ワシントン・ポスト、ネイティブ広告配信に人工知能を導入:履歴をもとにクリエイティブを自動生成

一度は業界の救世主に思われたネイティブ広告だが、いまパブリッシャーたちは大きな壁にぶつかっている。編集記事に似せた形式で作られる、この広告形態は「制作と配信にコストがかかるうえに、スケールが難しい」という側面が浮き彫りになってきたからだ。

そのためネイティブ広告は、広告主に売り込むのが難しく、またパブリッシャーたちの利益に食い込んでしまっている。それと同時に、マーケターたちはパブリッシャーを使わずに自分でブランデッドコンテンツを制作・配信することに段々と慣れてきた。

「ワシントン・ポスト(Washington Post)」は、この問題にAIを活用して取り組んでいる。彼らの新しい広告プロダクトである「オウン(Own)」では、編集記事の制作のために開発されたニュース執筆ボット「ヘリオグラフ(Heliograph)」で、ブランドが自ら制作したコンテンツがオーディエンスに読まれる/見られる可能性を高めることができるという。

配信拡大を支援する

オウンはオーディエンスのサイト上での行動に基づいて、パーソナライズされた広告クリエイティブを提供。ヘリオグラフは各オーディエンスに合わせたウェルカムメッセージを生成できる。下に示したのはその事例のひとつだ。オウンはコンテンツレコメンデーションの機能を担っている。同紙は、同様の手法でポストカードというネイティブ広告形式を利用する場合、さらにパーソナルにカスタマイズされた広告を生成している。

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パーソナライズメッセージが付与された新広告ユニット「オウン」(ADVERTISEMENTSの部分:「環境擁護のコンテンツをお楽しみのあなたは、[ブランド名]からの将来予測もお楽しみいただけると思います」)

 

ワシントン・ポストのコマーシャルプロダクト・イノベーション部門のバイスプレジデントであるジャロッド・ディッカー氏によると、同社はキャンペーンのブランドコンテンツを作らず、その配信技術を必要としているブランドをターゲットにしているという。

「現状ではパブリッシャーはサイト上に残るコンテンツを提供するという形式だけに基づいている場合が多く、配信拡大(スケール)という収入源については無視している場合が多い。これは、コンテンツをすでにもっていて配信拡大したいと考えるブランドを無視しているパブリッシャーが多いということだ」と、ディッカー氏は語る。

高マージンのビジネス

ブランデッドコンテンツはコストが高く稼働もかかるため、パブリッシャーにとってはマージンの少ないビジネスとなり得る。クライアントがますますAR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった最新の機能を求めるようになっていることで、この傾向はさらに強くなっているように見える。グループSJR(Group SJR)の最高戦略責任者でありパートナーのトム・ブリム氏によると、パブリッシャーたちが競争に勝ち残るために、ほかにも試みている方策はある。パブリッシャーが制作したブランデッドコンテンツを外部配信する、動画やほかの機能を増やす、などだ。

ワシントン・ポストのオウンは自動化されているが、ディッカー氏は80%から90%のマージンを生み出すはずだと考える。これはディスプレイ広告やプレロール動画においてパブリッシャーが得る高マージンに近い。

「マージンが高いだけではなく、稼働は24時間休みなしだ。その結果、マージンだけではなくてプロダクト入れ替わりの作業時間マネジメントの解決策ともなっている」と、ディッカー氏は加える。

オウンはすでに取引をしているクライアントに提供されている。ワシントン・ポストのアーク・パブリッシング・コンテンツ管理システムをライセンス利用しているほかのパブリッシャーにも提供される。これは、ほかの広告プロダクトと同様だ。

オウンが抱える課題

究極的にはワシントン・ポストはFacebookと同様、もしくは、それ以上に広く効率よくブランデッドコンテンツを配信可能だと、示すことが課題となる。インプリント(Imprint)のマネージングパートナーであるアンディ・サイバート氏によると、クライアントが欲しがっているオーディエンスを持っていること、そして、コンテンツとエンゲージさせる方法を示すことが、ワシントン・ポストの取り組むべきことになるだろう。インプリントはブランディングエージェンシー、サリバン(Sullivan)のカスタムコンテンツ部門だ。

そもそも、ブランドのコンテンツのクオリティが、オウンの限界のひとつでもある。クオリティが良くない、もしくはワシントン・ポストのオーディエンスに適していない場合には、キャンペーン改善のために自社のブランドスタジオを売り込む。「これはオーディエンスが大きくない、もしくは反響を得られないだろうという判断になったとき、我々なら改善することができると、クライアントに提案できるということだ」と、ディッカー氏は述べた。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)