不適切な「関連記事」広告、パブリッシャーが寛容な理由:「実際に予算が動く。それが問題だ」

パブリッシャーの記事ページ下に表示されるレコメンドボックスは、クリックベイト(釣り記事)の問題を引き起こす存在だ。有力パブリッシャーの「スレート(Slate)」や「ニューヨーカー(The New Yorker)」がサイトからレコメンド機能を排除した理由はそこにある。ほかのパブリッシャーが、この機能の見直しを検討しているのも同じ理由だ。テストを行ったアバウトドットコム(About.com)のCEOネイル・ボーゲル氏は、この機能で表示されるコンテンツについて、「人々を怒らせるものだ」と述べている。

だが、そもそもレコメンドリンクはどのような仕組みで表示されるのだろうか。パブリッシャーは往々にしてコンテンツレコメンドプロバイダーを非難するが、自社サイトに表示されるレコメンドリンクの質を管理するのはパブリッシャーの側だ。

また、利益を増やすためにパブリッシャーが見て見ぬふりをしている例も非常に多い。レコメンド機能を手がけるアウトブレイン(Outbrain)の試算によれば、一部のパブリッシャーは全体の利益の30%をレコメンド機能に頼っていると、「タイムズ(The Times)」は報じている。つまり、パブリッシャーの売上を考えれば、クリック数を増やすことがすべてであり、質は二の次なのだ。

パブリッシャーのページに表示されるレコメンドウィジェットのほとんどには、「promoted stories(宣伝記事)」や「from the web(このWebサイトより)」など、さまざまなラベルが付いている。提供元は、アウトブレインやタブーラ(Taboola)といったテクノロジー企業だが、ザーグネット(ZergNet)、レブコンテント(Revcontent)、コンテント・アド(Content.ad)といった新興企業も増えている。

パブリッシャーは利益を生みだすため、このモジュール用のスペースをマーケターやほかのパブリッシャーにレンタルする。借りた側は、そのスペースを利用して、自分のサイトにトラフィックを呼び込むわけだ。モジュールを設置したパブリッシャーは、読者がレコメンドリンクをクリックするたびに収益を得る。コンテンツレコメンドプロバイダーも、大手パブリッシャーに対しては、その評判を利用して、ほかのパブリッシャーにアピールしようと、相当な額の保証金を支払う。

無関連のコンテンツでも掲載

「実際に予算が動く。それが問題なのだ」と、ある大手デジタルパブリッシャーの幹部が匿名で語ってくれた。この人物が匿名を条件としたのは、自分の会社がコンテンツレコメンド企業の1社と結んでいる非常に有利な契約が台無しになるのを恐れたからだ。

コンテンツレコメンド企業はパブリッシャーに対し、キーワードやドメインやカテゴリを基準として、コンテンツをブロックできる機能を提供している。だが、パブリッシャー側には、より刺激的なコンテンツを許可してしまう金銭的な動機がある。そうしたコンテツの方がクリック数が増えるからだ。プロバイダーもパブリッシャーも、こうしてお金を稼いでいる。

このベテランのパブリッシャー幹部は、「多くのコンテンツをブロックしてしまうと、入ってくるお金が減ってしまう。儲けられる可能性を減らしてしまうことになるのだ」という。こういうわけで、多くのパブリッシャーが下の画像のようなレコメンドを表示しているのだ。

「ニューズウィーク(Newsweek)」に表示されたレブコンテントのモジュール

これは、真面目なジャーナリズムの伝統を誇る「ニューズウィーク」のサイトだ。それが、ピープル(People)のようなエンターテインメント系のサイトだとすれば、アダルト色の強いリンクの表示もありえるだろう。だが、「ピープル」のモジュールに表示されているリンクは、まるで、それらが「ピープル」のコンテンツのように見える。以下は、アウトブレインが「ピープル」のサイトで提供しているモジュールだ。

メディアとの関連性を見受けられる他メディアからの記事コンテンツが表示されている

課題はクリエイティブの管理

レコメンドウィジェットは確かな収益をもたらすが、ただでさえ忙しいパブリッシャーのスタッフ(たいていは編集部)にとっては、監視すべき対象が増えることになる。プログラマティックに配信される広告の監視もしなければならないというのにだ。パブリッシャーはたいてい、最初のうちは慎重な手順を作って管理するが、月日が経つにつれて放置するようになる。編集スタッフは、ほかにやらなければならない仕事を山ほど抱えているからだ。

「まるで森林火災と戦っているようなものだ」と、あるオンラインパブリッシャーのベテラン幹部は、やはり匿名を条件として語ってくれた。大手パブリッシャー幹部であるこの人物によれば、しっかり管理したとしても、好ましくないリンクが1週間に少なくとも4つか5つは紛れ込むという。

そうなる理由は、レコメンドの数が膨大であることと、レコメンドのプロセスが自動化されていることにある。タブーラが1日に生成しているコンテンツレコメンドの数は130億件あり、その半分近くが、パブリッシャー自身のコンテンツへのリンクではなく、儲けを生み出す外部コンテンツへのリンクだ。アウトブレインが生成しているレコメンドは、1カ月あたり2500億件にも達する。

レコメンドウィジェット企業は、自社のシステムに流れてくるコンテンツの質を維持するために、フィルタリングとチェックを行っている。だが、企業広告のなかには、配信後に広告の中身が変更され、誤解を招く製品広告に変わってしまうものがある。

もうひとつの大きな問題は、紛らわしい画像がフィルタリングをすり抜けてしまうことだ。アウトブレインで製品マーケティング担当バイスプレジデントを務めるマット・クレンショウ氏によれば、画像検出機能は完璧からほど遠い状態にあるため、パブリッシャーによって拒否されたアウトブレインのレコメンドコンテンツの90%は、不適切な画像が原因だったという。「1カ月に200枚の画像に目を光らせることはできない」と、同氏は述べている。

大手ブランドの進出で改善

パブリッシャーがこのような安定した収益源を手放すとは考えにくい。ほかのタイプの広告から収入を得ることは難しく、Facebookからのトラフィックは変化が激しいからだ。

ただし、このビジネスはまだ誕生から10年しか経っていない。ブランデッドコンテンツ向けのプログラマティックプラットフォームを手がけるゼマンタ(Zemanta)のCEOトッド・サウィッキ氏は、レコメンドサービスを、有料の配信システムとして受け入れる消費者向けブランドのマーケターが増えるにつれて、レコメンドは進化するだろうと考えている。

将来的にはスパムコンテンツは締め出され、ゆくゆくはさらに大きな利益をもたらすだろうとサウィッキ氏。ブランドが支払う金額はクリックあたり最高で30セントと、クリックベイト業者の10倍もあるからだ。同氏は次のように述べている。

「現存しているレコメンド機能で配信されるコンテンツに、まるで関連性を求めていないパブリッシャーは、5年前、10年前のパンチモンキー(マリフアナ常用者)みたいなもので、バイヤーの生き残りだ。しかし、大手ブランドがこの分野に進出しはじめている。スパムパブリッシャーのコンテンツがなくなるとき、こういった連中もいなくなるだろう。それが適者生存の法則というものだ」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)