新「データサービス」を開始した タイム社の狙いはペット:新CEOの舵取りはいかに?

タイム社(Time Inc.)は、自社の顧客データを使って新しいビジネスを考えている。8月7日、月額20ドルのプログラム「ペットヒーロー(PetHero)」を開始した。ペットヒーローの会員になると、ペット製品やペットのおもちゃのほかに、ペットの医療費の割引が得られる。

消費者と直接向き合う

ペットヒーローは、昨年タイム社のCEOに就任したリッチ・バティスタ氏の下で立ち上げられた、コンテンツではなくサービスを中心に据えたビジネスであり、新しいビジネスチャンスに向けた、タイム社のオーディエンスデータの利用施策の一環だ。

「ピープル(People)」や「スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)」といったタイム社の雑誌は、かつてはそれぞれ顧客データを囲い込んでいた。しかしタイム社は、この1年間でその情報を一元化し、同社のマーケターや広告主が使えるようにと、自社の広告ターゲティングプラットフォームであるビアント(Viant)やサードパーティからのデータと組み合わせた。

「タイム社はさながら、ダイレクトマーケターにとって夢の世界だ」と語ったのは、タイム社のCOO、ジェン・ウォン氏。「消費者に直接向き合うというのは広告ビジネスとは異なるが、それは我々のDNAに刻まれている。当社は広告主向けに構築したインフラがある。そのインフラも我々は利用する」。

1億3000万人の情報

消費者からの収益の増加が求められているのは、タイム社(をはじめとする従来型の出版社)が紙媒体の運営をマネタイズするのに苦戦しているためだ。2017年第1四半期、タイム社の収益は前年比で8%減少。同社は、何カ月にもわたる入札プロセスの末、本体の売却はしないことに決め、直後に、代わりに3誌を売りに出した。同社はまた、ブランドのライセンシングの推進を一段と強めている。

タイム社によると、同社には住所、クレジットカード情報、オンラインの閲覧利益や検索履歴など、現在と過去の顧客あわせて1億3000万人の情報があり、ビジネスチャンスになるようなパターンやトレンドをこのデータから掘り出すことができる。

「うちの顧客ベースには大量の情報があり、そこから顧客の氏名、職業、求めているコンテンツの種類に関するさらに多くの情報がわかる」と語ったのは、タイム社で消費者マーケターおよび収益のEVPを務めるレスリー・ダッカー・ドーティ氏。「この情報を使って、ブランドの拡張と(ユーザーあたりの平均収益の)拡大が可能だ」。

自社内メディアでも利活用

たとえば、タイム社のほかの雑誌でフィットネスや減量の記事を読んでいる「スポーツ・イラストレイテッド」の女性購読者を、食事計画と食品のサービス「クッキング・ライト・ダイエット(Cooking Light Diet)」の対象にするということが考えられるだろう。また、閲覧履歴から子供がいると思われる「リアル・シンプル(Real Simple)」の購読者に、タイム社のプライベート管理アプリ「コージー(Cozi)」のインストールを勧めるというのもある。こうした情報によって、タイム社はサービスの顧客獲得にかかるコストが少なくて済む。

タイム社はまた、自社の顧客データを使った広告ターゲティングも計画している。たとえば、ペットヒーローで対象にするような人は、ペット製品ブランドのピュリナ(Purina)などでも、マーケターがターゲティングできるだろう。

「自社のためになる賢い施策だ」と語ったのは、メディアエージェンシーのPHDで、パブリッシュドメディアのグループディレクターを務めるジョン・ワーグナー氏。「保有するファーストパーティーデータにはとても価値があるのに、それにまだ手をつけていない出版社が多い」と、同氏はいう。

デジタル化が遅れた理由

タイム社など出版社は、FacebookやGoogleのような規模で、その種のターゲティングを提供するところまでには、まだほど遠い。ワーグナー氏は、この方向に進むパブリッシャーは増えるだろうと語りつつも、課題には直面することになると続けた。「もともとデジタルなところが先行している」からだ。

出版社は、顧客データを集約するチャンスは何年も前からあったが、広告収益が頼もしく増大しているあいだ、先延ばしにしていたのだ。

「(オーディエンスデータが)存在することを雑誌出版社はずっと知っていたが、オーディエンスの集約に必要な投資を進んで払おうとはしなかった」と語るのは、メディアコンサルティング会社のクオンタム・メディア(Quantum Media)の社長、クリスティーン・アーリントン氏だ。「(デジタルメディアは)1人あたりの収益が非常に小さい。1人あたり月額99セント増やすためだけに、そうしたデータを集約する意義を正当化する必要がある」。

ペットヒーローの可能性

タイム社は、広告ターゲティングの改善が、デジタル広告収益(2017年第1四半期は総額1億1900万ドル)と、読者からのさまざまな収益の増加につながればと考えている。たとえば、ペットヒーローは潜在市場が大きい。ギャラップ(Gallup)によると米国人は44%がペットを飼っており、米国ではペットのオーナーと動物愛好者、あわせて1億人にリーチしているとタイム社は主張している。

ただし、雑誌購読のコンサルティング会社、メクオダ・システムズ(Mequoda Systems)のCEO、ドン・ニコラス氏によると、コンシューマーマーケティング活動の現代化を試みる出版社のいちばんの課題は、異なるソフトウェアシステムを統合してリアルタイムでやり取りできるようにすることだ。

タイム社のウォン氏とドーティ氏によると、同社はまだ、自社のシステム、情報、およびデータの統合を進めているところだ。プロセスはスムーズに進んでいて、まだ明確にはできないがチャンスは見つかっており、2017年にはローンチの予定になっていると両氏は語った。

Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)