アトランティックはなぜ、YouTube重視にシフトするのか?:収益性を重視した結果

フィード上でのレシピ動画はひとまず脇において、アトランティック(The Atlantic)は流れに逆らい、YouTubeで配信されるシリーズの一環として長尺動画を選択している。

160年の歴史を誇るこのパブリッシャーは、Facebookで月に数十億の視聴回数を稼ぐ分散型メディアに比べて動画事業の規模が小さく、サイエンスや政治といった真面目な話題に切りこむ長尺動画を制作することに重点を置いている。これには、人気編集者と記者を揃えた週次の動画シリーズや、アニメーション動画、ドキュメンタリー特集も含まれる。

同時にアトランティックは、このコンテンツを配信するプラットフォームとしてYouTubeを優先している。その理由は、この種のコンテンツが一番良く機能する場所がYouTubeであるというだけでなく、YouTubeはいまだに、特にリソースに限りのある規模の小さいパブリッシャーたちにとって、プレロールから着実に利益をあげながら、多くの視聴者にリーチできる最適の場所だからでもある(YouTubeはプレロール広告収入の45%を通常取っている)。

「我々は収益性に焦点を置く傾向が非常に強い。新しい投資をするにしても、利益を生み出すことが求められる。我々にとっての大きな転換点は、TheAtlantic.comのオーディエンスが動画に関心を持ち、その認知度が上がるようになる一方で、そのオーディエンスだけで我々の動画事業を成長させることに少し限界があるということを認識したことである」と、アトランティックのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのキム・ラウ氏はいう。

アトランティックのYouTube攻略法

毎日10億人がYouTubeを利用し、数限りない動画が提供されていることから、ほかでは特定されることのないリーチをYouTubeは確実に提供してくれる。また、話題づくりにもなる。

アトランティックのアプローチは、できる限り多くの動画を配信することではなく、YouTubeのプラットフォームで成功する特色のあるコンテンツに絞り込むことにある。5月25日、アトランティックは「ユーアーヒア(You Are Here)」という新しい動画シリーズを開始した。そこでは、どうしてアメリカ人はそんなにも笑顔をつくるのか、クールな科学、そしてソーシャルメディアが友情に影響するのかどうか、といったテーマを掘り下げるアトランティックのサイエンス、ヘルス、そしてテクノロジーのライターたちを取り上げていく。

「ユーアーヒア」は、最新のニュースや政治問題を取り上げる解説シリーズ「アトランティックオーギュメント(The Atlantic Argument)」や、アメリカの新しい政治的展望を探る「アンプレシデンティド(Unpresidented)」といった、ほかの週次動画シリーズに加わる。これらの番組は、週次放送スケジュールをフォローする内容になっている。

「YouTubeでは一貫性が功を奏することは知っている。しかし、我々のオーディエンスが大きな関心を示すものがあるときは、特に『アトランティックオーギュメント』で、そのニュースサイクルに飛びつくことも挑戦している」と、アトランティックスタジオ(Atlantic Studios)のジェネラルマネージャー兼エグゼクティブプロデューサーのカシア・シープラック-マイヤー・フォン・ブラドエッグ氏は述べる。

なぜYouTubeに傾倒するのか?

また、アトランティックはアニメーション説明動画も重視している。既存のエディトリアル動画シリーズにアニメーションを組み合わせたり、ビル・ナイ氏のような興味を引くゲストのインタビューをアニメ化したりといったことが、この活動だ。どちらのフォーマットもYouTubeで成功している。たとえば、CNNのグレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)では、チーム全体がアニメーションに専念したり、Voxはアニメーションをしばしば中心に据え、深く切り込んだ(長尺の)説明動画を重視することで相当数のYouTubeフォロワーを拡大している

これらの番組は、より多くの常連視聴者(およびサブスクライバー)をアトランティックのYouTubeチャンネルに再訪問させることを目的としているが、アトランティックが毎月公開する数本の長尺のドキュメンタリー番組にも役に立っている。同パブリッシャーは通常、長さが10分を超える2つ、3つのドキュメンタリー特集を毎月公開している。こちらでは、ナチス思想に傾倒するリチャード・スペンサーから、難民を受け入れるアメリカの町に至るまで、いろいろな話題を深く掘り下げている。

この手法で、アトランティックのYouTubeチャンネルを訪問し、時間をかけて動画を視聴する人々が生まれている。アトランティックの4万1000人のサブスクライバーの平均視聴時間は、先月は3分を超えたと、同社は述べている。「分散型動画プラットフォームのなかでも、人々が長尺動画を音声付で視聴する体験を生み出すのに、YouTubeは非常に長けている」と、シープラック-マイヤー・フォン・ブラドエッグ氏は語った。

Facebookを撤退したわけではない

もちろん、規模の拡大を模索している多くのデジタルパブリッシャーたちは、いまだにFacebookを優先している。なぜなら、短期間で多くのビュワー数を得るのにFacebookは、最善の場所であることに変わりはないからだ。ほかのパブリッシャー同様に、アトランティックもFacebookを無視しているわけではない。しかし、Facebookの限界については正直だ。アトランティックはFacebook向けに動画を短く編集し、キャプションを入れる予定だ。

「YouTubeに焦点を絞ることで、マネタイゼーションとクオリティの高い話題づくりを1カ所に集約することが現在可能になっている。それはFacebookから手を引くということではない」と、ラウ氏は語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac)