Facebookファースト戦略で読者拡大を狙う「ヴァージ」:少ないリソースで大きな効果

Vox Mediaが所有するヴァージ(The Verge)は、さらにバーティカル化を進めるため、同社のガジェットブログ「サーキット・ブレーカー(Circuit Breaker)」で成功した戦略を応用する構えだ。ヴァージが2016年春にローンチしたサーキット・ブレーカーでは、オーディエンス拡大のきっかけとなった動画に注力し、幅広く戦略を展開している。

たとえばFacebookでは、サーキット・ブレーカー ページの100万人近いファン向けに動画配信、Twitterではライブ番組を開始、さらにスポンサーシップを通じて広告主に個別販売できる動画プロジェクトなどを行なっている。

サーキット・ブレーカーの運営チームは依然として小さい。専任スタッフは5人のみで、ヴァージの別のスタッフがたびたび寄稿している。しかし、いまとなっては、サーキット・ブレーカーはヴァージの月間ページビュー数の12%超、さらに月間動画視聴回数の30%を占めるまでになった。アナリティクス企業のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)のデータによると、サーキット・ブレーカーの動画視聴回数は、平均で46万5000回を超えるという。

オーディエンス拡大のカギ

「我々は戦略を学んできた」と、ヴァージの編集長であるニレイ・パテル氏は語る。

ヴァージは現在の名称で知られる前、「ディス・イズ・マイ・ネクスト(This is My Next)」というメディア名で主にガジェットを扱っていた。だが、編集範囲が拡大し、アプリやゲームのような近しい分野だけでなく、著作権やプライバシーの未来といった広範なトピックを取り扱ううちに、ガジェット関係のニュースが切り離されている感覚が出てきてしまった。

パテル氏は、ガジェット関係の記事には別の発信場所を与えたいと思い、ガジェットに関心のある特定のオーディエンスにリーチするにはFacebookがもっとも手っ取り早いと考えた。ヴァージがサーキット・ブレーカーを分離させた当初は、動画ではなく、テキストとビジュアルコンテンツを組み合わせることに重きを置いていた。

だがほんの数週間のうちに、同サイトで編集戦略を担当するディレクターのヘレン・ハブラック氏は、動画の視聴がオーディエンス増加を牽引していることに気づいた。「現在、Facebookページを成長させる唯一の方法は動画だ」と、ハブラック氏は断言する。

そのためには、動画の制作本数を迅速かつ手頃な費用で増やす方法を見つける必要があった。そこでサーキット・ブレーカーでは最初の1年間は、製品の特徴を紹介する短い動画(同サイト流にいえば「スライドショー動画」)に注力した。そして数カ月のうちに、1日1本以上のスライドショー動画を投稿するようになった。

Facebookファーストの戦略

この戦略はすぐに、分散型動画メディアのインサイダー(Insider)やミレニアル世代向けのメディアであるデイリー・ドット(Daily Dot)など、多数のサイトに模倣されることになった。そのため、サーキット・ブレーカーでは動画の制作本数を増やし続ける方法を考えなければならなかった。そこで、今夏より新たにヴァージのスタッフを起用する動画シリーズ(同サイトでは「パーソナリティ動画」)を開始した。

その一例が、サーキット・ブレーカーのスタッフであるケイム・ガーテンバーグ氏がホストする「DIYガジェット(DIY Gadgets)」動画シリーズだ。この料理教室風の番組では、Amazonの「Alexa」と同じような音声アシスタントを自作する方法などを紹介している。シリーズのスポンサー権は、すでに半導体メーカーのクアルコム(Qualcomm)が契約している。

別の見方をすれば、DIYガジェットやウォルト・モスバーグ氏がホストする「ガジェット・ミュージアム(Gadget Museum)」が、ケーブルテレビの30分番組として放映されるのも想像できるだろう。だが、現段階ではまだFacebook動画であり、シリーズのエピソードは短く、音声なしで視聴することができるものになっている。「Facebook最優先にした番組を試験的に公開しようと努めている」と、サーキット・ブレーカーの編集長を務めるジェイク・キャストレネイクス氏は語る。

こうしたFacebookファーストの戦略は、「ヴァージ・サイエンス(Verge Science)」をはじめとするヴァージのほかのバーティカルメディアでもすでに使われている。チューブラー・ラボのデータによると、ヴァージ・サイエンスでは、この2カ月間でFacebookのオーディエンスの規模が2倍近くになったという。ヴァージ・サイエンスの動画シリーズは、サーキット・ブレーカー同様に、同社のスタッフであるローレン・グラッシュ氏がホストを務めている。

「目的は、『Facebookをうまく活用してサイトへのトラフィックを増やす』ことではなかった」と、パテル氏は語る。「我々が目指すのは、Webサイトを構築することではない。ブランドを構築することこそが、目指すことなのだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)