「動画は長さではなく、費やした労力の量が重要なのだ」:経済サイト「クォーツ」のメディア運営術

経済ニュースメディアの「クォーツ(Quartz)」は、読者が居る場所で自分たちの存在を示すことの重要性を知っている。Facebookで動画配信に注力したり、メッセージングプラットフォームへの記事配信に取り組んでいたりするのは、そのためだ。

「人々が何のために携帯電話を使用しているかを考える必要がある。いまは、通知やメッセージ、電子メールのためだ」と、クォーツの編集主幹兼共同創設者であるケビン・ディレイニー氏は、「ガーディアン(The Guardian)」がロンドンで開催した「チェンジングメディアサミット2016(Changing Media Summit 2016)」で語った。「我々は、人々がすでに行っている活動に入り込もうとしているのだ」という。

米DIGIDAYはこのイベントでディレイニー氏に取材し、Facebook動画、メッセージングアプリ、そしてコンテンツの読み終えやすさについて話を聞いた。

Facebookでは動画の質が重要

3人のメンバーから成るクォーツの動画専門チームは、どのような動画が読者の反応を得られるかを知るために、10カ月に渡って、さまざまな試みを行っている。ディレイニー氏によれば、すべてのプラットフォームを合わせた視聴数は2億近くに達するという(同氏が4500万という目標視聴数を達成したと報告したのは、4カ月前のことだった)。

フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)」などのパブリッシャーは、Facebookでの動画配信を成功させるには、短編の動画と長編のドキュメンタリー風動画の両方をプッシュすることが必要だと信じている。だがクォーツは、いわゆるクォーツ曲線(短編または長編のコンテンツは成功率が高く、中途半端な長さのものは低い)をいまでも活用しているものの、動画の長さについては異なる考えをもちはじめた。「動画の長さではなく、動画に費やした労力の量が重要なのだ」と、ディレイニー氏は異を唱える。

「カナダのジャスティン・トルドー首相には誰もが関心を持っているようだ」と、ディラレイニー氏が紹介したのは、トルドー首相が多様性について語る様子を捉えた動画だ。とても短く、すぐに見ることができ、シェアしやすく、穏やかな雰囲気のこの動画は、1月に公開されて以来600万近い視聴数を獲得した。

これと対局にあるのが、もっと多くの時間が制作に費やされた動画や、もっと多くのアニメや図表が使われたような動画、あるいはクォーツがいままででもっとも成功を収めた、深海生物をはじめて捉えた動画だ。この動画は2400万回近い視聴数を獲得し、1分半の長さしかないものの、多くの報道で取り上げられている。

Stunning images of deep sea creatures off the coast of Puerto …

Scientists just captured stunning images of deep sea creatures off the coast of Puerto Rico—some are so new to us, they don’t even have names.

Quartzさんの投稿 2015年5月7日

メッセージングアプリを活用

ほかのパブリッシャーと同じく、クォーツは読者がいる場所にいなければならない。そしていま、読者が増えつつある場所はメッセージングアプリだ。ディレイニー氏によれば、クォーツのアプリは2月はじめのリリース以来、数十万件のダウンロード数を記録しており、ユーザーがこのアプリを利用した時間は延べで3年に相当するという。このアプリは、メッセージングプラットフォームで読者と会話をしているかのような形で、ニュース記事を配信したり読者をほかのニュースソースに誘導したりする。

クォーツは、新しいCMS(コンテンツ管理システム)を導入し、アプリ向けニュース原稿と日刊のニュースレター向けニュース原稿の執筆を専門に手がける4人のチームを編成し、メッセージングアプリへの直接配信に向けた準備を進めている。

「当社のジャーナリストは、メッセージングプラットフォームに合わせた形でニュース原稿を執筆しているため、このやり方を『Slack(スラック)』やFacebookの『メッセンジャー(Messenger)』にまで広げることができる。統合するための技術的な難易度によっては、ほかのメッセージングプラットフォームに拡大するまでに時間がかかるが、当然ながら、メッセージングサービスと統合すれば、潜在的なオーディエンスの数ははるかに多くなる。彼らはモバイルネイティブなのだから」と、ディレイニー氏は付け加えた。

人々はフィードでニュースを消費する

ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」のようなパブリッシャーは、パブリッシャーの独自アプリこそがまったく新しい限られた読書体験を生み出せるのだと主張している。しかし、クォーツはこのモデルにならおうとはしてない。

「ほかの人たちは読み終えやすさについて語るが、我々はどのような場所でも読者を見つけられるコンテンツを作りたいと考えている。いま、ニュースを読む体験と言えば、Facebookのフィードであれ、LinkedInのページであれ、メールであれ、自分のストリームに表示された記事を読むことだ。読み終えやすさにフォーカスすれば、誰かがコンテンツを最後まで読んでくれるという前提で、限られた数のコンテンツを作成することになる。だが、非常に多くの人々が、いまはそのような形でニュースを消費していないのだ」(ディレイニー氏)。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Quartz