メディアにおけるAI導入の現状:要点まとめ

GoogleとFacebookをはじめとするテック大手は、人工知能(AI)新興企業を次々に飲み込んできたが、まだ飢えている。

企業情報データベースのCBインサイト(CB Insights)が5月に発表した調査結果によると、2017年第1四半期にテック大手が買収したAIスタートアップは34社で、前年同期に買収された総数の2倍を超え、過去四半期の最高記録である2016年第3四半期の28社を軽々と更新。また、米新興メディア「アクシオス(AXIOS)」は先週、GoogleがAIに特化したベンチャーファンドを立ち上げたと報じた。このファンドは、ベンチャーキャピタリストではなくエンジニアが監視し、最大1000万ドル(約11億円)の投資を扱うという。

以下は、テック大手によるAI企業の買収と、より広い視野で眺めたメディアにおけるAIの役割について、現状をまとめたものだ。

全体像

  • この5年間に、Googleの親会社アルファベット(Alphabet)が買収したAIスタートアップは11社で、その大半は公開企業だ。続くAppleが7社、さらにFacebookとIntelがそれぞれ5社で後を追う。Twitterもさほど遅れをとることなく、同時期にAI分野の新興企業4社を買収した。
  • Googleの場合、買収はさまざまなカテゴリーにまたがっている。過去3年間だけで、予測分析専門企業カグル(Kaggle)、ボット向け自然言語処理プラットフォーム専門企業API.AI、ビジュアル検索技術専門企業ムードストックス(Moodstocks)を買収している。
  • 対照的に、Facebookはより絞り込んで買収してきた。ごく最近買収した2社、ズーリック・アイ(Zurich Eye)とマスカレード・テクノロジーズ(Masquerade Technologies)は、拡張現実(AR)専門の新興企業。スマートフォンのカメラで物体の空間における位置を把握したり、顔写真の上に画像やデジタル効果を重ね合わせたりする技術を手がけてきた。これらの買収は、Snapchat(スナップチャット)の機能を後追いするというFacebookの最近の戦略に沿ったものだ。
  • AIスタートアップが巨額で買収される例もある。Googleは2014年、AIおよび機械学習の新興企業ディープマインド・テクノロジーズ(DeepMind Technologies)を4億ドル(約440億円)で買収。ディープマインドが最近開発した囲碁AI「AlphaGo」は、囲碁世界王者を破った。
  • 2強によるAI専門家の大量採用も目を引く。LinkedIn(リンクトイン)に掲載されているAI関連の求人は、Googleが240件以上、Facebookが80件以上だ。

メディアにおけるAI

  • 米メディアパブリッシャー最大手の過半数がAIをある程度利用しているが、そのほとんどはサードパーティーベンダーのサービスを介したものだ。セールスフォース(Salesforce)、ブームトレイン(Boomtrain)、キーウィー(Keywee)といったAIベンダーが、プログラマティック広告、CRM(顧客関係管理)、オーディエンスターゲティングの強化を支援している。
  • ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は機械学習技術を利用して、選挙運動資金データにおけるパターンを調査している。ロサンゼルス・ タイムズ(Los Angeles Times)は、ロサンゼルス広域圏で地震が検知されると最新情報を自動送信する「クエイク・ボット(Quake Bot)」を開発した。
  • サードパーティーのAIをコンテンツ制作に応用しているメディアもある。「スポーツイラストレイテッド(Sports Illustrated)」は、ゲーム開発企業アーカディウム(Arkadium)が開発したツールを利用してインフォグラフィックを制作している。AP通信(Associated Press)はこの3年間、オートメイティッド・インサイツ(Automated Insights)の技術を利用して、公開企業の決算発表からマイナーリーグ野球の試合結果まで、さまざまな分野の記事を作成。AP通信のビジネス編集部によると、決算発表記事にオートメイティッド・インサイツを適用することで作業時間を20%節約でき、浮いた時間をより長文で掘り下げる記事に充当しているという。

こうした現状が意味すること

「我々はいま、20年にわたるメガトレンドのごく初期段階にいる」と、AI専門家のトッド・ルーフバロウ氏は語る。同氏はハーバード大学の元AI専任講師で、現在は動画広告配信プラットフォームを手がけるバイラルゲインズ(ViralGains)のCEOを務める。

ルーフバロウ氏の意見によると、AIがメディアにもたらす最大のインパクトは、パブリッシャーとマーケターが個々の消費者の好みを学べるようになることだ。ただし、AIは依然として最初期の段階にあるという。

状況が進展しても、リソースとデータ不足という2つの主な理由から、パブリッシャーのサードパーティーへの依存は当面続く可能性が高い。「典型的なパブリッシャーのオーディエンスのうち、60%を優に超える割合が実質的に匿名だ」と、メールマーケティング企業ポストアップ(PostUp)の製品担当バイスプレジデント、キース・シブソン氏は指摘する。「実際のところ、AIが良好に機能するのに十分なユーザーデータを保有しているのは、Google、Apple、Amazon、Facebookだけだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)