動画広告における「アドフラウド」の現状:要点まとめ

アドフラウド(広告詐欺)が動画広告の領域でも広まっている。成長中の動画広告市場で収益を上げたいパブリッシャーにとっては、悪い知らせだ。

動画広告市場の飛躍的成長を受けて、アドフラウドを行う悪徳業者がこの領域に群がってきている。米BuzzFeedが最近スクープ記事で明らかにしたように、動画広告在庫の需要が非常に高まっているために、悪徳業者がいまだに無価値なトラフィック送信ドメインなりすましなどの従来型の手口を使い、大手ブランドから広告費をだまし取っている。こうした不正の横行でプログラマティック広告に対する不信感が強まると、市場の成長が減速するおそれがある。

動画広告におけるアドフラウドの現状について、ポイントを以下にまとめる。

重要な統計データ

  • アメリカでは、動画広告の市場規模がわずか数年で2倍近くに増加した。市場調査会社eマーケター(eMarketer)によると、2015年の77億ドル(約8725億円)から、2017年は132億ドル(約1兆4950億円)に。2020年時点で180億ドル(約2兆円)を超える見込みだという。
  • 動画におけるアドフラウドは異常に頻発している。広告費全体の45%は動画に使われている一方、アドフラウドの64%が動画広告で発生していると調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)が報告している。
  • さまざまなタイプの動画広告在庫のなかでも、アドフラウドの標的になっているのはもっとも高価格な在庫だ。モバイルウェブの動画トラフィックでは、ボットによるトラフィックの割合は4%に過ぎない。しかしCPM(インプレッション単価)がモバイルウェブよりもはるかに高いOOT(オーバー・ザ・トップ)の動画では、20%に上るとアドベリフィケーション企業のピクサレート(Pixalate)は報告している。
  • 動画広告では、ディスプレイ広告のおよそ2倍の頻度でアドフラウドが発生している。アドベリフィケーション企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)が北米における広告インプレッションを解析したところ、動画広告では約10%がアドフラウドだった一方で、ディスプレイ広告では5%にとどまった。アドベリフィケーション企業ホワイトオプス(White Ops)の推計によると、動画広告費の22%、ディスプレイ広告費の9%がアドフラウドで失われているという。

パブリッシャーにとっても問題

悪徳業者がだまし取るのは広告主のお金であるため、アドフラウドの問題はバイサイドから提起されることが多い。広告費の4分の1を無駄にしてもかまわないと考えるマーケターは、どこにもいない。だが動画広告におけるアドフラウドは、実はパブリッシャーをも苦しめる。パブリッシャーにお金が流れなくなり、広告料が下がるからだ。

悪徳業者は、広告在庫のバイヤーをおびき寄せるために、偽装URLを利用したボットのトラフィックやインプレッションを格安で販売する。これにより、動画の広告在庫は安く買えるものだという認識がバイヤーたちのあいだに広まっているが、実際には高品質な動画広告在庫はいまだに高価格だと、動画広告プラットフォーム企業スポットX(SpotX)のグローバルオペレーション担当シニアバイスプレジデント、ジョシュ・キャリブ氏は指摘した。

バイラルメディアであるリトル・シングス(LittleThings)において最高デジタルオフィサーを務めるジャスティン・フェスタ氏は、「プレミアムパブリッシャーは、オープンエクスチェンジで本来得られるはずの広告料を、アドフラウドのおかげで得られなくなるのではないか」と、懸念を表した。

業界全体への影響は

できるだけ多くの広告主を受け入れられるようにプログラマティックプラットフォームを設計すると、広告サプライチェーンが複雑化し、悪徳業者が身を隠せる「死角」が生まれる。デジタル広告の登場から20年以上が経つが、アドフラウドはいまだにしぶとくはびこっている。特に動画では、問題は徐々に深刻化しているようだ。

「動画広告におけるアドフラウドは、明らかに拡大している」と語ったのは、アドベリフィケーション企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)の最高執行責任者、マット・マクローリン氏だ。とくに第4四半期は、広告主が年度目標を駆け込みで達成しようとするため、広告に投じられる資金が増加する時期だ。そのため、この時期にはアドフラウドが通常より増えるかもしれないと同氏は指摘した。

あるバイヤーは、動画広告に関しては、パブリッシャーと直接やり取りできるプライベートマーケットプレイス(PMP)でしか広告在庫を買わないと匿名を条件に打ち明けた。買い入れ先をPMPのみに限定すると、入手できる広告在庫の数は大きく減る。それでも、オープンエクスチェンジでアドフラウドの被害に遭うリスクを冒してまで、広告在庫の数を増やす意味はないと、そのバイヤーは話した。

セルサイドはどう考えているのか。リトルシングスのフェスタ氏は、動画に関しては広告主がPMPを好んで選ぶことに気づいていたという。PMPのほうが透明性が高いからだ。

「ただし、PMPが問題を完全に解決してくれるわけではない。長期的には、ads.txtなどの対策を講じていくことで、オープンマーケットからアドフラウドを一掃し、動画広告の透明性を高める必要がある」と、同氏は語った。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)