NYTの広告制作チーム、UK版初のネイティブアドを制作

ニューヨーク・タイムズのロンドン支局は、ネイティブアドで成果を出しはじめた。同紙の広告制作チーム、Tブランドスタジオ(T-Brand Studios)との6カ月に及ぶ試行錯誤の結果だ。

これまでTブランドスタジオは、本国のアメリカを中心に活動を行ってきた。他国の支局との取り組みは、今回がはじめてだったが、同時に米英以外の支局とも協働している。

ロンドン支局とのネイティブアドキャンペーンは、コロンビアのエメラルド企業ムゾー(MUZO)の依頼によるものだ。「伝説的な鉱山からエメラルドブランドへ(From a Legendary Mine to an Emerald Brand)」と題されていて、コロンビアのエメラルド鉱山について言及している。また、今回のキャンペーンでは世界最大の宝飾と時計の見本市であるバーゼルワールド(Baselworld)ともタイアップしていて、この広告も1カ月ほど配信されていた。

主のデジタルシフトは難しい

これまでに、ニューヨーク・タイムズは紙媒体で多くの広告枠をラグジュアリーブランドに販売してきた。それらの広告主たちをデジタルに転換させることはとても難しいと、Tブランドスタジオのディレクターであるケイリー・キング=バレンタイン氏は話す。同氏は、ロンドン支局との協働のために、2015年7月にニューヨークからロンドンへ出向した人物だ。

「ブランデッドコンテンツ付きだと、ラグジュアリーブランド向けの広告枠の販売が難しい」と、キング=バレンタイン氏。「ラグジュアリーブランドたちは築きあげたブランドを守り、よそ者を受け入れない。キャンペーンなどの美的意識も高く、大金をつぎ込んでいる。また、それに付随するものに関しても、とても敏感だ」。

今回のキャンペーンでは、ほとんどの記事や映像はムゾーから提供されている。Tブランドスタジオは1カ月しか実作業を行っていないが、編集者がFacebook投稿のコピーを考えるなど、クリエイティブなアイデアで対応した。今回、ムゾーのコンテンツが想定以上に成功した理由について、同スタジオは編集者による舵取りのおかげだと分析している。

編集記事と対等に競い合える

2015年9月に、Tブランドスタジオがロンドンで活動を開始して以来、作成されたブランデッド動画のうちの2本が、動画共有サイト「Vimeo」の「スタッフのおすすめ(STAFFPICK)」でフィーチャーされている。「Vimeo」のスタッフが毎日4本ピックアップしてレコメンドするコーナーだ。

そのブランデッド動画のうちのひとつはオランダの家電メーカー、フィリップス(Philips)である。同社は、Tブランドスタジオがロンドンに開設される前から、1年以上もロンドン版に出稿している。フィリップスのために、ニューヨーク・タイムズは睡眠時無呼吸症候群に悩むアイスランド人の漁師に密着した動画を制作。広告主にとって重要なキーワード、老化と呼吸器疾患、睡眠の3つを題材とした動画だ。

「ニューヨーク・タイムズのオーディエンスが好むようなコンテンツになるように、フィリップスは自由に制作させてくれた」と、キング=バレンタイン氏はコメント。「Vimeo」の「スタッフのおすすめ」に選ばれると数千回の視聴回数が保証される。また、これによってブランデッドコンテンツが編集記事と対等に競い合えることが証明された。

ロンドンの市場はこれから

しかし、しっかりとした伝統があるニューヨーク・タイムズのような企業は、伝統が恩恵にもなれば、呪いにもなってしまうことがある。

Tブランドスタジオのニューヨーク支局には45名のスタッフが在籍していて、2年前の発足以来、60社以上に120回以上のキャンペーンを提供してきた。デザインディレクターのグラハム・マクドネル氏とニューヨーク支店のデータチームによると、Tブランドスタジオのペイドポストの78%が、米マーケティング分析企業モート(Moat)が設定したスクロール量の基準値を超えたと発表している(しかし、Tブランドスタジオが独自に分析したデータなので、信頼性に欠ける)。また、本国のTブランドスタジオには海外支局よりも多くの予算が与えられていて、ひとつの市場に専念することができるようになっている。

一方、ロンドン支局に回ってくる予算は少ない。市場は小さいものの、ヨーロッパ、アジアと中東を担当していて、スタッフも4人しかいない。それでも、少しでも多くの予算を確保するために躍起になっているのだ。予算の問題以外でも、ニュースやコンテンツが溢れかえっている現代の飽和市場において、読者に記事やコンテンツを視聴してもらうためにも、ニューヨーク・タイムズは読者を魅了する努力を続けなければならない。

予算は少ないものの、ロンドンのネイティブアド市場は誕生したばかりのため、ロンドン支局には成長という大きな期待がかかっている。「まるで2年前のニューヨークのようだ」と、キング=バレンタイン氏は話す。「これからがとても楽しみだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:BIG ROMAN)