ユニリーバの「スタートアップ企業」活用術 〜長期的な関係づくりで目標達成

ブランド企業やエージェンシーは、これまでに多くのスタートアップを独自の指導や投資などを通じて支援してきた。しかし問題がひとつある。彼らの関係は稀にしか長く続かないということだ。大企業がスタートアップを支援する理由がPRであろうと、イノベーションの現場に近づくことであろうと、長期的なパートナーシップを見据えてはいないのが現状だ。

ユニリーバ傘下400社とスタートアップの提携に携わるユニリーバ・ファンドリーのトップ、ジェレミー・バセット氏は「この問題は解決しないといけない。広報やバズに留まるならば、スタートアップとの協業はすぐに水泡に帰すだろう」と話した。バセット氏は今後、スタートアップのビジネス、特に財務状況まで目を光らし、長期的な関係づくりを見据えている。

多くの企業と同様に、ユニリーバの課題はミレニアル世代(15-35歳の年齢層)といかにエンゲージしていくかだ。ここで登場するのがチケット販売アプリの「YPlan」だ。この「YPlan」は2015年の夏にユニリーバ・ファンドリーのテストに参加したが、その時すでに2回目の投資ラウンドまでで2400万ドル(約29億円)もの投資を集めた。「YPlan」はローカルイベントなどのチケットを販売するアプリを手がけ、顧客の80%が20歳から34歳の間である。

成功した「YPlan」の例

「YPlan」のアプリは、ユニリーバ・ファンドリーが試験的に試している「ウォールズ・アイスクリーム(Wall’s)」のポップアップストア(期間限定店舗)のマーケティングパートナーとして採用された。「ユニリーバ側は、『スタートアップを恐れることなく、支援していこう』という心構えで支援してくれた」と、「YPlan」のパートナーシップ担当者であるロス・ムレイ=ジョーンズ氏は語った。「イベント情報アプリとしては、我々はとても存在感がある。ブランドにとって実験を行うのにとても自然な場所だ」。

3カ月で350件ものモバイル予約を受けた後、ユニリーバ・ファンドリーは「YPlan」をアイスクリームブランドである「マグナム(Magnum)」や「コルネット(Cornetto)」とも組ませた。また、モバイルチケットの発行や、顧客にFacebookデータが反映されたプッシュ通知などを提供したいという思いから、ユニリーバは2015年夏の終わりまでに「YPlan」をもう5つの企業とタッグを組ませている。

「コルネット」「ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)」「リプトンアイスティー」「リンクス(Lynx)」「マグナム」と「ウォールズ・アイスクリーム」の6企業と「YPlan」のアプリを通じ、ユニリーバは200万人にリーチし、ブランド企業が開催するイベントへのチケットを5000枚販売することに成功した。

3つのパラメーターで判断

「エンゲージメント率はそこまで重要な数字ではないが、200万人へのリーチはかなり高い方だ。良い機会があるという兆候だ」と、バセット氏は話す。「より多くの人が強制的で邪魔をする広告を拒絶し、アドブロックをインストールするようになってきている。しかしその反面、素晴らしいコンテンツも求めている」。「YPlan」はこの両方をうまく満たしている。

さらにバセット氏は、「この言葉はあまり使いたくないが、『グローカル(グローバルとローカルの造語)』な立場で管理することができる。ユーザーは自身に関連性の高いグローバルなイベントを見つけられる。効果的かつ効率的で維持もしやすい」と、コメントした。

通常、スタートアップは特定の審査を経てからテストプログラムへの参加が認められるが、ユニリーバ・ファンドリーはパートナーシップの継続を3つのパラメーターで判断する。アイデアは有効なのか、効率性は高いのか、顧客にリーチし続けられるか、の3つだ。

素晴らしく高い成功率

「YPlan」の場合、効率性は、1回の取得もしくは1回のエンゲージメントのコストをいかに低くするかであった。アイデアの有効性はコミュニティーのエンゲージメントの幅と深さによって判断された。すでにロンドン、ブリストル、ニューヨークとサンフランシスコなどを含む5つの都市に展開していて、スケールもある。イギリスで実績を残し、次のステップとしてより多くのユニリーバのプロジェクトに参加している。

グローバル試験プログラムに参加した85の企業の内、40もの企業はすでに目標基準を達成していて、はるかにスケールアップをしている。今後彼らはユニリーバと最低でも1回はプロジェクトをともにすることで、ユニリーバのブランド、投資や指導を利用することができる。スタートアップの多くが廃業するなか、この成功率は素晴らしい。

企業にとってスタートアップと仲良くすることはよく見受けられるが、毎回成功するとは限らない。「ブランドやエージェンシーたちはスタートアップとパートナーシップを組みたがるが、6カ月後にはなぜ結果が出なかったかと嘆く」と、大企業とスタートアップの仲介をする企業である「コリダー(Collider)」の共同設立者であるローズ・ルイス氏は話す。

大切なのは終盤のイメージ

「『考えは大きく、しかし事業の初めは小さく』の精神が必要だ。これを『YPlan』はうまくこなしている。スタートアップがユニリーバのすべてのグローバルブランドを担当することはできないが、『ウォールズ・アイスクリーム』のみならば可能だ。この終盤戦のイメージができていないのならば、多くの商品は単なるおもちゃであり、詐欺であり、顧客ではなくメディアを中心としたものだ」と、ルイス氏は話す。

Lucinda Southern(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image by Thinkstock / Getty image