Slackを「すべてのハブ」にすることを目指す「タイムズ」

チャットソフトウェアの「Slack(スラック)」は、世界から不要な電子メールをなくす役目を果たしているだけでなく、ニュースの編集室で効率的なパブリッシングツールとして使われ始めている。

英国では、保守系高級紙の「タイムズ(The Times)」が早い時期からSlack信者となり、まだベータ版であった2013年後半から利用している。その結果、最初は6名のスタッフが34のチャンネルを利用していたのが、現在では160名の登録ユーザーが92のチャンネルを利用するまでになった(Slack全体では、1日のアクティブユーザー数が2015年10月の170万人から230万人に増加した)。

会議が50%減り、透明性が40%高まった

「(Slackの)採用はゆっくりだが着実に増えている」と、タイムズでデジタル戦略および開発担当プロダクション・エディターを務めるマット・テイラー氏は言う。同氏の説明によると、Slackを最初に使用したのは、6人のスタッフから成る戦略および開発担当チームだったという。それが、いまでは編集チームも加わり、Slackの新しいユーザーを勧誘している状態だ。

「これは隠れた機能がたくさんある製品だ」というのは、ダブリンにあるスラック・テクノロジーズ(Slack Technologies)のEMEA(欧州/中東/アフリカ)地域本社で顧客担当シニアマネージャーを務めるジェイムズ・シュレット氏だ。「人々は、これをコミュニケーションプラットフォームだと考える。その後、ファイル共有に使えることに気づく。それから、アプリと統合できることを知る。使えば使うほど、自分の特別なニーズや組織のニーズに合わせてカスタマイズするようになるのだ」。

タイムズによれば、Slackを使うことで会議が50%減り、オープンな場で行われる会話が増えたことで透明性が40%高まったという。また、近いうちに全社で導入することを計画しており、親会社のニューズ・コーポレーション(News Corp)は、世界各地にある同社のオフィスで利用するためにスラック・テクノロジーズと交渉している。

今後、ますますSlack頼りになりそう

だが、タイムズは速報ニュースの報道から手を引くことになっているため、今後ますますSlackを頼りにすることになりそうだ。これまで、タイムズのワークフローは毎日午前中1回の更新に合わせて構築されていた。だが、これからは更新が1日3回になり、スタッフにとっては締め切りの回数が増えることになる。そのため、コミュニケーションを効率化し、ワークフローを透明化することが誰にとっても重要なのだ。

タイムズでは、Slackを使うことで、サイトの再設計に関する社内の意見が、部門の垣根を超えてすぐに伝わるようになった。たとえば、あるコンテンツがどこにあるのかとか、新しいサイトにコメント機能がいつ組み込まれるかといった質問に、すぐに回答できる。

もともと、このような意見は「Google Docs(グーグル・ドックス)」にまとめられることになっていたが、見つけにくいという問題があった。おかげで、スポーツ部や政治部といったさまざまなニュースデスクのスタッフが、英国のEU離脱やリオデジャネイロ五輪といった長期的なプロジェクトに関する最新情報を常に入手できるようになった。

トップページのニュースデスクに所属する8人のスタッフは、Slackを利用して、ネタ探しをしたり、タイムズに掲載できそうな話題をWebで検索したりしている。また、同じ話題を取り上げているほかの報道機関を見つけ、記者が競合他社の報道を詳しく知ることも可能になった。

コンテンツ作成と情報収集の出発点に

いまのところ、Slackから直接記事を配信することはまずない。テイラー氏は、次のように述べている。「ちょっとした手間がかかる作業だ。Slackの力を本当に発揮できるのはすべて社内の業務で、コミュニケーションを開放したり、自分がいま何をしているのかを正しく伝えたりするときだ」。

タイムズでは、新しいサイトデザインとともに新しいCMSを導入し、オープンでドキュメンテーションもしっかりしたAPIがあるSlackとの将来的な統合に向けて準備している。これらを組み合わせれば、Slackをコンテンツ作成と情報収集の出発点にできるのだ。

「これを使って、最新のニュースについて議論するようなチャンネルにツイートを投稿できるようになるかもしれない。そうなれば、『/newstory[スラックのアーカイブへのリンク]』といったスラッシュコマンドを使って新しい記事をCMSで作成し、『New Article created[リンク]』というコマンドでその記事をSlackに戻せるようになる」。その記事が、字幕作成、加筆、公開といったさまざまな作業工程を経て、Slackのチャンネルに投稿されるようになるわけだ。

現在、テイラー氏と彼のチームは、Slackをさらにカスタマイズするためにボットの数を増やしているところで、記事がいつタイムズのサイトに公開されたのか、誰がいつ記事を更新したのかといった情報を通知することが可能になる。また、タイムズでは、社内食堂のWebサイトの評判がきわめて悪い。そのため、テイラー氏のチームは、情報をあちこちから集めて投稿できるボットを開発し、今日のランチが何なのかを誰もがわかるようにした。

「このような取り組みは、Slackをすべてのハブにしたいという我々の決意にのっとった行動だ」とテイラー氏は付け加えた。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)