ワシントン・ポスト、「タテ型動画」に未来を賭ける:スマホファーストなコンテンツ戦略

米老舗日刊紙「ワシントン・ポスト」の動画コンテンツの未来を切り開くキーワードは、短尺、モバイルファースト、そしてタテ型であるようだ。

「ワシントン・ポスト」は2016年2月29日、アメリカの予備選挙や党員集会が多く行われる日である、「スーパー・チューズデー」の重要性を説いたタテ型動画を配信した。タテ型動画とは、スマホのポートレートモード(縦位置)で撮影された動画のことだ。

この動画に利用された画像は、アニメーション化されていて、音を出さなくても視聴できる。政治動画編集者のサラ・パルナス氏によって製作され、「ワシントン・ポスト」の解説タテ型動画シリーズ「これを知れ(Know Its)」の最新作だ。

過去の作品には、米大統領選挙を特集した「ニューハンプシャー州の予備選で何が起きるのか?(What to expect in the New Hampshire primary?)」などがあり、ほかにも「ジェブ・ブッシュ氏の身長は?(How tall is Jeb Bush?)」や「ドナルド・トランプ氏の総資産額は?(What is Donald Trumps’ net worth?)」といった候補者に関する質問に答える動画もラインナップされている。

存在感を増すタテ型動画

このタテ型動画という形式は、Snapchat(スナップチャット)の「Discover(ディスカバー)」コーナーに配信を行う多くのパブリッシャーのコンテンツを連想させる。米メディア企業、Vox Mediaやウォールストリート・ジャーナルなどだが、こちらも頻繁にアニメーションを動画に使用しているのだ。

ほかにも、「ワシントン・ポスト」がタテ型動画のために注力していることがある。2016年1月、同紙は「ウェイポイント(The Waypoint)」と題する動画を配信。ヨーロッパへ渡るために危険な旅を行う難民たちを追ったドキュメンタリーで、スマートフォン向けに製作された。また、2015年の秋には独自のタテ型動画プレーヤーの立ち上げも行っている。

1カ月あたり数百本もの動画を製作しているなかで、タテ型動画はいまのところ6本程度。「ワシントン・ポスト」の動画ビジネスのなかで、タテ型動画はまだまだ小さな領域ではあるが、徐々に中核的な存在になりつつある。同紙の動画編集長であるマイカ・ゲルマン氏は、特定のプラットフォームや形式で、どう動画を製作していくかを考えるなかで、タテ型動画への投資もひとつの方法だと話している。

大きく変わる動画戦略

「すべてのプラットフォームに通用する動画をひとつ製作するよりも、ひとつの特定のプラットフォームで通用する動画を作ろうとしている」と、ゲルマン氏はコメントした。「ユーザーの行動は変わってしまった。私たちもその変化に対応しなくてはならない」。

「ワシントン・ポスト」の動画戦略は、ここ6カ月間で大きく変わった。2015年の秋には同紙の動画ブランド「PostTV」を廃止し、テレビ形式の長編動画から遠ざかっている。それ以降、ニュース解説や生中継を軸に動画戦略を打ち立てているのだ。

また、製作能力も向上している。1日あたり、40人の動画製作部隊がおよそ60本の動画を作っているのだ。「我々は短編ドキュメンタリーを作っているのではない。一度たりとも、『ワシントン・ポスト』では短編ドキュメンタリーを採用していない。我々の戦略にそぐわない」と、ゲルマン氏は話す。

まだ鈍い、広告主の反応

こうして、「ワシントン・ポスト」はバーティカル動画に勇み足だが、広告主たちはそうでもない。「ワシントン・ポスト」のサイト上にあるタテ型動画は、プリロール広告が通常の横位置で配信されるため、縦の動画へのスムーズな以降ができないのだ。

ゲルマン氏によると、現段階で興味を抱いているブランドはあまりいないが、興味をもってくれるブランドが増えることを予想しているという。

「私のような年老いた者は、動画を観るためにスマホを横向きにすることが難しいんだよ。もっと簡単に視聴できるように戦おうじゃないか」と、ゲルマン氏はジョークを交えながら今後のプランについて語った。

Ricardo Bilton(原文/訳:BIG ROMAN)
Image via 米DIGIDAY