逆転の発想! Webコンテンツを転載する無料誌『スワイプ』:ネットの多様性を反映

ふたりの「ニューズウィーク(Newsweek)」元従業員が、若い読者にリーチするため、少々変わったアプローチを採った。それは、Webコンテンツを印刷して配布するというものだ。

編集者のバーニー・ギトン氏と発行人のトム・レンデル氏は、『スワイプ(Swipe)』という隔週刊誌を立ち上げ、ロンドンを中心に無料配布している。創刊号は5月26日(英国時間)に発行された。同地には『タイムアウト(Time Out)』『ショートリスト(ShortList)』『スタイリスト(Stylist)』『クラック(Crack)』『コーチ(Coach)』などの競合が多数存在し、フリーマガジン市場は飽和状態にある。だが、ミレニアル世代をターゲットにした雑誌は、ひとつもないそうだ。

「『スワイプ』はミレニアル世代に狙いを定めている」と語るギトン氏は、パブリッシング専門のリサーチ企業ツー・サイド(Two Sides)の調査で、回答者の88%が電子版より印刷版を好むとする結果が出たことに触れ、次のように述べている。

「18歳から35歳までの人たちは大勢いて、この世代にリーチすることは難しいといわれているが、そもそも彼らはフリーマガジンの想定読者に含まれていない。これは本当に馬鹿げた話だが、彼らが初のインターネット世代であることを考えれば重要なことだ」。

Web記事を雑誌に転載

『スワイプ』は、「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」「ザ・メモ(The Memo)」「ボカティブ(Vocativ)」など、80のデジタルパブリッシャーと提携。1ワードあたり10ペンス(約16円)を支払って記事を入手し、編集した上で印刷している。紙面は、生活面、政治面、旅行面、およびテクノロジー面という構成だ。

創刊号のカバーストーリーは、ますます親密になるドナルド・トランプ氏とウラジミール・プーチン氏の間柄を取り上げた「ザ・マルコンテント(The Malcontent)」の記事だった。また、葬式で泣くことを生業にしている人の生活について取り上げた「クラックト(Cracked)」の記事や、ベルリンの難民キャンプの内情を取材した「ローズ・アンド・キングダム(Roads & Kingdoms)」の記事も掲載している。

男同士の熱烈なロマンス:『スワイプ』創刊号のカバーストーリー

「人々は、さまざまなオンラインメディアの記事を読むことを毎日の習慣にしいている」と、レンデル氏はいう。「Webと比べて、ファッションやスポーツだけにフォーカスした雑誌は、対象が狭いように見えることもある。(中略)我々が発行している雑誌は、インターネットの多様性を反映しながらも、優れた記事やレポートにフォーカスしているのだ」。

メルマガ発行のプランも

こうした記事は直近の2週間にオンラインで公開されたものだが、『スワイプ』はパブリッシャーとの提携により、さらに過去の記事を利用することもできる。そのため、飛行機の安全に関する「ザ・カンバセーション(The Conversation)」の昨年の記事を、エジプト航空804便が消息を絶った事件と関連性を持たせながら掲載することができるのだ。

また、ウーバー(Uber)やクラフトビール宅配サービスの印刷広告を載せたり、オンデマンドのドライクリーニングアプリ「ジップ・ジェット(Zip Jet)」やプログラミングスクールのメーカーズ・アカデミー(Makers Academy)によるスポンサー記事を掲載したりしている。

FacebookやTwitterでのプレゼンスは今後も控えめにし、掲載記事の元となったオンライン記事へのリンクを掲載していく予定だ。その一方で、ギトン氏は今後数週間以内に電子メールのニュースレターを開始する計画があると明かしたうえで、「『レニー・レター(Lenny Letter)』(レナ・ダナム氏が手がけるニュースレター)のようなニュースレターはそれ自体で読者を広げている」と、語った。

グローバル展開も検討

『スワイプ』はいまのところ地域限定だが、ロンドンでの発行部数を増やし(現在の部数は2万部だが、『タイムアウト』は1週間に最大50万部だ)、近い将来にはパリ、ミラノ、ニューヨークなど国外に展開することを計画している。

ギトン氏と『スワイプ』の5人の中心メンバーは全員が30歳未満で、そのほとんどが「タイムズ(The Times)」や「インディペンデント(The Independent)」などの全国紙で仕事をした経験がある。そのため、彼らは伝統的なメディア企業が革新的な取り組みに失敗してきた例を直接知っているのだ。

「オンラインは注目を集めるのが難しい。物理的な形で人々に届けられるのは素晴らしいことだ」とギトン氏は認める。「それに、印刷物にはアドブロッカーがないしね」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Images: courtesy of Swipe.