ワシントン・ポスト、記事風広告の新フォーマットを開発:嗜好に合わせて記事を自動組み換え

ほぼすべてのパブリッシャーが、編集記事のように見える広告を何らかの形で実施している。しかし、そうしたネイティブ広告をクリックしてもらえているかという問題は残る。

ワシントン・ ポスト(The Washington Post)は、「ポストカード(Post Cards)」と名づけたブランデッドコンテンツ広告の新フォーマットで、この問題の解決に取り組んでいる。ポストカードは、同紙の調査(Research)/実験(Experimentation)/開発(Development)チーム(通称REDチーム)の10個目の成果物だ。

ポストカードの仕組みと狙い

ポストカードでは、ブランデッドコンテンツのキャンペーンをスライドショー、ギャラリー、テキスト、動画といったマルチメディア部品にいったん分割。それをサイトでのコンテンツ消費行動履歴に基づいて改めて組み立ててからユーザーに表示する。

これまで同紙では、すべてのユーザーに同じネイティブ広告を見せていた。それが、たとえば動画をたくさん見ているという履歴があるユーザーなら、動画ではじまるネイティブ広告を配信することになる。ユーザーのコンテンツの消費パターンに合わせれば、それだけ広告に反応してもらえる可能性が高くなるという考え方だ。

広告をクリックさせるのは困難であり、また、GoogleとFacebookに慣らされてきたユーザーは、ページが超高速で読み込まれることを期待するようになっているが、ポストカードは広告をクリックしたり、行動を遮られることなくコンテンツを読んだり、閲覧できる形にすることが可能だ。そのため、製品とテクノロジーの責任者としてREDを率いるジャロット・ディッカー氏は、「これによりレイテンシー(遅延)をゼロにすることができた。クリックによる遷移を減らすようにしている」と語った。

ポストカードにおける懸念点

パブリッシャーがネイティブ広告を大規模に配信する方法として、プログラマティックなネイティブ広告が一般化しているが、規模が大きくなると、ブランドとパブリッシャーとの繋がりが失われるという失敗がよくある。

「これまで、プログラマティックは効率化の手段として活用されることが多く、広告主は自動でオーディエンスに広告表示される事実に着目しているが、おかげで記事とコンテンツ体験を犠牲にしている」と語るのは、メディアエージェンシーのジャイアント・スプーン(Giant Spoon)でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるローラ・コレンティ氏だ。「プログラマティックでネイティブ広告を事前にパッケージングするこのやり方は、信頼性とエンゲージメントが希薄になる可能性があり、多くの例でそのようになっている」と、同氏は語る。

以前に広告代理店のジェイ・ウォルター・トンプソン(J. Walter Thompson、JWT)でデジタル部門のCEOを務め、現在はメディア企業であるメディア・ジェネラル(Media General)傘下でモバイル向けのテクノロジー、サービス、およびマーケティングを手がけるワン・モバイル(One Mobile)のCEO、ケビン・ワソング氏によると、ポストカードのおかげでマーケターがメッセージを発信するのに使える手札が増えるかもしれないという。「人々にリーチするためのデータとインサイトと技術が揃っていることは素晴らしい。だが、クリエイティブの形がお粗末だが」と、同氏は語った。

コンテンツ消費の仕方に着目

REDのディッカー氏によるとポストカードは、FacebookとSnapchat(スナップチャット)も参考にしているという。ポストカードはワシントン・ポストの全ブランデッドコンテンツでデフォルトになる予定で、手数料がかかると同氏は語ったが、詳細は明かさなかった。

ポストカードで広告を複数のマルチメディア部品に分解し、そこから消費者にカスタマイズする事例の見本

ポストカードで広告を複数のマルチメディア部品に分解し、そこから消費者にカスタマイズする事例の見本

「コンテンツをユーザーに届けるためにFacebookがやっていること、Snapchatがやっていることに目を向けると、どちらもユーザーのコンテンツ消費の仕方がそれぞれ違うことを理解している。我々はブランデッドコンテンツで、データを活用してユーザーの一人ひとりに合わせた体験を構築しているわけではない」と、ディッカー氏は語った。

「ワシントン・ポストのチームは賢いものを作った。複数のパブリッシャーがこの方向に、つまり、デジタルのさまざまなフォーマットと実行方法を駆使し、同じコンテンツをさまざまな形で表現する方向に進みはじめている」と語ったのは、ブランデッドコンテンツのプラットフォームであるポーラー(Polar)のCEO、クナル・グプタ氏だ。

競合他社の追随が必要

一方、ポストカードでは生まれてきそうにないものがひとつある。それはスケールだ。ワシントン・ポストが社内で開発したパーソナライズツール「クラビス(Clavis)」が使われているため、同サイト以外での利用は、目的にそぐわない。用途が限られている広告に大きな投資をしたがらない広告エージェンシーには、これが障害になるかもしれない。「『ワシントン・ポスト』にしか使えないものなら、うまく行かないだろう」と、ワソング氏は語った。

とはいえ、ディッカー氏によると、ポストカードは「ワシントン・ポスト」がほかのパブリッシャーに販売しているパブリッシングツール「アーク(Arc)」に含まれる予定ということなので、採用が広がる可能性はある。ただ同氏はそれがあくまで思惑であることを認めた。

ディッカー氏はほかに、意図どおりに機能すればインプレッションとエンゲージメントが増大するから、広告主が受けるメリットは大きいと考えている。ワシントン・ポストはオーナーのジェフ・ベゾス氏のもと、エンジニアリングに大きな投資をしており、同氏は長期的には同社の製品が影響し、ほかのパブリッシャーが追随することも期待している。

「ネイティブ広告がコンテンツと見出しだけのものではなく、一人ひとりのユーザーに合わせて作れるものになることを期待している」と、ディッカー氏は語った。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Getty Images