プラットフォームに賭けた媒体社、隠れたコストに青息吐息

パブリッシャーたちはいま、FacebookやSnapchat(スナップチャット)のようなソーシャルなプラットフォームに賭けている。自社サイトの外にいるオーディエンスへ向けた発信が、新たな読者や広告主の掘り起こしにつながると期待してのことだ。

だが、どんな賭けでも、ギャンブルであることに変わりはない。結局のところ、オーディエンスや広告売上の増加は、約束されたものではないのだ。おまけに、こうした「遠征」にはそれなりのコストもかかる。

「しかも、その費用はますます高額になりつつある」と語るのは、イヴォルブメディア(Evolve Media)の共同創設者、ブライアン・フィッツジェラルド氏だ。

「それぞれのプラットフォームを正しく活用するために、どんなオーディエンスに向けて、どんなバーティカルコンテンツ(ターゲットが明確で、よりニッチな内容のコンテンツ)を、どのプラットフォームへ投稿すべきか、パブリッシャーは注意深く分析する必要がある。各プラットフォーム内で、いいね!やシェア、ビュー、リーチだけでなく、自社サイトへのインバウンド流入を最大化するには、それぞれの特徴に合わせたコンテンツを提供し、内容を積極的に最適化する必要があるのだ」。

イヴォルブメディアはこの1年で、ソーシャルメディア担当のマネージャーを4人雇い入れた。Vox MediaやCNNのようなパブリッシャーも、専従スタッフを雇い、プラットフォームにおけるオーディエンスとの関係を管理している。

「隠れたコスト」の具体例

利用するプラットフォームは、メディア企業で必要とされる仕事によって異なる。たとえば、Appleの「News」向けの配信では、このニュースアプリへ流し込む記事フィードを生成することが重要だ。その一方、モバイル端末でのページ表示を高速化することを目的としたGoogleの「AMP(Accelerated Mobile Pages)」プロジェクト用には、パブリッシャーは「AMP」に特化したテンプレートを作る作業を任されていて、既存スタッフで継続的にその作業に対応するよう期待されてもいる。

もっと多くの労力を費やす必要があるケースもある。特に、Snapchatで独自の「ディスカバー(Discover)」にチャンネルをもつパブリッシャーは、そのためだけの専従チームを組織しているのだ。「フュージョン(Fusion)」は8人のチームを用意しているし、「デイリーメール(Daily Mail)」も同様の対処を行っている。

動画も、特別な負担を生む。注目される動画を作ること自体、十分に難しい作業だが、それをFacebookに再投稿するだけでは足りない。多くのユーザーがサウンドをミュートにして視聴しているプラットフォーム上で、動画をいかに機能させるかをきちんと理解しておく必要がある、と「Slate」の副会長を務めるダン・チェック氏は話す。

Appleの「News」やFacebookの「インスタント記事」のようなプラットフォーム上で、オーディエンスの信頼を得たいと考えるパブリッシャーは、インターネット調査企業のコムスコア(comScore)のようなサードパーティーに料金を支払って計測してもらう必要があり、これにもそれなりのコストがかかる。

増え続ける余分な仕事

スタッフの新規大量雇用は、コストのほんの一部でしかない。パブリッシャーが分散してサービスを提供するということは、自分たちの記事や動画をさまざまなプラットフォームを通じて広めるという余分な仕事を既存スタッフに強いるということも意味する。

「メンテナンスやスピード、効率が隠れたコストになる」と指摘するのは、「アトランティック(The Atlantic)」の副会長でデジタル総合責任者を務めるキンバリー・ラウ氏だ。

「我々のロゴマークとカスタムなフォントが表示されるすべての場所を調整しなければならない。何かひとつでも変更したら、自社ドメインはもちろん、その他のドメインでもすべて修正しなくてはいけない。新製品、新しいテンプレートやスタイルを追加したらいつでも、分散したいくつものプラットフォーム上でそれらの機能をテストしなければならず、それによって開発スケジュールがより長くなる」。

だが、自社のオーディエンスにどこからでも接触できるようにすることには価値があると、「アトランティック」は考えているという。

機会費用も考慮するべき

計測するのは難しいが、やはり重要なのが機会費用(ある行動を選択したために失うことになる、ほかの選択肢から得られたはずの利益)だ。プラットフォーム配信に時間と費用をかけることは、ほかの多くのプロジェクトにはその時間と費用を費やせないことを意味する。

あるパブリッシャーにとっては、それは自分たちが所有し、運営するサイトの改良が遅れることを意味するかもしれない。パブリッシャーが自身のコンテンツを収益につなげ、他社サイトにいる読者データを収集する能力は有限なので、そこに時間と資源をつぎ込んでいるということは、自身のブランドを最大化し、自社サイトに読者をつなぎ止めておくためにやるべきことを行えなくなってしまう。

「プラットフォーム配信をより多く行うことで、我々は、自身のサイトに直接掲載する、より長い形式のコンテンツに回す予算を犠牲にしなければならない。プラットフォーム向けのコンテンツは、より短い形のものが優先されるからだ」と、イヴォルブメディアのフィッツジェラルド氏は述べる。

一方、「Slate」のチェック氏は、Facebook向けの動画についてこう述べる。「Slate」のようなパブリッシャーは、「自社サイトでの動画」を十分に収益につなげられる可能性があり、そうした広告売上げで他社に先行できるかもしれない。

しかし、プラットフォーム上におけるオーディエンスの増加や収益化の可能性を考慮すると、いまのやり方ではコンテンツの消費パターンでトップに居続けられない危険性もある。「(Facebook向けの動画に)いま着手しなければ、将来、実行するのはもっと難しくなるだろう」とチェック氏は述べた。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
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※ご指摘を受け、一部表現を訂正いたしました。誤)青色吐息 → 正)青息吐息。ご指摘ありがとうございます。