「従来のテレビ会社は、現代を勝ち抜く連中ではない」:スリリストCEOのベン・レーラー氏

デジタルメディアパブリッシャーは皆、BuzzFeedからVoxに至るまで、次に攻略するプラットフォームはテレビだと見ている。彼らがオンラインで制作してきたコンテンツをテレビ向けの動画に作りかえ、従来型の放送やOTT(オーバーザトップ)プラットフォームに載せたいと考えているのだ。

デジタルライフスタイルメディア企業のスリリスト(Thrillist)も同様だという。スリリストメディアグループのCEOベン・レーラー氏は、米DIGIDAYのポッドキャスト7/15号で、同社も2017年中には、Netflix(ネットフリックス)、ゴー90(Go90)などのOTTオプションといった「テレビ」で、飛躍を遂げたいと語った。

「世代を超えて影響力をもつメディア企業を作りたいと思うなら、我々のコンテンツをさまざまな形で生み出していく必要がある。以前から行ってきた文字と映像だけのビジネスではなく、それをあらゆるメディアのフォーマットで配信可能にしなければならない」。

レーラー氏は正直に、「いまはどのようにテレビを作っていけば良いか、その方法まで見つけていない。しかし、それをこれから学んでいく」と述べている。同号の内容を抜粋、わかりやすく編集したものを下記で紹介しよう。

コンテンツ事業とコマース事業

広告料が芳しくないなか、多くのパブリッシャーは新たな収入源としてコマースに目を向けている。しかし、ゴーカー・メディア(Gawker Media)やビジネスインサイダー(Business Insider)、ワイヤカッター(Wirecutter)などのパブリッシャーが実際に行っているのはアフィリエイトビジネスで、彼らが行う事業の商取引へささやかに貢献するものだ。

それに対して、スリリストはeコマースのアパレルビジネス「ジャックスレッド(Jack Threads)」とメディアサイトの「スリリスト」を展開し、本当の意味で、コンテンツとコマースビジネスを行っている。それまで両ビジネスの大部分は、切り離して運営されてきた。

「どちらのビジネスも成長したが、一方のビジネスに成長が著しい要素がいくつかあり、我々はそこに集中することになった。そのためもう一方は、少々冷遇されてしまった」と、彼は話す。「ふたりの子供が育つなかで、いつもより多くの愛情を受ける子がひとりいたのだ」。

諦めていない人向けのメディア

スリリストのルーツをたどってみよう。

2004年、女性向けeメールニュースレターの「デイリーキャンディ(Daily Candy)」の男性版として立ち上げられた同パブリケーション。もともとは若い男性向けにおすすめスポットやグルメ、またショッピングなどを紹介するシティガイドとして知られていた。

しかし、いまは違う。現在のスリリストは「楽しいこと」を男女問わず「まだ人生を諦めていない人」に向けて提供するものだと、レーラー氏は表現する。「我々のブランドは大幅に進化している。我々は男性向けのメディア企業ではない」。

分散化は過去にも行われている

昨今、デジタルコンテンツ会社はディスプレイ広告のコモディティ化やアドブロック、そしてFacebookやGoogleのようなプラットフォームへの依存といった数々の短期的な脅威と向き合っている。自身もベンチャーキャピタル投資家であるレーラー氏は、こういったことを重要視すると、「いま起きている、より大きなトレンドが見えづらくなる」という。

実際、分散化で起きている大きな変化は、1980年代にケーブルテレビの台頭とともに起きたものと似ていると、彼は語る。新たな分散化の現実に調和するコンテンツ会社にとっては、巨大なチャンスなのだ。

「パイプがみな違う」と、レーラー氏。「単純明快な話ではないが、それらのパイプに合ったコンテンツを作る方法にたどりついた企業がたくさん存在した、という点では似ている。新たな分散型のパイプ向けにコンテンツを作るチャンスだ。皆が思い描くような従来型のテレビ会社は、基本的に現代を勝ち抜く連中ではない。なぜなら彼らのインフラは、将来必要な何かをするために作られたものではないからだ。それが新しいタイプのメディア企業に好機を作り出した。テレビが衰退していくことはない。そこに好機を見た企業は縮小しないはずだ」。

多様なオーディエンスに見えるもの

「スリリスト」はトラフィックの多いサイトの上位グループにいるわけではない。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、スリリストメディアグループの5月のビジター数は1650万人だ。

メールのニュースレターからはじまったメディアは、その後に多様なオーディエンスを獲得した。全ビジター数の約3分の1はメールからかダイレクトに来たビジターで、残りはサーチとソーシャルメディアからのものだという。

「ソーシャルは現時点では課題だ」と、レーラー氏。「Facebookは常に変化するので怖い。Snapchat(スナップチャット)は真のゲートキーパーとして大きな器になり得る。オーディエンスを拡大し、人々に届ける方法は、ほかにもあるはずだ。これは何もFacebookやSnapchat、またはGoogleがメディアを破壊するといっているわけではない。いつか、我々はそのなかで道を見つけていくはずだ」。

代理店ビジネスにも浸透していく

レーラー氏はケーブルテレビ会社と制作代理店とのあいだに類似点をみる。その考えは、広告代理店は高価なテレビスポット制作に基づく膨大なコストモデルを抱えているというものだ。

デジタルメディアのViceが示したように、メディア会社も大規模な広告サービス部門を作ることができる。スリリストも自身のコラボ(CoLab)と呼ばれる部署で同じように先ごろ炭酸飲料ブランド向けに口コミ広告動画を作成した。50名のスタッフを抱えるコラボはクライアント向けの仕事のみ扱う影の編集部というのが前提だ。スリリストが手掛けるディスプレイ広告のほとんどは、ブランドコンテンツプログラムをサポートしている。

「私は喜んで彼らを制作代理店と勝負させる」と、レーラー氏は述べた。「彼らはコンテンツクリエイターを気取っているわけではない。スリリストにはじめからいる3人の編集者のうち2人が立ち上げメンバーとなった。彼らは当社のオーディエンスを大事に思うジャーナリストであり、広告の観点から制作を行わず、自分たちのほうがうまくできるといったのだ」。

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Brian Morrissey (原文 / 訳:Conyac)