コンデナスト、バーティカルメディア戦略で政経面を強化:新メディア「ハイブ」創刊の背景

コンデナストのファッションカルチャー誌「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair:VF.com)」は、去る6月1日に新メディア「ハイブ(the Hive)」を創刊した。同サイトは、ビジネス、政治、テクノロジーの3分野を横断するバーティカル(特化型)メディアとなっている。

この動きは「ヴァニティ・フェア」の歴史にも合致する。彼らが毎年発表する「ニュー・エスタブリッシュメント・リスト(New Establishment List)」は、20年以上に渡ってメディア・経済界の有力者たちを称え、紹介してきた。その有力者たちによるパネル、インタビュー、ネットワーキングの場となる「ニュー・エスタブリッシュメント・サミット(New Establishment Summit)」も、2年前からサンフランシスコで開催されている。去年はFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOが、スピーカーとしてヘッドラインを飾った。

VFのバーティカル戦略

「ハイブ」を率いるのは、編集員のジョン・ケリー氏、デジタルディレクターのマイク・ホーガン氏、そして「VF.com」の編集員であるマット・リンチ氏の3人だ。ニック・ビルトン氏、ウィリアム・コーハン氏、サラ・エリソン氏といった、著名ライターたちによる記事を1日に10本のペースで掲載するという。BMWとラグジュアリー・ブランドであるシャイノーラ(Shinola)が立ち上げスポンサーとなっている。

「VF.com」は、ほかにも野心的にバーティカルメディアの立ち上げを計画している。数カ月後にはセレブリティ、スタイル、そしてハリウッドといった分野のメディアが発表される予定だ。雑誌メディアのWebサイトのデザインは、雑誌そのものを想起させるのが典型的だ。一番最初に表示されるTOPページが入り口となっており、そこからいろいろなセクションを選ぶことができる構成となっている。

しかし近年、人々はサイトのTOPページから記事を見つけるのではなく、配信プラットフォームなどを通じて記事を見つけるようになってきている。月に850万のユニークビジターを擁する(4月、comScore調べ)「ヴァニティ・フェア」は、それをよく理解している。「ハイブ」のように特定の分野にフォーカスを絞ったメディアは、ソーシャル・メディアのタイムライン上で人々の興味をつかむのに適しているのだ。

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ハイブのトップページ

ブランディングも容易に

また、「ヴァニティ・フェア」の編集長であるグレイドン・カーター氏は、独立したタイトルを持ったビジネスニュースサイトを立ち上げたいと長い間考えていた。そこで、同誌のトピック特化型アプローチの一環とすることによって「ハイブ」が生まれたのだ。

「雑誌の素晴らしい点は(読者が)新しく何かを見つける、という発見があることだ。しかし、それはWebではうまくいかない」と「ヴァニティ・フェア」のパブリッシャー・最高売上責任者(CRO)であるクリス・ミッチェル氏は言う。「『ハイブ』は、『ヴァニティ・フェア』のブランド力、オーディエンス、そしてSEOを持っている。そのうえで『ハイブ』としてのスペースを確立している。これは、広告主にとって良いことだし、読者にとっても面白くなるだろう」。

ブランディングは、すべてのデジタル・パブリッシャーがオーディエンスをスケールさせるうえで直面する問題のひとつだ。「ニューヨーク・マガジン(New York magazine)」の「カット(The Cut)」や「ヴァルチャー(Vulture)」、そしてBuzzFeedによる「テイスティ(Tasty)」や「ニフティ(Nifty)」のように、すでにあるブランド名を利用するのではなく、新しいブランドをスピンオフさせるパブリッシャーは多い。

エージェンシーの意見

「Facebookという強力なプラットフォームのおかげで、新しいブランドをはじめるにあたりパブリッシャーは、Webサイトすら必要じゃなくなっている」と、語るのはデジタスLBi(DigitasLBi)のバイス・プレジデント、そしてペイド・ソーシャル・グループディレクターであるジーン・ブライト氏だ。

しかし、ただ新しいブランドを立ち上げれば良いというわけではない。「消費者自身が選択してくれないといけないため、すでに抱えているオーディエンスが存在していないといけない」と、ウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)のビジネス・ディレクター、ベンジャミン・アーノルド氏は言う。

「広告に対する消費者の態度は継続して冷めたものになっている。ソーシャル・メディアで友人が『オススメ』する広告であってもだ。また、すでに世の中にはたくさんの種類のコンテンツが溢れている。そんななかで、有機的に多様化を図ろうとするパブリッシャーにとって、これは簡単なことではない」。

「ハイブ」は「VF.com」上のコンテンツであり、「ヴァニティ・フェア」のブランド力を活用しているが、インスタグラムやTwitterでは、@VFHIVEという独立したハンドルを擁している。そして毎日配信されるニュースレター、ビデオ、ライブイベントそしてポッドキャストも独自に行うことになるという。もちろん、それぞれが広告を展開することになるだろう。

またFacebookとTwitterに加えて、LinkedIn(リンクトイン)にも記事を出していく。ホーガン氏によると、LinkedInには「このコンテンツに興味を持つ、オーディエンスがたくさん存在する」ということだ。

広告展開におけるメリット

「ヴァニティ・フェア」が扱うトピックは多岐に渡る。テクノロジー記事の閲覧に訪れた読者は、ハリウッド系コンテンツを読もうとは思わない。しかし、トピックに特化するこの戦略によって、「ヴァニティ・フェア」のコンテンツをそれぞれのソーシャルプラットフォームに適応させることができるのだ。セレブリティ関連の記事はインスタグラム、という具合に。

しかし、「ヴァニティ・フェア」は、すでに広く認知されているURLやブランド力を失いたくはない。そのため「ハイブ」のURLは、「http://www.vanityfair.com/news」となっているのだ。

また、広告主に対する考慮もあった。「ヴァニティ・フェア」という広く認知されたブランド力を持ちながらも、独自の見た目と質感を持たせることで、「ハイブ」がより保守的な広告主たちにアピールできるように狙っている。「AIGのような広告主にとっては、ファッションやセレブリティ関連のコンテンツで埋め尽くされているサイトに広告が載るのは、嫌なはずだ」と、ミッチェル氏は言う。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)