FTの動画コンテンツ戦略は、短・長編問わず全方位で:「YouTubeでもFacebookでも勝つ!」

英経済紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」は、20分の長編ドキュメンタリーから50秒の短編Facebook動画まで、両方を強く打ち出す方針を示している。

2015年の10月、FTは「FTフィーチャー(FT Features)」という長編動画シリーズをYouTubeで公開。第1作目となったのが、野生動物の違法取引について描いた22分間のドキュメンタリー動画「ビッグゲーム・ビッグマネー(原題:Big Game, Big Money)」だ。公開以降、視聴回数は32万5000回を超え、FTのトップ10動画にランクインしている。

第2作目は、「中国の奇跡の終焉(原題:The End of Chinese Miracle)」。中国農村地区での労働人口の減少による経済への影響を特集した内容で、近日中に公開される予定だ。このように話題を深く掘り下げる長編動画は、FTのコンテンツとしてはむしろ当たり前であるため、これらでブランディングしようとしていることに驚きはない。

しかし、FTの戦略は、YouTubeだけに留まらない。ほかのパブリッシャーと同様に、短編動画の提供もしなくては気が済まないのだ。「短編のソーシャル動画と、話題を深く掘り下げた長編動画の両方をプッシュしている」と、同社でコマーシャル開発と動画&音声部門を担当するカヨデ・ジョサイア氏はコメントしている。「これが、私たちが勝つための2つの方法だ」。

Facebook専門部隊も用意

FTにはイギリスとアメリカを合わせて、強力な動画制作部隊が15チームもある。1カ月あたり、約200本の動画を製作しているのだ。しかし、2015年の終わりになって新たに設置した職種がある。Facebook用に、1分ほどの動画を専門に製作するクリップスエディターと呼ばれる職種で、同社初の特定プラットフォームに特化した動画コンテンツクリエイターだ。

これらの動画クリップは短尺で字幕付きため、無音状態でも理解できる。また、Facebookに投稿している長編動画と比べて、5倍ほど共有される割合が高いという。「南シナ海で何が起きているのか(原題:What’s happening in the South China sea)」と題された50秒の短編動画は、7万5000回ほど共有された。

また、変わったフォーマットの動画もFacebookで好調だ。「4つの表で見た1日(原題:Day in 4 charts)」と呼ばれるこの動画は、ある特定の日を4つの表を用いて視覚的に表す動画だが、2016年2月25日に公開された動画はすでに2万4000回も共有されている。

Day in 4 charts: February 25

The day in 4 charts: – Beijing billionaires- gold’s recovery- UK migration- UK GDP vs EURead nireL http://on.ft.com/24rDtgR

Financial Timesさんの投稿 2016年2月25日

 

コンバージョンをどう見るか?

動画やポッドキャストのみが無料で視聴できるFTのコンテンツ。これらを通して、自らのジャーナリズム精神を人々に見せつけ、最終的に有料版に登録してもらうことが目的となっている。しかし、Facebook上で閲覧される動画には問題もあるという。視聴者がそれぞれのフィード内で動画を視聴するため、FTのサイトであるFT.comへ誘導することが難しいことだ。

今後6カ月間におけるFTの目標が短編と長編の動画に注力することであるならば、その次なる目標はコンバージョンの追跡だ。ジョサイア氏の個人的な目標は、数年以内に同紙の動画視聴者の20%を、FTの購読者にすることだという。「1年後には、『ほかのフォーマットのコンテンツと比べて、Facebook動画のCTRが20%もあった』と、公表できなければならない」と、同氏は話している。

この目標に向かい、FTはこれからも注釈やフォントなどで、さまざまな工夫と実験を行い、視聴者へ行動喚起を促すことだろう。ジョサイア氏は、いくつかの動画はその話題への導入編となり、さらなる続編の製作が必要となるものもあるが、エンゲージメント獲得だけが目的のものもあると話す。

動画の収益化は問題でない

現在、FTは他社から妬まれる立場にいる。世界的な会計企業であるデロイトが監査した報告書によると、同社のデジタル版には56万6000人もの会員がいて、その数も前年比で12%ずつ成長しているという。Facebookに直接投稿された動画を収益化する方法はいまだにないが、同社の収益の半分以上はコンテンツからのものであり、広告収入にも頼っていないため、ほかのパブリッシャーと比べ、Facebook動画の収益化にはそれほど関心がない。

オーディエンスにとっては、短編ソーシャル動画がFTへの入門動画となるだろう。また、これまでの歴史を見ても、FTのコンテンツは有料でも価値があるものと、購読者や視聴者の支持を得ている。

しかし、米メディアエージェンシー、メディアコム(Mediacom)のデジタル部長ダン・チャップマン氏は、より多くの競合企業が前線に出てくると指摘する。「ロシア・トゥデイ(モスクワに拠点を置くニュース専門局)のマックス・カイザー氏のように、コンテンツをYouTubeで配信しても、従来とは変わった形式で参入してくるライバル企業は多く出現する。このようなライバル企業に対し、FTは迅速に対応しなくてはならない。素晴らしいコンテンツを製作している企業と、革新的なアイデアで競わなくてはならないのだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Thinkstock / Getty Images