米『ワイアード』誌、 収益の2/3はデジタル部門から:高品位なスポンサードコンテンツがカギ

コンデナスト社の雑誌『ワイアード』(米版)のスポンサードコンテンツが売れている。特に、デジタル部門における貢献は目覚ましく、『ワイアード』全体における収益の3分の2を占めるほどになったという。その躍進には、同誌ならではのクオリティを担保する、ユニークなスポンサードコンテンツの制作体制が寄与している。それは、フリーランススタッフのコミュニティを利用するというものだ。

『ワイアード』OBで組織された精鋭部隊

『ワイアード』には、9人体制のブランドコンテンツユニット「ワイアードブランドラボ」が組織されている。2015年初頭からこれまでに、ポルシェ、ニューヨーク銀行、マリオット、合衆国陸軍など、15を超える大手ブランドのスポンサードコンテンツを手掛けた。つい先日も、ノキアがマルチプラットフォームキャンペーン「#maketechhuman」の1年契約にサインしたところだ。

『ワイアード』では、スポンサードコンテンツを作成するのにもっとも効果的な方法は、「ワイアード的なアプローチ」を知っている人間を巻き込むことだと考えている。「ワイアードブランドラボ」は、過去に同誌で働いた経験のあるプロデューサーや映像編集者、フリーライターを招集。たとえば最近、ノキアがスポンサーに付いた、テクノロジーが恋愛や人間関係へもたらす変化についてのスポンサードコンテンツを手がけた、『ワイアード』特集記事の元編集者ジェイムズ・デイリー氏などだ。

「いいとこ取り」の制作体制

同誌のこうしたやり方は、親会社のコンデナストのやり方にならったものだが、そちらの方がさらに前のめりだ。コンデナストのブランドコンテンツユニット「23Stories」では、編集部員が直接、スポンサードコンテンツを手がけている。一方、「ニューヨークタイムズ」や「ワシントンポスト」といったパブリッシャーは、編集部とは異なるスポンサードコンテンツ専門のユニットを設立し、広告と編集記事の境界線が曖昧になりすぎないよう努めている。

『ワイアード』でアソシエイト・パブリッシャーを務めるマヤ・ドレイジン氏は、「私たちは、ほかのいくつかのモデルと比べて、中間的な立ち位置を取っている」と、説明した。「目標は、編集記事と同じ水準のスポンサードコンテンツを作ること。しかも、ブランドコンテンツユニットには、『ワイアード』の特徴を濃く残したものを生みだしてほしい」。

もちろんこのやり方には、本質的に避けられないリスクとして、読者の信頼を失うおそれが残る。ドレイジン氏によれば、『ワイアード』はそのリスクを回避するため、ブランドコンテンツユニットで働くフリーランサーに対し、期間制限を設けているという。スポンサードコンテンツを制作したら、その後3カ月間は編集記事を着手できない決まりになっている。これは、同じライターの署名記事が、編集記事とスポンサードコンテンツの両方で同時に公開されるのを避けるためだ。

成長するスポンサードコンテンツ事業

世界第5位のメディアエージェンシーMECのマネージングパートナーであるブライアン・コー氏は、同誌の採用しているモデルは「とても魅力的」だと評価。加えて、ほかのプラットフォームへリーチを拡大できるブランド力について、「『ワイアード』と提携するブランドは、同雑誌のブランドとしての影響力にあやかれるだけでなく、その結果として生じる増幅効果にも期待ができる。マーケターとして見た場合、読者が騙されているとは感じずに受け入れてくれるならば、誰が記事を書くかは問題にならないと思う」と語った。

こうした作り方は、コンデナストのなかでも特にデジタル化を進めてきた『ワイアード』と相性がいい。同誌のデジタルコンテンツ収入は、2013年の時点ですでに全体の半分を占め、さらに増加を続けている。現在は、その収入の約68%がデジタル事業によるという。

これはコンデナストグループのなかでもっとも高い比率だが、スポンサードコンテンツ事業と編集記事の増加が、このような数字に寄与している。「Wired.com」は2015年の7月、ユニークビジター数が1330万人になった。これは前年の約2倍にあたる。2015年の累計ユニークビジター数は2億に達する見込みで、昨年の記録を更新するペースだ。

さまざまな垣根を取り払った『ワイアード』

『ワイアード』のスコット・ダディッチ編集長によると、デジタル事業の成長は、同誌が従来の紙媒体部門とデジタル部門の垣根を取り払い、さらに記事で扱う内容をテクノロジーだけにとどまらず、デザインやカルチャーにも広げた成果だという。見る人によって色が違って見えるドレスの記事は、今年最大級のカルチャー記事であり、掲載初日に2600万のユニークビジターを獲得した。

ダディッチ編集長は「ストレートなテクノロジーニュースはもはやありふれているし、『ワイアード』の記事にもテクノロジーは入り込んでいる。だからこそ、私たちは、さらに掘り下げた内容を心がけている」と、幅広い分野でコンテンツを提供していくことを強調した。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo from Scott Dadich / Instagram