「テレビの未来」と大流行! トリビアゲーム「HQ Trivia」:熱狂する米エージェンシーたち

数週間前、デイ・ワン・エージェンシー(Day One Agency)のデジタルストラテジストのアイリーン・クラーリング氏が、ブレスト会議に出ていたところ、突然、携帯電話にプッシュ通知が入ってきた。「HQ is about to go live(HQのライブがまもなく)」とあった。クラーリング氏は会議を抜け出して、この新しいお気に入りのトリビアアプリを見たい衝動に駆られたが、そうではなく同僚にこのゲームを紹介することにした。まもなく、会議は完全にストップし、全員が協力しはじめた。

「上司が『ちょっと待って、このゲームを私に見せて』という始末だった」と、クラーリング氏。「はじまると、みんなが『納得』という感じになった」。

HQ Trivia(HQトリビア)は、毎日午後3時と午後9時にライブ配信のトリビアゲームを提供する、無料のiOSアプリ。テレビ番組「クイズ$ミリオネア」をユーザー全員でプレイするようなアプリだ(日本語の参考記事)。この1カ月で口コミでセンセーションを巻き起こしており、競争好きが多い広告エージェンシーがこのゲームにハマっている。

HQ Triviaが、平日の東部標準時の午後3時にライブになると、全国的にマーケティングのプロたちが誰かのスマートフォンを中心に集まり、科学、スポーツ、ポップカルチャーといった話題のトリビア問題に答えを叫んでいる。そして、仕事が終わった東部標準時の午後9時のライブ時に、もう一度、プレイをする。数十万人がリアルタイムで賞金を奪い合い、誰もがその一部を手に入れたいと願う。ついには、このゲームを同僚たちとプレイし続けるため、会議を遅らせることをクリエイティブたちが検討するまでになっている。

「まるでウイルスのよう」

「まるでウイルスのように広まっている」と語ったのは、デジタルエージェンシーのスペース150(space150)でエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めるブライアン・リッチー氏。スペース150のニューヨーク、ミネアポリス、およびロサンゼルスの各オフィスではほぼ全員が、個人またはチームでこのゲームをプレイしているという。

「電話会議中でも全員が、『大変だ、HQがはじまる』となり、プレイできるように会議の繰り上げがあるのではないかと、全員が密かに期待をする」と、リッチー氏。「電話会議中でもプレイしている者がいるかもしれないが、私には確かめられない」と、同氏は語った。

「エンドルフィンが急増する」と語ったのは、ヴェイナーメディア(VaynerMedia)のVPのフセイン・イスマイル氏。これまでに3回、このゲームで優勝したことがあり、ヴェイナーメディアのニューヨークのオフィスで働く500人――全員がプレイしているだろうと同氏――のなかでは、自分が一番回数が多いと信じている。

ライブゲームは1回、15分ほどしかないため、エージェンシーでは、気を散らすものではなく、チーム作りの素晴らしいエクササイズだと見なされている。ヴェイナーメディアでアカウント戦略を担当するブライアン・ムーア氏は、「チームの結び付き」としてGoogleカレンダー上にHQ Triviaの時間を確保している。同氏によると、ヴェイナーメディアの経営陣は、全員が一緒にひと休みしてプレイすることを推奨している。自分の上司も可能なら参加すると、同氏は語った。

一緒になってHQ Triviaをプレイするヴェイナーメディアのクリエイティブ担当者たち

一緒になってHQ Triviaをプレイするヴェイナーメディアのクリエイティブ担当者たち

「チームをひとつにする」

冒頭で紹介したデイ・ワン・エージェンシーのクラーリング氏も、「10分間プレイすることをいつでも正当化できる」と語っている。

R/GAには、HQ TriviaのためだけのSlackのチャンネルが存在する。「プレイをしているか周囲の全員に聞いていくのだから、チームをひとつにしているのは確かだ」と語ったのは、R/GAのアートディレクターのナンシー・ニストロム氏。「していなければ、追加ライブが手に入るように私たちのコードで登録するようにお願いする」。

ほかのゲームショーと同じで、全員が勝つわけではない。デイ・ワン・エージェンシーのクラーリング氏によると、平日には、1000ドル(約11万円)を目指して少なくとも15万人が集まり、週末になると、8000ドル(約89万円)を目指してその数が20万人に増える。ただ、3回勝っているヴェイナーメディアのイスマイル氏も、これまでの獲得額は24.03ドル(約2600円)だ。勝つには、全12問に正答する必要があり、勝てば自動的に自慢のタネが手に入る。「大金は入らないにしても、HQで勝ったと言えるのは価値がある」とクラーリング氏。デイ・ワン・エージェンシーではまだ誰も賞金を手にしていないことを同氏は認めた。

騒ぎは落ち着いていない

HQ Triviaの人気ホスト、スコット・ロゴウスキー氏のプロフィールをデイリー・ビースト(The Daily Beast)が掲載するのを、同アプリのパブリッシャー、インターメディア・ラボ(Intermedia Labs)CEOのルス・ユスポフ氏が先日、阻止しようと試みたが、その後も、このアプリを巡る騒ぎは落ち着いていない。HQ Triviaは本記事の公開時点で、AppleのApp Storeで無料トップゲームアプリの13位につけており、「クラッシュ・オブ・クラン(Clash of Clans)」「キャンディクラッシュ(Candy Crush Saga)」「スーパーマリオ ラン(Super Mario Run)」などを上回っている。

実は、トロントを本拠とするデジタルエージェンシーのエイティ=エイト(Eighty-Eight)は、はじめてこのアプリを知ったときのことをデイリー・ビーストの記事で取り上げられている。それ以降、HQ Triviaはオフィスのしきたりになり、エイティ=エイトは毎日、東部時間の午後3時にプレイするためのアラームをセットした。「タメになる面白いものが我々のところに舞い込み、いまではチームがまとまる素晴らしい方法になっている」と、エイティ=エイトでマネージングディレクターを務めるエリン・バリー氏は語った。

HQ Triviaをテレビ番組「クイズ$ミリオネア(WHO WANTS TO BE A MILLIONAIRE)」になぞらえるバリー氏。同氏によると、午後9時のゲームは、仕事のあとのエージェンシーのコミュニケーションにもつながっており、プレイしているか、答えは何かなど、従業員たちが互いに尋ねている。ただ、エイティ=エイトにはまだ勝った人は誰もいないという。

「ライブ動画現象の次の波だ」

自分のオフィスで最初にこのゲームを紹介したというデイ・ワン・エージェンシーのクラーリング氏は、カラフルなモーショングラフィックスとライブのホストが特徴的なこのアプリにはまるのは、リアルタイムで、モバイル上ですべてが起きるからだと考えている。いまはない動画共有アプリのVineの共同創業者たちがこれを生み出したというのは、クラーリング氏からすると驚きではない。HQ Triviaは「テレビの未来」だとたくさんの人が述べている。

クラーリング氏はまた、「ライブ動画現象の次の波だ」と語る。「いま、物事がリアルタイムになりゲーム化されているライブの変化を証明するものだと思う。参加するのも加わるのもとても簡単。それがいま、人々がモバイルデバイスに求めているものなのだ」。

Pokemon Go(ポケモンGO)がそうであったように、アプリの人気はいつ廃れてもおかしくないが、すでに一部のエージェンシーが、このコンセプトを将来のプロジェクトに適用しようと動きだしている。「毎日、決まった時間に人々が何かに向かうという形でコンテンツを概念化し、戦略的にブランドに結びつける方法がないだろうか」と、スペース150のリッチー氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)
Lead image courtesy of Day One Agency