英米のパブリッシャー、収益の柱が「動画」になると同意:AOLによる調査結果

米国と英国のパブリッシャーには共通点がたくさんある。

どちらもアドブロックの台頭を懸念しており、モバイルの売上をどう増やすべきか考えている。動画の数を増やし、プログラマティック広告の収益を強化し、プラットフォーム外でのコンテンツのマネタイズに取り組んでいる。しかし、両者には違いもある。

AOLは5月、大西洋を隔てた米国と英国において何が中心的な問題なのかを判断するため、パブリッシャー600社(米英それぞれ300社ずつ)を対象に調査を実施した。

以下、両国の共通点と相違点を具体的に見ていく。

自サイト外でのマネタイズの優先度が高まっている

米国と英国、双方のパブリッシャーが優先していることのひとつが、自サイト外でのマネタイズだ。今回のAOLのレポートによると、英国のパブリッシャーのうち86%が、トラフィックの4分の1をFacebookやGoogleといったサードパーティに依存している。

ニューズUK(News U.K.)でデジタル戦略および事業開発担当のディレクターを務めるハミッシュ・ホワイト氏は、4分の1というのは疑わしいほど低い数字だと考える。ホワイト氏は、同社運営の「ザ・サン(The Sun)」に対するFacebook経由のトラフィックを明らかにすることは拒みつつも、この調査の回答者は「数字を実際よりも低く語っている」か、Facebookが提供できるものを活用する「秘訣が分かっていない」かのどちらかだろうと語った。

Facebookのインスタント記事は、プラットフォームにデータ、コンテンツ、および商取引の支配権を譲り渡す必要があることから、パブリッシャーにとって心配のタネだ。ホワイト氏は「我々にとって神経をすり減らすような存在だ」と述べ、パブリッシャーとFacebookの関係を「熱病」と表現した。

それでもホワイト氏は、パブリッシャーのマネタイズへの協力に関してFacebookがまっとうなことを話しているのはたしかだという。「インスタント記事にブランデッドコンテンツを導入して収益性のよい動画を置けるというのは、我々にとっては実に興味深い」と語った。

動画が希望の光

米国と英国の回答者の大半が、2017年に売上をもっとも強く牽引するものとして動画を選んだ。また、英国のパブリッシャーの半数以上と、米国のパブリッシャーの56%が、デジタル動画の成長の主な牽引役として質の高いクリエイティブを挙げた。

英国の全国紙グループである「トリニティー・ミラー(Trinity Mirror)」では、プログラマティック担当ディレクターのアミア・マリク氏によると、広告予算のかなりの部分が動画に費やされているという。「ニュースパブリッシャーの社内では、動画コンテンツの制作と、すべての記事に原則として動画をつけることが強く推奨されている」と、マリク氏は語った。

しかし、英国ではまだ動画の供給不足がネックになっている。動画の数を増やすのは簡単ではない。「動画が売上の中心になる」といっても、それが現実になるわけではないのだ。

CNNインターナショナル(CNN International)のコマーシャル部門でデータおよびデジタル売上担当のディレクターを務めるロブ・ブラッドリー氏は、「動画の役割がまずます重要になっているのは間違いないが、多くのパブリッシャーには動画の在庫がない。制作するとなると質の問題もある。動画の数を増やすのは簡単なことではない」と語った。

個々のオーディエンスに合わせた動画広告ターゲティングが牽引役になるという回答の割合は、米国が53%で、英国の51%よりも少し多かった。さらに、動画の成長には広告の読み込み時間が重要だとした回答の割合は、英国が53%で米国が48%と、違いがさらに顕著だった。

「エコノミスト(The Economist)」でデジタル製品売上のグローバル責任者を務めるアシュウィン・スリダー氏は、「英国の市場は米国に遅れている。ビューアビリティ(可視性)に関する議論と、ページ読込時間の短縮によってモバイル広告を改善するという最適化が、米国側ではすでに起こっている」と語った。

英国パブリッシャーの3分の1以上(37%)が、デジタル動画の成長を牽引するのはディスプレイ広告などほかの広告からの移行だと考えており、これは米国のパブリッシャーの39%が同じ意見だ。

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デジタル動画の主要な成長要因/データ出典:AOLレポート

アドブロックがモバイルの成長を阻害している

アドブロックはデスクトップの売上の悪化の大きな要因になったが、モバイルがアドブロックを免れることができるとパブリッシャーが考えていないのははっきりしている。英国のパブリッシャーの大部分(85%)はこの1年間でモバイルの売上が50%以上増加したが、これはもともとが少なかった可能性が高い。モバイルにおける成長の最大の障壁として、英国のパブリッシャーの半数以上(55%)がアドブロックを挙げた(米国は49%)。

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媒体社のモバイルにおける主要課題/データ出典:AOLレポート

「過酷な」テクノロジー税は健在

パブリッシャーは、いまなおAOLの言う「テクノロジー税」の犠牲者だ。広告購入プロセスに複数のアドテクベンダーが介在し、それぞれが売上の一部を分け前として要求することで失われるお金がこう呼ばれている。英国のパブリッシャーの約40%は5~10社のベンダーを利用しており(米国も同じ数字)、25%はベンダーを11社以上使っている(米国は30%)。とはいえ、両国とも、広告メディア支出の半分以上はパブリッシャーの手元に入っている。

ヘッダー入札の人気が高まっている

ヘッダー入札は、米国と英国のパブリッシャーの約半数に利用されているが、英国での人気の方が高いようだ。ほぼすべて(90%)のパブリッシャーが、1年以内にヘッダー入札の態勢を整える、あるいは利用を開始すると答えている(43%はすでに利用中)。米国では、ヘッダー入札を利用中のパブリッシャーが今後も利用を継続するかどうかを決めかねており、利用中のパブリッシャー(50%)の22%は、継続するかはわからないと答えている。

「トリニティー・ミラー」のマリク氏は、「ヘッダー入札を使っていないところは多くのお金を失っている。GoogleやFacebookといった仲介業者を必要としない企業から、強力な投資収益力で広告売上を奪い返す手段なのだ」と語った。

とはいえ、米国のパブリッシャーの場合は規模がはるかに大きく、ヘッダー入札は競争が熾烈な場合にもっとも真価を発揮する。CNNインターナショナルのブラッドリー氏によると、投資収益は誰にとっても重要だが、英国のように規模が限られている場合、投資収益の重要度がさらに高くなるという。ブラッドリー氏は、「パブリッシャーが各インプレッションからできるだけ多くのお金を搾り出さなければならない」と語った。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images