パブリッシャーで重要度増す新役職:プログラマティックアナリスト

英国では2020年までに、デジタル広告支出全体の約70%をGoogleとFacebookが占めるとの予測があり、残る30%をめぐって新聞各社が熾烈な競争を繰り広げることになる。パブリッシャーはメディアから最大の価値を引き出す新たなスキルが必要だ。そこでいま、メディア企業で注目を集めている役職がある。その役職とは、プログラマティックアナリストだ。

プログラマティックアナリストの肩書きと仕事内容は、パブリッシャーによって若干異なるが、基本的な職務は同じ。デマンドサイドプラットフォーム(DSP)やアドサーバーから、ビューアビリティ(可視性)およびCPMの監査担当者まで、さまざまなデジタルソースから膨大なデータを取り込んで分析することだ。それにより、オープンマーケットのプログラマティック取引プロセスのどこをどう修正すれば、パッケージ化によって商品としての提供が可能になるか、突き止めることができる。

「プログラマティックアナリストの主な役割は、入札状況を分析して機会を見極めることだ」と、ニュースサイト「ザ・テレグラフ(The Telegraph)」でプログラマティックを率いるポール・デ・ラ・ノウジェレード氏は語る。「これにより、オーディエンスセグメント、フォーマット、地域、デバイスに応じて、さまざまな価格を設定したり、より強力な提携関係を結ぶべき大口広告主を特定したりできるようになる」。

「ごくまれにしか見つからない」

メールオンライン(MailOnline)、トリニティ・ミラー(Trinity Mirror)、ノーザン&シェル(Northern & Shell)、ザ・テレグラフ、BBCワールドワイド(BBC Worldwide)、ニューズUK(News UK)といったパブリッシャーは、いずれもプログラマティック担当チームに、こうしたニューススキルを注入できる人材を雇おうとしている。だが、厄介なことでもある。プログラマティックアナリストの職務を果たすのは信じられないほど難しい。往々にして、個人のパーソナリティーとスキルの高度な組み合わせが求められる。こうした資質は、以前のメディアでは得られなかったものだ。

「技術の習熟度と宣伝広告の専門知識を等しく兼ね備えている人材を探しても、ごくまれにしか見つからない」と、新聞紙「デイリー・エクスプレス(Daily Express)」および「サンデイ・エクスプレス(Sunday Express)」を保有するノーザン&シェルのデジタル担当ディレクター、サイモン・ヘインズ氏は嘆く。「広告エコシステムを完全に理解していることも必要だ」。

こうした要求基準が、採用プロセスを困難なものにしている。ノーザン&シェルは、同社初のプログラマティックアナリストの求人に半年を費やした。採用者は4カ月前に、データ・インサイト・マネージャーという肩書きで仕事をはじめた。普通なら、求人から採用までに1カ月もかからない。

「6年前からやっておくべきだった」

「本来なら、6年前からやっておくべきだった。長い時間が掛かった」と、ヘインズ氏は振り返る。予算の確保が容易ではない時期には、必要性の根拠を示すのが難しくなりがちなことも一因だと、同氏は付け加えた。営業マンなら、チームに加えるのは簡単。一定期間後に、目に見えるかたちで利益をもたらすからだ。だが、プログラマティックアナリストの仕事は、プログラマティックが非効率である可能性を見つけることなので、売上高の増加をプログラマティックアナリストに直接帰することが難しい。

「売上高の詳細を知るのは重要だが、その人材のおかげで売上高が10%増加するとはいいがたい」と、ヘインズ氏は付け加える。とはいえ、これは目新しい問題ではない。「以前に働いていた会社では、1カ月に100本のキャンペーンを実施して効果を最大化するために、1人の従業員が駆け回っていた。心臓発作を起こしかけてようやく、もう1人必要だと上司が納得したのだ」。

英国放送協会(BBC)の国際商業部門であるBBCワールドワイドは、同社初の「プログラマティック最適化」の専門家を採用したばかりだ。BBCワールドワイドの1部門であるBBCアドバタイジング(BBC Advertising)のアドテク担当バイスプレジデント、ニール・ボーマン氏は、オープンマーケットの活動を集中的に分析する必要が増しているので、これはきわめて重要な新規採用だと語る。同氏は、科学とビジネスの経験を兼ね備えた人材を選んだ。「そういった特殊な経歴をもつ者を選ぶと、事業の動向と市場のチャンスを見極めて、価格戦略を最適化するのに役立つ」と、ボーマン氏は語る。

「非常にクリエイティブな役職」

トリニティ・ミラーは、地方紙グループのローカル・ワールド(Local World)を2015年に買収した際に、プログラマティックアナリスト数人を抱えることになった。「我々は、プログラマティックアナリストを経営と営業を掛け持ちする役職と見なしている」と、自身も買収時に移籍してきたプログラマティック担当主任のアミール・マリク氏は説明する。プログラマティックアナリストは通常、経済学や数学、科学の心得があるが、創造的であることも必要だ。また、コミュニケーションが得意で顧客の管理と保持ができれば理想的だ。「基本的には、株式市場や商品取引分野で働いたことがあるような、高頻度取引の経験者だ」と、マリク氏は付け加えた。

トリニティ・ミラーのプログラマティックアナリストは全員、DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)やプログラマティックダイレクトから、データおよびオーディエンス拡大のアナリストまで、それぞれ異なる専門分野をもつ。最近加わった人材は、オフサイトの最適化(GoogleのAMP[モバイルウェブ高速化プロジェクト]やFacebookのインスタント記事)に重点的に取り組んでいる。

メールオンラインは、適切な分析スキルの育成に多くの時間を費やしてきた。すでに6人以上のアナリストがヘッダー入札のような分野のモニタリングをしているが、競争上の理由から総人数は公表していない。それでも、同社は今後さらに採用する計画で、現在は4人のプログラマティック専門家を募集中だ。トレーダー分野とデータ分野で2人ずつ専門家を採用したいと考えている。さまざまな経歴をもつ有能な未経験者を採用して、その心構えを見て選抜し、必要なプログラマティックのスキルが身につくよう研修を行う計画だ。

「プログラマティックアナリストの役割と要件は、非常に幅が広く、データ分析や報告、視覚化から製品開発や技術の統合、最適化へとたえず進化している」と、メールオンラインでプログラマティックの責任者を務めるナット・ポールター氏は語る。「一見すると、分析が中心の非常に無味乾燥な仕事のようだが、現実からはほど遠い。これは非常にクリエイティブな役職だ。チームでそれまでに直面したことがない、新たな問題に取り組んで乗り越え、革新的なソリューションを見つけなければならないからだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
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