米国の「ニュース定期購読」の現状が判る 5つのグラフ

デジタル広告に不満を募らせているアメリカのパブリッシャーの多くは2018年、読者からより多くの収益を獲得できるビジネスモデルにシフトしていくだろう。

デジタル広告市場の非常に大きなスケールに比べると、米国における有料デジタルニュース市場は、ずっと小さいと長らく考えられてきた。そこではコンバージョン率が低いうえに、膨大な量の無料コンテンツと競争しなければならないという問題が繰り返し指摘されている。

そんな米国の小さな有料デジタルコンテンツ市場がいま、成長しつつある。それを裏付ける5つのグラフを、以下で紹介する。

2016年、米における有料デジタルニュース購読者はわずか16%

ロイター研究所(Reuters Institute)の調査によると2016年、デジタルニュースに対して何らかの形で料金を支払ったことがある米国人の割合は、米国全人口のわずか16%だった。これは、割合としては先進国のデジタル市場でランキングの6位に入っているが、人口としては米国の全人口3億2600万人(2016年時点の米国勢調査局推計)のうち約5200万人にすぎない。なお、定期購読を続けている人は、さらにその約半数だ。

ちなみに日本は、全人口のうち11%がなんらの形で、デジタルニュースに料金を支払っており、下記ランキングの11位に入った。これは日本の全人口1億2700万人のうち、約1300万人にのぼる。定期購読を続けている人は、11%中の6%だ。

2016年、有料オンラインニュースサービスを利用したことがある米国人の割合

2016年、有料オンラインニュースサービスを利用したことがある米国人の割合。
ダークブルー=定期購読者、グレー=それ以外のタイプ。
出典:The Reuters Institute

デジタル版のみの有料購読者の多くが、新規購読者

上のグラフでは、デジタルパブリッシングにおける大事件「トランプショック」の影響は見えない。しかし別の調査では、有料デジタルニュースの定期購読者の多くが、数カ月から1年以内に購読を開始していた新規購読者であることがわかった。この調査を実施したのは、アメリカのジャーナリズム研究機関アメリカン・プレス・インスティチュート(American Press Institute)とAP-NORCアメリカ全国世論調査センター(Associated Press-NORC Center for Public Affairs Research)のジョイントベンチャー、メディア・インサイト・プロジェクト(Media Insight Project)だ。この成長からわかるように、パブリッシャーが最近強化していた有料コンテンツは、少なくとも一部の読者から支持を得ている。

ドナルド・トランプの大統領選出により、有料デジタルニュースの定期購読者数は2017年はじめに飛躍的に伸びた。しかしその効果は弱まりつつある

米国における有料ニュース購読者の購読期間別割合

米国における紙版・デジタル版の有料ニュース購読者の購読期間別割合(%)。左から順に「3カ月以下」「4カ月~1年」「2~4年」「5年以上」。ブルー=デジタル版購読者、オレンジ=紙版購読者。紙版購読者の半数以上(53%)がお気に入りの新聞を5年以上購読しているのに対し、デジタル版購読者の半数以上(31+27%)が数カ月から1年以内に購読を始めたばかりであったことがわかる。
出典:The Media Insight Project

若い世代がデジタルニュースに出費する傾向が強まっている

ロイターが2017年に実施したアンケート調査によると、前年に有料デジタルニュースを購読したと答えた人の割合がもっとも高かったのは、18~24歳と25~34歳の年齢層。興味深いことに、2016年に実施した調査では、前年に有料デジタルニュースを購読したと答えた人の割合が、これらの年齢層で逆にもっとも低かった。この逆転は、有料ニュースそのものへの関心が世代によって決まっているわけではないことを表している。

前年、有料デジタルニュースを購読した米国人の世代別割合

前年、有料デジタルニュースを購読した米国人の世代別割合(%)。ただしデジタル版のみの購読と、紙版とのセット購読の両方を含む。また記事1本の購読と、定期購読の両方を含む。ブラック=18~24歳、ブルー=25~34歳、オレンジ=35~44歳、マゼンダ=45~54歳、グリーン=55歳以上。全回答者の世代別内訳は、180人/339人/402人/395人/893人。
出典:Reuters Institute Digital News Report 2017

多くの人は、自分にとって重要なトピックの記事に対して料金を支払う

上のグラフにおける逆転からはむしろ、人は自分にとって重要で役に立つと思える情報を提供するニュースサービスに対して、料金を支払おうとするということがいえるかもしれない。

メディア・インサイト・プロジェクトの調査によると、有料購読のきっかけのトップは、関心のあるテーマが十分に取り上げられていたこと。こう回答した人の割合は、米国人有料ニュース購読者の43%に上った。次いで割合が高かった回答は、友人や家族が購読していたから(41%)、割引キャンペーンが実施されていたから(37%)、など。

有料購読を始めたきっかけに関する回答の割合

有料購読を始めたきっかけに関する回答の割合(複数選択可)。上から順に、「特定のテーマ・問題を取り上げているニュースソースを求めていたから」「友人や家族が利用していたから」「割引キャンペーンが実施されていたから」「個人的な事情の変化により、ニュースを読める時間が増えたから」「家計の状況が変わったから」「無料で読める記事の数が上限に達したから」「ソーシャルメディアで見つけたから」「職場で利用していたから」。
出典:The Media Insights Project

大半の有料購読者は、価格に不満を抱いていない

パブリッシャーのなかには、有料サービスの価格や内容について検討の余地があると考えているところもある。だが、すべてのパブリッシャーが値下げを考える必要があるわけではなさそうだ。メディア・インサイト・プロジェクトによると、有料デジタルニュースの購読者の半数近くが、その価格を「非常に良い」と考えている。実際、デジタル版購読者でそう答えた人の割合は、紙版購読者よりも高かった。

購読中の有料ニュースの満足度に対する料金について

購読中の有料ニュースの満足度と比べて、料金をどう感じるか。左から順に、「非常に良い」「適正」「少し割高/非常に割高」と回答した人の割合。ブルー=デジタル版購読者、オレンジ=紙版購読者。
出典:The Media Insights Project

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)
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