寄稿者ネットワークの終焉:量から質へ 媒体社たちの決断

寄稿者ネットワークは長年にわたり、パブリッシャーが短期間かつ低コストで成長するための確実な手段と考えられてきた。しかし、量よりも質が強調される昨今、そうしたモデルは次第に役に立たなくなっている。

総合スポーツメディアのブリーチャーレポート(Bleacher Report)は2月、ユーザー生成コンテンツ(User-Generated Content:UGC)プログラムを担当していた最後のスタッフたちを解雇。2012年にターナー(Turner)に買収されたときから規模縮小をはじめた事業に終止符を打った。また、無報酬の寄稿者からのコンテンツでメディアを運営するプラットフォームとされてきたハフィントンポスト(The Huffington Post)は、2015年秋に新しいコンテンツ管理システム(CMS)を導入したが、これにより寄稿者コンテンツが新しいサイトに反映されず、検索結果にも表示されなくなっている。

また、経済誌フォーブス(Forbes)は、長年にわたって寄稿者ネットワークを利用し、デジタル世界での存在感を高めてきた。しかし2015年末、寄稿者に支払う原稿料の大幅値下げを実施。それ以来、寄稿者がもたらすトラフィックに関するデータの一部を、広報資料で公開しなくなった。

これらはすべて、かつて全力で規模を追い求めていたパブリッシャーたちが、こぞって取り組んでいる質への転換の一環だ。

寄稿者ネットワークの現実

「メディア企業は一斉に、コンテンツの品質向上へ方向転換した」と、オラピック(Olapic)を創業したポー・サブリア氏は語る。新興企業のオラピックは、UGCをマーケティングに活用したいブランドを支援している。「ほかの形式のメディアと競争している企業なら、質の低いユーザー体験を放置できないはずだ」。

寄稿者モデルは、10年前には素晴らしい手法だと考えられていた。ハフィントンポストやブリーチャーレポート、それにSBネーション(SB Nation)などのメディアは皆、無報酬で寄稿してくれるライターを大勢集め、彼らが生み出すトラフィックを買収やベンチャー資金の調達に利用していた。

こうした動きが引き金となり、ハースト(Hearst)、コンデナスト(Conde Nast)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)を含む多くの大手パブリッシャーが、寄稿者プログラムを自社の編集体制に取り込もうと試みた。ただし、その成果はまちまちだ。ワシントン・ポストが手がけるタレントネットワーク(Talent Network)プログラムは、いまや2500人の寄稿者を抱えているが、ハーストは寄稿者のエッセイを集めたサイトのザ・ミックス(The Mix)を閉鎖した。そして、エンターテインメントウィークリー(Entertainment Weekly)のザ・コミュニティー(The Community)は、1000名の寄稿者を集めるという目標を達成できていない。

とはいえ、ハフィントンポストの戦略は、いまも新興メディアに採用されている。ベンチャーキャピタルに支援された新興企業のオデッセイ(Odyssey)は、編集スタッフの約3分の1を最近解雇し、1万5000人の寄稿者(その大半は大学生)に頼っている。ファンコミュニティーのネットワークとして、月間ビジター数4億人超(出典:SimilarWeb)を誇るウィキア(Wikia)は、ファンダム(Fandom)を開設し、報酬制のライターとコミュニティー内からスカウトした寄稿者の両方に依頼している。

なにが問題だったか?

こうしたネットワークは、短期間でマネタイズが可能な素材を低コストで獲得する手段だが、実際にすぐ売上につなげるのは難しい。「『Googleドキュメント』を開いて、2、3のメールをやり取りすれば済むほど簡単ではない」と、メンズ・ヘルス(Men’s Health)の編集責任者マット・ビーン氏は指摘する。同氏は、タイム社(Time Inc.)の編集責任者だったときに、先述したエンターテインメントウィークリーのザ・コミュニティーを立ち上げた人物だ。「成功しているネットワークの大半は、内部で多くの業務をこなしている。おそらく、私がもっとも長く時間を費やしている業務は、さまざまな寄稿者ネットワークインフラへの対応だろう」。

こうした業務は広範にわたり、寄稿者の採用、個人事業者に関する各種法律への対応、大勢への不規則な間隔でのすみやかな支払い、寄稿者とのセキュアなやり取りなどがある。しかも、これらが霞むほど大きな問題がある。それは、往々にして荒削りな寄稿者の記事を大手サイトで配信してしまうことだ。

「こうしたコンテンツはたいてい編集の質が低いことを考慮する必要がある」と、ビーン氏は指摘する。「では、そうした記事を読者にどう伝えるのか? どのような寄稿者プラットフォームでも、質を犠牲にせずに規模を拡大する方法が問題になる」。

多くのパブリッシャーにとって、この問題の解決策は、寄稿者コンテンツの掲載回数を減らすか、目立たないようにすることだった。これは読者のためでもあり、広告パートナーのためでもある。「ブランド広告主は例外なく、UGCと関係があると誤解されるのを嫌った」と、ブリーチャーレポートの元幹部は語る。この幹部は、こうした問題が一因となって、ブリーチャーレポートが報酬制でプロにコンテンツを作ってもらう体制に移行したと付け加えた。

しかし、UGCが脇に追いやられて目立たなくなっても、パブリッシャーにトラブルをもたらす可能性はある。そして昨今、寄稿者のコンテンツが投げかける潜在的な脅威は、かつてないほど深刻になっている。2014年にフォーブスが激しい非難に立たされたのは、酒に酔った女子大生が男子大学生のフラタニティ(社交クラブ)に脅威をもたらすという記事が寄稿されでからだった。だがいまなら、フェイクニュースとみなされそうな記事が寄稿されるほうが一層深刻だろう。

重要度増すプロコンテンツ

「『フェイクニュース』という言葉は実に広がりやすい」と語るのは、メディアエージェンシーのエッセンス(Essence)で北米担当メディアアクティベーションディレクターを務めるジラ・ウィレンスキー氏だ。「我々は最近、パブリッシャー自身のジャーナリスティックな誠実さを重視するようになっている」。寄稿者のコンテンツには、そうした誠実さを損なう可能性がある、と同氏は指摘する。

そうした諸問題にもかかわらず、現在こうした戦略を実践しているパブリッシャーの多くは依然として、UGSとプロの記事を組み合わせ、その上に広告ビジネスを構築できると考えている。たとえば、ファンダム(Fandom)は熱心な寄稿者たちと連携するエディターを多数抱えており、そのオーディエンスはアマチュアによるコンテンツに満足している。「思うに、我々はプラットフォームであり、メディア企業でもあるというポジションにいるのだろう」と、ファンダムのコンテンツ担当シニアバイスプレジデント、ドース・ラファエリー氏は語る。

組み合わせモデルがうまくいくかどうかは、いずれはっきりする。ただし、まず間違いないと思われるのは、プロが作ったコンテンツの重要性が今後さらに増すということだ。世界最大手のメディア企業といってもおかしくないFacebookでさえ、プロが作るコンテンツに自社の未来を託す姿勢を強めているのだから。

MAX WILLENS(原文 / 訳:ガリレオ)
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