現実を見ろ! 動画がデジタル媒体の成長に寄与しない3つの理由

動画は魅力的で、金になる。大画面でも、モバイル端末の極小画面でも、動画は効果がある。その一方で、動画はかなり扱いにくくて規模の拡大が極めて難しく、ベンチャー資本漬けで成長分野を必死に求めているパブリッシャー(媒体社)にとって、大きな頼みの綱にはなりそうもない。

先週30人の社員をレイオフしたマッシャブル(Mashable)は、動画が未来だと信じている最新のデジタルパブリッシャーに過ぎない。このレイオフは、ケーブルテレビ向け米放送局ターナー・ブロードキャスティング・システム(Turner Broadcasting System:TBS)から受けた1500万ドル(約15億円)の投資とともに、テレビ番組を含む動画コンテンツの制作拡大に向けて立ち位置を変更するのが目的だ。程度に差はあるものの、BuzzFeedからミック(Mic)、エリート・デイリー(Elite Daily)、アップワーシー(Upworthy)まで、パブリッシャーはいずれも、配信契約とうまみのある動画広告収入が後から手に入ると確信して、十分な動画技術の習得に未来を賭けている。

メディア企業やテック企業のコンサルタントを務めるある業界筋は、次のように語る。「動画を増やせば収益を増やせるとして、広告販売サイドから圧力が掛かっている。投資に対する収益が得られる時期を尋ねるベンチャー投資会社からの圧力もある」。

現実1:動画は安上がりでも簡単でもない。

米ヤフー(Yahoo!)のある元コンテンツ担当幹部によると、同社はこの6~7年で動画コンテンツに10億ドル(約1063億円)を投資したという。これには、オリジナルのWeb動画およびテレビ番組のシリーズや、デイリーニュースとライフスタイル関連コンテンツの内部制作、大手メディア企業のNBCユニバーサル(NBC Universal)やTBSと結んだコンテンツ配信契約が含まれる。6~7年間に10億ドルをつぎ込んでヤフーに残されたのは、現在売却しようとしている低迷中のメディア事業しかない。

もちろん、ソーシャルプラットフォームの助けもあって、動画の制作は以前に比べると低予算でできるようになった。たとえば、FacebookやYouTube、Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」に向けてコンテンツを制作しているあるパブリッシャーの動画制作費は、同社幹部によると1分あたり500ドル(約5万円)だという。それに比べて、ヤフーは、全8話の短編ウェブシリーズに数十万ドル(数千万円)を費やした、と前述の元幹部は述べている。Facebook向けニュースフィードコンテンツ(ライセンス供与を受けた映像やテキストを用いた動画)を制作するパブリッシャーなら、費用はさらに安くなる。それに、これらのプラットフォームは規模を優先しているので、こうした動画は、ごく短期間で視聴回数が数百万回に達しやすい。

米ニュースサイト、スレート(Slate)のプレジデントを務めるキース・ヘルナンデス氏は、次のように述べている。「誰もが、取るに足りないコンテンツが何百万回も視聴されるということに目がくらんでいる。Facebookに最初に公開すれば、ほかの誰よりも先に金が手に入ると考えているのだ」。

現実2:Facebookは規模を提供するが、収益面はほとんど何もない。

Facebook向けの動画で儲けている者はいない。多くのパブリッシャーは、Facebookが何らかの有意義な売上をもたらしていると確信している。だが、大半のパブリッシャーは、「おすすめ動画(Suggested Video)」以外に、Facebookに公開するコンテンツから直接的に利益を上げる方法がいまだにない状態で、「おすすめ動画」は、収益面でまだ目立った変化をもたらしていない。

「我々はFacebookで利益を上げているが、ほとんどの企業にとって事業を続けるのに十分な利益ではない」。オンラインニュースネットワーク、ザ・ヤング・タークス(The Young Turks)の創設者兼最高経営責任者(CEO)であるセンク・ウィグル氏は、こう語る。

Facebookが動画広告製品を開発中なので、そうした状況も変化するかもしれない。次なる目玉となるライブストリーミングに関係しているとなれば、なおさらだ。

とはいえ、Facebookの動画広告からパブリッシャーが利益を上げられるような仕組みができても、実際に儲かるという保証はない。

メディア事業のコンサルティング企業ガーションメディア(GershonMedia)のプレジデントであるバーナード・ガーション氏は、次のように語る。「CPMが高いので、動画に殺到する動きがある。だが、高いCPMが得られるのは、台本があるドラマやライブTVのような質の高い環境だ。Facebookフィードに上げた動画を音も出さないままスクロールされるような状態では、そういった環境は作れない」。

広告主は、動画が大好きで、Facebookなどのソーシャルプラットフォームに対して楽観的だが、動画を制作中だからといってパブリッシャーのもとにやって来たりはしない。

メディアプランニング/バイイング企業ホライゾン・メディア(Horizon Media)のデジタル担当ディレクター、アレックス・ストーン氏は、次のように指摘する。「たいていのメディアプランナーは、そうした一部のパブリッシャーの戦略に顔色ひとつ変えないと思う。うまくやれるということを証明しないと。人々が動画にエンゲージして視聴し続けることを証明する必要がある。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やコンデナスト(Condé Nast)、タイム社(Time Inc.)といった、業界のもっと大手でさえ、コンテンツを人々に視聴してもらえることを広告主に証明しなくてはならない」。

現実3:テレビは素敵な夢だが、多くの夢は実現しない。いい夢は特に。

デジタルパブリッシャーが動画広告分野での収益を追求するもうひとつのルートは、実際にその金がやり取りされている場所、つまりテレビだ。米新興メディア企業バイスメディア(Vice Media)は現在、ケーブルチャンネルを運営している。BuzzFeed、マッシャブル、Vox Mediaはいずれも、自社ブランドをテレビに拡大するのと引き替えに、メディア企業に普通株を売却しようとしている。

そうした取り組みは、うまくいくかもしれないが、テレビ番組の制作とマネタイズに一日の長がある多くのメディア企業に立ち向かうことになるはずだ。そのうえ、番組制作やテレビのチャンネル全体に関連する費用は、中規模の多くのパブリッシャーが馴染みのある金額をはるかに上回る。たとえば、オリジナルのシリーズについて昨年マッシャブルと交渉した動画プロデューサーは、マッシャブルの幹部が予算について20万ドル(約2000万円)程度だとは思っていなかったと述べている。ほかのデジタルパブリッシャーの幹部についても、1話あたりの予算が2万~4万ドル(約200万〜400万円)と知って驚いている者がいたと、この動画プロデューサーは語っている。

同氏は、「それ以上の費用が掛かり、本物の才能がある人が登場する台本付きの番組がある場合は、すべてのWeb動画がひとまとめで扱われているように思える。BuzzFeedのようなコンテンツと同じ扱いを受けているのだ」と語った。

結局のところ、動画に興味があるパブリッシャーは、コンテンツのためのコンテンツ制作を超えて考えなければならない。ユーザーに価値を提供する差別化されたメディアブランドは、動画やテキストといったコンテンツの種類に関係なく、生き残れる見込みが大きくなる。

あるデジタルパブリッシャーの幹部は、次のように語る。「代わりがきく中規模の月並みなブランドは、犠牲を払ってこの分野で競争することになる」

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
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