冬の時代に突入した、新興デジタルメディア 〜2番手以下は淘汰されるのか?

先行者利益を糧に、すさまじい勢いで成長した新興デジタルメディア。だが、その栄光の日々は過ぎ去り、暗く長い冬がはじまろうとしている。2016年はデジタルメディアの勝敗が決する年となるだろう。

現在、ベンチャーキャピタルに支援されているデジタルパブリッシャーの多くは、スケール(規模)が限界値ギリギリにまで達している。彼らのビジネスモデルは驚くほど高いオーディエンス成長率を軸としていて、この成長率をもとに、ビジネスは成功すると推測されていた。

しかし、必ずしも成功するわけではない。当然ながら、トラフィック成長率は頭打ちとなっているのだ。

安定成長を続けるとは限らない

例として、いくつかのパブリッシャーを見てみよう。新興経済メディア「ビジネスインサイダー」の2014年のトラフィック伸び率は79%、2015年は10%で、月間のユニークユーザー数は4000万人にまで上昇した。

新興メディア「BuzzFeed」は、2015年はあまり伸びなかったが、前年は43%の成長を遂げ、2015年11月には7530万人のユニークユーザー数を記録している(comSocreの米クロスプラットフォーム測定)。

ニュースメディア「Mashable(マッシャブル)」の伸び率は、2013年11月から2014年11月の間が19%、2015年通年は32%と15年の方が早いスピードで成長している。

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月間ユニークビジター数の成長率(期間:2013年11月から2015年11月)

「新興デジタルメディアのすべてが、安定した成長を続けるとは限らないという空気感が業界に漂っている」と、Webメディア「アウトセル(Outsell)」の主席アナリストであるケン・ドクター氏は話す。「伸び率で遅れをとると、それらの企業の価値は暴落する可能性がある。勢いがあるかないかで、勝つか負けるかが決まる」。

減り続けるFacebook流入

多くのパブリッシャーにとって、この伸び率の低下はFacebookがパブリッシャーに送るトラフィックを減らしたことが要因となっている。効果測定を提供するシンプルリーチ(SimpleReach)によると、Facebookアカウントを運用するトップ30の自社サイトへのFacebook流入が、2015年の1月から10月までの間で32%も減少している。

Facebookにもオーディエンスを独自に囲ってしまいたいという思惑があるため、パブリッシャーたちは新たなオーディエンスの獲得に苦しむ。結果、多くのパブリッシャーが「掲載費」(投稿に対する広告費)を支払って人々のニュースフィードに記事を表出させている。

漏えいされた情報によると、「BuzzFeed」はFacebookのトラフィックに年間で数百万ドルを支払っているという。また、同時に多くのパブリッシャーが、現時点ではまだ収益化の可能性が見えないプラットフォームで分散型メディア戦略を推し進めている。

「売れるなら、いまがチャンスだ」

これらのパブリッシャーではオーディエンス数の大幅な減少には至っていないが、彼らの投資家は成長する企業に資金を注ぐわけであり、当然ながら停滞している企業に投資はしない。

ほかにも、これらのパブリッシャーの成長率が低下していることを示す根拠はある。「Mashable」は2014年の売上目標が到達できなかったことが報じられている。そして、「BuzzFeed」は新たな雇用を控えると発言しているのだ。

2015年のクリスマスの直前にも、「Mashable」が3億ドル(約353億円)で売却されるというニュースが飛び込んできた。また、デジタルパブリッシャーのアトランティックメディア(Atlantic Media)にも、グローバルニュースを専門とする「Quartz」部門の売却の話もある。これはデジタルパブリッシャー業界の地固めが終わり、「ビジネスインサイダー」が独新聞最大手「アクセル・スプリンガー」に3億4300万ドル(約410億円)で売却されて半年経った後の話だ。

「もしあなたがこれらの企業を経営していて、納得のできる価値で売却ができるのであれば、今がそのチャンスだ」と、コンサル企業アドメディアパートナーズのマネージングディレクターであるセス・アルパート氏は話す。「もし私がこれらの企業のいずれかに投資をしていたとすれば、2016年にはその投資をやめていたい」とも付け加えている。

2番手以下には大きな痛手

インターネット上に過剰にパブリッシャーがひしめくため、ビジネス面での課題も、困難を極めている。広告のバイヤーたちはたくさんのパブリッシャーのなかから最適な取引を探すことができるが、選考に残らなかったパブリッシャーには痛手だ。

デジタルエージェンシー、デジタスLBi(DigitasLBi)のチーフコンテンツオフィサーであるスコット・ドナトン氏によると、以前は広告枠を買うために10社から20社ほどに広告掲載依頼書を送っていたというが、現在は2社か3社程度にしか送らないという。エージェンシーが取り引きを行う企業をすでに決めている場合もあると話している。

「誰も第2、第3候補になりたくはない。ほかのパブリッシャーと差別化を図ったり、革新的なコンテンツで目を引いたりしないと、この難題を突破することはとても難しい。小さなパブリッシャーにとっては難関だ」と、ドナトン氏は語った。

2番手集団以下のデジタルパブリッシャーにとって、2016年の冬は寒くなりそうだ。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:BIG ROMAN)※[日本版]編集部で加筆・編集した
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