Vice Media、先鋭的報道とブランドセーフティの両立めざす

エッジが効いたニュースコンテンツで知られる米Vice Mediaは、同社の報道の方向性を気にする広告主から広告出稿を避けられる事態を、これまでに何度も経験してきた。ちょうど今春、YouTubeの広告でブランドセーフティの問題が持ち上がったときのような事態を。

「ブランドセーフティの問題については、我々はよく知っている」と、Vice Media広告プロダクト・ソリューション部門シニアバイスプレジデントのアンドリュー・スミス氏は語った。「報道は厳しい分野だ。多くのブランドから、一律にブロックされている。デジタルプロパティ特有の問題だ。我々はターゲットに合わせてコンテンツを作ることができる一方、仕事がより難しくなっている」。

対策ツールを独自開発

1年前、まだ大手企業がブランドイメージ毀損を恐れて広告をYouTubeから引き上げてはいなかったころ、Viceはセンシティブなブランドの広告を自社サイト上の安全なページに誘導するツール「ユニティ(Unity)」を、グレープショット(Grapeshot)と共同開発した。このツールは、ブランドが広告出稿を避けたがるテーマ(暴力など)で、Viceの記事ページをスキャン。さらにほかのタイプのキーワードを検索し、スポーツやテックなどのカテゴリー別に分類する。記事の読者も、人口統計データ、興味・関心、意図、挙動に基づいて115ものオーディエンスセグメントに分類される。

Viceはユニティのおかげで、ブランドセーフティを意識する広告主向けのコンテンツを選び出せる。またそうした広告主に対して、ほかのオーディエンスターゲティングの目標達成に貢献し、より広範囲のオーディエンスにリーチすることが可能だと、アピールできる。テック系記事にいつもアクセスしている読者が多数の旅行記事を読んでいるかどうか、同社オンラインファッションマガジンi-Dの記事にテック系の読者から好かれる要素があるかどうかも判断可能だ。そうした情報が増えると、Viceは旅行やファッションに関するコンテンツを、テック企業の広告主に売り込める。

「なかには、わずかにでも人を刺激しそうな要素があるコンテンツはすべて避けたがるクライアントもいる。その場合はもっとも安全な記事だけをターゲットにする。ポジティブなトピックを見つけ、そのためのオーディエンスを作り出すことを、我々はこれまでずっと追究し続けてきた。こうしたことを言えるのも、現在のソリューションのおかげだ」とスミス氏は語った。

尖ったままでいるために

Vice Mediaは最近、このツールを22の海外市場と17の言語で使用できるようにした。本ツール活用の一例として、Viceは同社のコンテンツを洗い込んで、主力メディア「Vice」「i-D」やアートメインの「クリエイターズ(Creators)」などの記事から、ウィメンズファッションのカテゴリーを作っている。またここ数カ月間、Viceはフランス、イギリス、アメリカなど5カ国で、グローバルなファッション市場をターゲットとするダイレクトキャンペーンを実施してきた。

ユニティはいまのところ、テキストベースのコンテンツでのみ効果を発揮する。だが、Viceはほかのパブリッシャーと同様に多くの動画コンテンツを制作していることから、広告主が同一水準でのブランドセーフティのフィルタリングを求めてくると予測している。そのためViceは動画字幕の作成とそのキーワード検索により、テキストベースの記事で実行しているのと同じ対策を取ろうとしている。コンテンツの全体を評価するために、テキストと動画コンテンツの両方を処理しはじめているというわけだ。すべての画像と動画の処理が完了するのは、来年後半を見込んでいる。

Viceはそれでいて、先鋭的な報道を一度も諦めたことがない。そうした報道は、読者の高いエンゲージメント率に基づくと、広告主にとって価値があると確信しているのだ。「透明性を高めること、そしてブランドの目標達成を最大限支援することが、我々の役割だ。ブランドの意向を裏切らない一方で、少しばかり異なる意見も発信していきたい」とスミス氏は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)