやなくなったとシェイファー氏。考えられる理由のひとつは、Facebookがアルゴリズムを変更して以来、「広告主は、プラットフォーム依存型のパブリッシャーに支出する媒体費のどれだけが、コンテンツ制作と比較してコンテンツ配信に回されているのだろうかと疑問を抱きはじめている」からだと、語る。

一方、グリフィン氏によると、バイヤーが広告費をバイラルウェブサイトからプレミアムパブリッシャーに移したもうひとつの理由は、バイラルウェブサイトでは「ビューアビリティとアドフラウドが深刻な問題である」ためだという。

ソーシャルプラットフォームに依存しているとトラフィックが変化しやすいため、フィールグッド系のパブリッシャーにとっては、リーチの規模が常に問題となりうる。アドエージェンシーのクレイマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でデジタルストラテジー部門のディレクターを務めるステファニー・エスティーズ氏によると、同社がネイティブアドのバイラル化を望むときには、キャンペーンがインスピレーションをテーマとする場合にのみ、フィールグッド系のバイラルパブリッシャーを利用するという。

そうでない場合、クレイマー=クラッセルトは、ネイティブアドのプラットフォームを手がけるシェアスルー(Sharethrough)やアドテクノロジー企業のトリプルリフト(TripleLift)などのサービスを利用するそうだ。これらのサービスは、リーチの規模と、収益性の高いクライアントのウェブサイトにユーザーを呼び戻すという点で優れているのだという。

リトルシングズという例外

この1年間、大半のバイラルパブリッシャーは不安定なトラフィックを抱えてきたが、明らかな例外がひとつだけある。リトルシングズ(LittleThings)は9月、10月と過去最高のトラフィックを獲得した。同社の広報担当者はさらに、11月は対前月比で10%増加するだろうと予測している。またリトルシングズは、2015年の2500万ドル(約28億円)から2016年の約5000万ドル(約56億円)という2倍近い売上の伸びも見込んでいる。

小規模なフィールグッド系サイトとは異なり、同社はキュレーションよりもコンテンツ制作に重きを置いてきた。また同社は、独自のアルゴリズムを駆使して、コンテンツを配信する前にバイラリティーのテストも行っていると、リトルシングズでプレジデント兼最高執行責任者(COO)を務める、グレートヒェン・ティビッツ氏は語る。

ティビッツ氏は、ここ最近のトラフィックの増加を、物議をかもした米大統領選の話題を避けた人々が、リトルシングズを訪問しただけと捉えることに難色を示す。「実際に我々は、政治とは無縁で、ブランドにとって安全な環境を求める広告主を呼び込んできた」と、指摘した。

Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo courtesy of LittleThings