どう思う? Webライターの「PPC(クリック連動型)の報酬モデル」

良かれ悪しかれ、Webメディアのライターに対するPPC(クリック連動型)の報酬モデルは、いまだ残っている。

2015年6月にアメリカでローンチした、プラットフォーム型のメディア「Slant」(※日本における「cakes」や「note」に近い)は、ライターへの支払いに、いまだ評価が定まらないPPCモデルを導入した。発足時に契約した100人の寄稿者に、それぞれが担当した記事から発生する広告収入の70%を支払い、残りを「Slant」の売上とするという。

「Slant」は、この報酬モデルを導入したことについて、コンテンツファーム(サイト訪問者数を増やすために、質の高くないコンテンツを大量に作成・配信するサービス)で搾取されるWebライターの製作環境の向上を主な目的としている。いままで経済的に発展していくのが極めて難しかった、大手メディア以外で活動するライター。彼らにパブリッシャーを介さない、自由に発信できる場(プラットフォーム)を与え、さらにデジタルに精通した「Slant」の編集者の目を通し、より効率的な拡散を目指すという。

「Slant」に続くパブリッシャーは現れるか?

ビジネス系SNS「Linkedin」やブログプラットフォーム「ミディアム(Medium)」などで、特に報酬も得ずにコンテンツを執筆・掲載し、信頼を築こうとするライターの傾向を考えれば、「Slant」のプラットフォームはより魅力的かもしれない。また「Slant」のように、寄稿したライターに対して、報酬を支払うプラットフォームも珍しい。同社は、そのシステムに自負があり、注目が集まることを期待している。

「多くのサイトは、ライターの創作欲求を利用して、売上のすべてを持っていってしまう」と、「Slant」の編集長を務めるアマンダ・グッターマン氏。「私たちの意図は、創作したらクリエイターにも公正な報酬が与えられる環境を提供することだ」。

「Slant」に寄稿するライター達は、常に書き続けている状況にあるという。6月のローンチ以来、サイトにはスポーツ記事「プレミアリーグ第1週の7つの決定的瞬間」やポップ・カルチャー記事「『バットマン・ビギンズ』 に関する6つの予期しなかった愉快な真実」や政治記事「アメリカ最高裁の陪席判事であるルース・ベイダー・ギンズバーグは、いかに自分が完璧か22回も証明してみせたか」といったトピックが、毎週平均で300本も配信されている。

トラフィックに応じて報酬を支払うというアイデアは決して目新しくはない。しかし、パブリッシャーにとって、ハードニュースを執筆するライターにトラフィックに応じた報酬を支払うというのはまだまだ安定したモデルではないようだ。「Gawker」や「Complex」、「Bleacher Report」などのように、トラフィックをベースとし、スタッフライターや外部の寄稿者に多様な支払いモデルを創りだした例はここ何年かの間に見られる。また、米大手経済誌「Forbes」は、自社のプラットフォームを大勢の寄稿者に開放し、記事の閲覧回数によって報酬を払うモデルを採用し続けている。

「Slant」は記事の質を保てるのか

しかし、クリック数モデルは重大な危険性をはらんでいる。よりクリックされそうなコンテンツを書けば良いと、書き手が読者に迎合してしまうからだ。特に、誰もが参加できる「オープンプラットフォーム」ではそうなる可能性が高い。そうしたサイトは編集者による記事編集が行きとどいていない上、質が後回しになりがちだ。

カリフォルニア大学アンネンバーグ校のガブリエル・カーン教授は「ライターのモチベーションがすべて単にクリックを誘発させる記事を量産させる方向に向かってしまう。パブリッシャーにとっての危険性は、ここにあります」と指摘。「19世紀のアメリカ西部のような無法地帯に身を委ねてしまうことになりかねない」と危惧した。

一方で、「Slant」のグッターマン編集長は、ライターが軽めのエンターテインメント記事を配信する事に、社として反対はしないと語る。そうした記事は、同サイト内ではむしろ少ない方だという。よりシリアスな記事が大多数を占めているからだ。

最終的には寄稿者に報酬以上のものを提供したいと望む「Slant」。寄せられた記事は4人の編集者によって事実誤認のチェックを行い、ソーシャル・ネットワークで評判になるように手を加えるなどしている。そうしたフローは、寄稿者がより質の高いライターになるための手助けになると、グッターマン氏は話す。

「記事が幅広く受けないとライターは十分に稼ぐことが出来ない。我々としては、活発な意見交換が出来るコミュニティを作り出したい。それこそが、ライターに経済的にも技術的にも発展してもらう、やる気を起こさせる動機付けとなるはずだ」と、同氏は期待を抱いている。

Ricardo Bilton(原文/訳:南如水)
Photo by Scott Cresswell