ヘッダー入札は「すべてを台無しにしてしまう」のか? そのマネタイズ特効薬の副作用

パブリッシャーが、複数のアドエクスチェンジをまたいでオークションを実施できるようにした「ヘッダー入札」は、広告業界において最近もっとも人気の言葉のひとつだ。パブリッシャーにとって、ヘッダー入札はチャレンジしてみたい戦略と見ているところも多いだろう。しかし、そうしたテクノロジーの背後に潜む、欠陥を見据えようとしているかは、疑問である。

広告枠の値崩れを防ぐことができる、ヘッダー入札。パブリッシャーが在庫となっている広告枠を捌きたいとき、同時多発的に複数のアドエクスチェンジでオークションにかけることを意味する。そうすることで、必然的にオークションへ参加するバイヤーの数が増えるため、より広告収益を上げやすくなるのだ

ヘッダー入札のダウンサイド

しかし、ヘッダー入札はページの読み込み時間を遅くするというリスクを内包している。ヘッダー入札を実行することで、WebサイトにおけるHTMLのヘッダー部分にJavascriptを連ねなければならないのだ。そうなれば、ページの表示に時間をかけてしまうことは必至だ。これは、パブリッシャーがいくつのヘッダー入札アドテク業者と契約するかによって、大きく左右されることになる。

このような状態は楽観できるものではない。パブリッシャーや提携先のアドテク業者はすでに、重すぎる広告やJavaScriptの影響で、Webサイトの読み込み時間が長くなっているという手厳しい洗礼を受けている。それに対し、ユーザーはアドブロックツールを利用するという形で応戦してしまっているのだ。

「実装したら最後、パブリッシャーは流入増の目標を達成するどころではなく、すべてを台無しにしてしまうだろう」と話すのは、マーケティングソリューション企業トリビューンパブリッシングのプログラマティック広告責任者を務めるロリ・タボラリス氏だ。「サイトの規模やアクセスを増やそうとしても、ページ表示が遅くなれば、インプレッションやビューアビリティが減ってしまう。そのバランスを取るのが課題となっている」と、同氏は続けた。

技術的なリソースもハードルに

ヘッダー入札の実装は、サイトのバックエンドに、コードを数本入れれば済むような問題ではないため、パブリッシャーにとっては難易度の高い技術的なチャレンジでもある。また、ヘッダー入札を、パブリッシャーのサイト全体の広告取引の流れとどう融合させていくのか。そして、いくつのヘッダー入札を実装すればうまく収益化に繋げられるのかも課題である。

ビジネスインサイダー副社長(プログラマティック広告兼データテクノロジー担当)のジェナ・メロン氏は、「ヘッダー入札を行うには多くの技術的なリソースが必要になるが、多くのパブリッシャーはそうしたリソースをもっていないうえに、その技術すら理解できていないかもしれない。課題は決して少なくない」と語る。

このようなわけで、パブリッシャーがヘッダー入札実装のため、アドテク業者をパートナーとして選ぶのに慎重になるのもうなずける。誠実なパートナー業者であれば、パブリッシャーを積極的にサポートしてくれるからだ。

インデックスエクスチェンジやイールドボット、そしてアップネクサスなどの大手テクノロジー企業は、ヘッダー入札の実装をいかにパブリッシャーへ促していくかを課題としているかもしれない。だが、そこからさらに進んで、適切なサポートを随時提供していくことのほうが、本質的な課題なのだ。

それも、ヘッダー入札を扱うアドテク業者のなかには「JavaScriptだけをパブリッシャーに提供し、それをサイトページに装着させるように促すだけの業者もいるからだ」と、タボラリス氏は語る。

実施する前に熟考が必要

ほかにも重要な課題はある。ヘッダー入札によって、パブリッシャーのオーディエンスに関するデータが、入札者側に流出する懸念もあるのだ。そのような入札者は、別の広告枠でもっと安価に流出した情報から分かるオーディエンスへ広告を打つ方法を考える可能性がある。このようなデータ漏洩の懸念は、パブリッシャーとブランドの両方で共有されており、特にパブリッシャーは、ヘッダー入札の実装を試みるまえに熟考する必要があると、プロハスカ・コンサルティング(Prohaska Consulting)のCEO、マット・プロハスカ氏は警鐘を鳴らす。

「ヘッダー入札は大儲けが出来ると期待されているが、実装するには『売り手の責任』を吟味しなければならない。多くのパブリッシャーは、それを自覚しつつある」と、プロハスカ氏はコメントした。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:南如水)
Photo: Flickr / Scott Beale