タイム社の分散型戦略が拡大、美容動画ブランドもローンチ:「ザ・プリティ」の狙い

タイム社(Time Inc.)はますますデジタルを第一に考えるパブリッシャーへと加速しているようだ。配信するサイトではなく、「配信される」コンテンツ、いわゆる分散型コンテンツを生み出す会社としての側面がますます強くなってきている。300人規模のリストラを発表した2日後、美容関連の動画ブランド「ザ・プリティ(The Pretty)」を新しく発表した。「ザ・プリティ」が生み出す動画はFacebookとインスタグラムで配信される。

ローンチ後は週に10の動画を公開する予定となっており、そのうち3つはスポンサードコンテンツとなる。最初に発表されているスポンサーはメイベリン・ニューヨーク(Maybelline New York)とロレアル・パリ(L’Oréal Paris)だ。6カ月間に渡り、スポンサードコンテンツが配信されるという。

「ザ・プリティ」は、タイム社のサイト「ハローギグルズ(HelloGiggles)」上に1セクションを所有し、「インスタイル(InStyle)」「リアル・シンプル(Real Simple)」そして「ピープル(People)」といったほかのタイム社のメディアでも配信されるという。タイム社が抱えているブランデッドコンテンツスタジオ、ザ・ファウンドリー(The Foundry)も利用する。「ザ・プリティ」以外にもタイム社は、ふたつのバーティカルにフォーカスを置いた分散型メディアブランドを年内にローンチする予定だという。

媒体社ならではの戦略

「ユーザーたちがどのサイトに来て何を見るかを決めるのではなく、ユーザーがいるところに行く、という性質になっている」と語るのは、タイム社のスタイル、エンターテイメント、そしてスポーツ部門コンテンツ戦略エグゼクティブ責任者であり「ザ・プリティ」のエディトリアルのトップであるゾーイー・ルダーマン氏だ。

インスタグラムのようなプラットフォームでは美容関連の競争が特に激しい。ブランド自身が従来のパブリッシャーたちよりも大きなフォロワー数を誇っている場合もある。メイベリンのインスタグラムのフォロワー数は530万人だ。この数は「ピープル」「リアル・シンプル」「インスタイル」よりも多く、タイム社が有するどのメディアのフォロワー数よりも多い。

デジタルにおけるビューティーブランドの立ち上げは、タイム社が苦戦してきたエリアだ。かつて「ミミ(Mimi)」を立ち上げたが上手く成長せず、最終的には「インスタイル」に統合された。しかし「ザ・プリティ」は、広告主を取り込むためのふたつのアプローチをもっている。まず最初は、タイム社の抱える複数のメディアにおいてコンテンツを配信できる点だ。ラダーマン氏によると、すべてを合計すると「ザ・プリティ」のコンテンツは5000万のソーシャルユーザーに届くことになる。

コンテンツの差別化

「ザ・プリティ」はコンテンツもユニークなものにしようと狙っている。それがふたつ目のアプローチだ。現在存在しているパブリッシャーによるビューティー関連のコンテンツは大きくふたつに別れるという。ひとつはメイク上級者にフォーカスしたもの、もうひとつはちょっと笑える他愛のないものだ。ラダーマン氏は、「ザ・プリティ」がそのちょうど中間にヒットすることを狙っている。ラダーマン氏が参考として引き合いに出したのは「ハローギグルズ」が生み出したアイライナーの難しさをまとめたビデオだ。これはタイム社がこれまで公開したビデオでもっとも再生回数が多いものとなっている。現時点でFacebook上のビュー数が5900万回に達した。

「メイクに使われるブラシ一つひとつをどう使うのか、ちゃんと分かっているような人を対象としていない。我々の動画コンテンツは知識を必要としない」と、ラダーマン氏は語る。

 

 

動画コンテンツは短いものになる予定だ。「ザ・プリティ」が制作するビデオは、シリーズになっているものでも30秒から90秒の長さに収まるという。これほど短ければ最後まで観てもらえる可能性も高い。それでいてFacebookの動画の途中で流れるミッドロール広告の対象となることもない。この広告は対象が90秒以上となっているからだ。

ローコストな運営方針

こうした戦略は、タイム社が「ウェルダン(Well Done)」をローンチするのに用いたものと同じだ。「ウェルダン」は食べ物のビデオにフォーカスを当てた分散型のメディアブランドとなる。「ウェル・ダン」はローンチから3カ月で各種プラットフォーム合計2億4500万ビューを叩き出した。これは2017ニューフロント発表会でタイム社の大きなポイントになった。

「ザ・プリティ」の運営体制は極めてミニマルなものになっているという。人数を教えてはくれなかったが、ラダーマン氏いわく、デジタルニュースデスクも含めて複数の異なる部門のスタッフが、この新しいブランドに取り組んでいるという。

Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)