NYタイムズの新しい「VR」広告は、映画『キャロル』の告知

「ニューヨーク・タイムズ」のネイティブアド製作部門と、アメリカの独立系映画会社ウェインスタインカンパニー(Weinstein Company)は共同で、VRコンテンツ「キャロル:最愛の人…(原題:Carol: Dearest…)」をリリースした。近く公開される映画『キャロル(原題:Carol)』の宣伝用に製作されたものだ。

この広告コンテンツは、同社のネイティブアド製作部門、Tブランドスタジオによる初の映画会社向けのバーチャル・リアリティ・プロジェクトとなる。映画の舞台となっている百貨店や自宅、レストランなど、複数のシーンを360度の一場面で体験出来るようにしたものだ。

Tブランドスタジオが本作の配信を開始したのは、2015年12月10日。同年11月にNYT VR(「ニューヨーク・タイムズ」のVRプロジェクト)を開設してから、4本目のVR広告となる。映画『キャロル』以外のVRコンテンツ広告には、GEやBMW系列のMini、そしてルフトハンザ(Lufthansa)がクライアントになった。

ウェインスタインカンパニーは良きパートナーだと語るトミック氏。『キャロル』は2016年のオスカー競争に参入することもあって、プロジェクトをはじめるタイミングも適切だったとしている。

制作費はおよそ1億円?

このNYT VRは、段ボール製VRゴーグル「Google Cardboard」でも楽しめる全天球動画サイト。ヘッドホンを併用すればさらに動画へのめり込むような体験を得られる。

NYT VRに掲載された広告以外の編集コンテンツでは、南スーダンとウクライナ、レバノンでの難民の子供3人を追った『追放されし人々(原題:The Displaced)』。また、パリのテロ事件を扱った『パリの徹夜(原題:Vigils in Paris)』などがある。

「ニューヨーク・タイムズ」の広告イノベーション部門シニアバイス・プレジデント、セバスチャン・トミック氏によると、1本のコンテンツに広告主は1社となっているが、今後は変更もあり得るという。また、さらなるブランドとの協働を選択肢として検討中だ。

同紙は広告料金を明らかにしなかったが、GE向けに広告枠を確保した業界筋によると、およそ100万ドル(約1億円)だったという。ただし、この額は今後下がるに違いない。

課題はユーザーへのリーチ

その広告バイヤーによると、同紙のVRコンテンツ広告はブランド各社に大きな影響をもたらすという。世界的なメディアエージェンシーMECのソーシャル担当責任者ノア・マリリン氏も、価値あるものだと認める。特に、NYT VRの専用アプリのローンチ発表に当たり、新聞広告として段ボール製VRゴーグルを挟み込み、新聞読者の興味を集めたのが大きいと語った。

「次の試練として挙げられるのは、VRの目新しさが欠けてきていることと、実際にVRを体験できる条件をもったオーディエンスへのリーチ力が、いまなお低いことだろう」と、マリリン氏。とはいえ、オーディエンスを振り向かせるようなVRコンテンツをつくり、それを低価格で提供できるようになればこうした状況は変わる。

現在、Tブランドスタジオには60人のスタッフがいる。また、2014年半ばに起ち上がって以来、GEのVRコンテンツは100番目の作品となった。

Tブランドスタジオの組織のなかで、VRチームは独立したチームとは認識されていない。それについてトミック氏は、テクノロジーが進化しているので、VRは将来、単なるビデオの拡大版としてオーディエンスに受け入れられる日が来るかもしれないからだと説明する。

広告主の歓迎意識は強い

NYT VRアプリがローンチしてから、100万回の視聴があり、平均セッション時間は8分。広告ビデオのパフォーマンスは、編集ビデオとほぼ同じレベルだという。

「このようにVRの体験クオリティーを業界が認識してから、誰が広告に導入しだすか興味をもっていた」とマリリン氏は語る。「広告主のVRに対する歓迎意識は強い。また、オーディエンスも同様に歓迎してくれている」。

「ニューヨーク・タイムズ」は、VRコンテンツ広告「キャロル:最愛の人…」をFacebook360度広告としても配信予定だ。2015年12月、DIGIDAYではFacebookがブランドにVRコンテンツ広告の打診を行っていると報じた。Facebookは「オキュラス・リフト(Oculus Rift)」を2014年に20億ドル(約2400億円)で買収している。

Shareen Pathak(原文 / 訳:南如水)
Image from NYT VR Website