「プラットフォームひとり勝ち」は真実か? 各パブリッシャーの有力者に聞いた

Facebook、Twitterなど、プラットフォームのコンテンツ配信能力が増している。消費者はパブリッシャーから直接ではなく、日常的に触れるプラットフォームを介してニュースを得ることが多くなった。

その状況はパブリッシャーからニュースの流通手段を奪う恐れがある。アメリカでは、ニュースメディアとしての価値を高めるFacebookの影響力を示す調査結果もあるほどだ。新聞・テレビからの情報よりもFacebookからの情報のほうが信頼できると感じる人も多いという。

パブリッシャーは危機が拡大しているのか?

そうした流れのなかで、コンテンツ配信のためのプラットフォームを用心深くセレクトするパブリッシャーもいる。プラットフォームに流通網を握られることを恐れているのだ。またその一方、あえて複数のプラットフォームを併用し、オーディエンスの流入経路を多様化するパブリッシャーも多い。一時期囁かれた「プラットフォームひとり勝ち」状態とは、異なる流れといえるだろう。そんな混沌のなか、パブリッシャーとプラットフォームは、どのような関係を結んでいくべきなのか。

コロンビア大学デジタルジャーナリズムセンター所長、エミリー・ベル氏は「(この状況は)パブリッシャーとジャーナリズムの両方にとって大災害になる可能性がある」と、語った。ベル氏の恐れとは、ニュースとそれを供給するパブリッシャーが、プラットフォームにおけるひとつの商品に陥ることだ。「この200年間で初めて、ニュースパブリッシャーは自ら作成したニュース記事を流通する手段がコントロールできなくなった」。

むしろチャンスが到来したと受け止めるパブリッシャーも

あるパブリッシャーは危機が拡大していると考える一方、むしろチャンスが到来したと受け止めるパブリッシャーも多い。アメリカで若者に絶大な指示を受けるメッセンジャーアプリ「Snapchat」は、英紙・ニュースサイト「デイリー・メール」と、テレビ局の「CNN」を自身のコンテンツ配信チャンネル「ディスカバー」に引き入れた。そのチャンネルには、「Buzzfeed」「コスモポリタン」「ピープル」「ナショナル・ジオグラフィック」など、他の一流パブリッシャーも参加している。

さらにFacebookは、2015年5月から「Instant Article」というニュースサービスを展開。「Instant Article」に参入したメディアのページは、ロード時間、動画の動作環境、ユーザー体験などにおいて、格段に優れているという。「ニューヨーク・タイムズ」「Buzzfeed」「ガーディアン」「ナショナル・ジオグラフィック」らが参加している。

パブリッシャーの意見を聞いてみよう。

「デイリー・メール北米版」最高経営責任者(CEO)
ジョン・スタインバーグ氏

我々は多数のオーディエンスを抱える大きなサイトと協力関係になることに興奮している。流通網を自ら構築することが、メディア企業として成功する必要条件にはならないと思う。

素晴らしいドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」は、独自の流通網を保持していない。パブリッシャーも自前のニューススタンドを持っているわけではないのだ。

「流通チャンネルを独自で確保しないメディアは危険だ」という考えは、突飛なものといえるだろう。プラットフォームは、メディアビジネスにおける酸素のようなものなのだ。

「CNN Digital」ゼネラルマネージャー
アンドリュー・モーズ氏

人々は「CNN」を必要としている。我々は異なるすべてのプラットフォームで、オーディエンスにコンテンツを提供できるようにしたい。そうすることが我々を有利にすると思っている。

そのうち、メディアの自然淘汰があるはずだ。そのとき、多数派に合わせてコンテンツを作成できる「最強のメディアブランド」だけが生き残るだろう。「オーディエンスがたったひとつのプラットフォームから、我々パブリッシャーのコンテンツを探したがっている」というのは、誤って導き出された前提だ。

ニュースサイト「NowThis」
製作クリエイティブ部門バイスプレジデント
スティーブン・ベルサー氏

新しいプラットフォームが興隆すれば、パブリッシャーはどのプラットフォームと協力関係を築くか、よりコントロールできるようになるだろう。

すべてのソーシャルプラットフォームは、それぞれとても独特なオーディエンスを持っている。そのためより効果的にコンテンツターゲットの絞り込みができるのだ。

いまやこれらのプラットフォーム上で収益化の機会があり、全滅することはなくなった。むしろ、我々の必要性が増すことになる。

政治ニュースサイト「The Hill」会長
ジミー・フィンケルスタイン氏

オリジナルコンテンツを生産しているのならば、プラットフォームはあなたを必要とし、あなたもプラットフォームを必要とするはずだ。

問題はプラットフォームが正しい取引を提示しているかだ。私は必ずしもパブリッシャーがすべてをプラットフォームに引き渡すことは推奨しない。だが、もし正しい条件を提供されれば、我々はそれに応えるべきだと思う。まったく不安に思っていない。

ニュースサイト「Vocativ」
コンテンツ・オーディエンス戦略担当バイスプレジデント
スージー・バニクリム氏

パブリッシャーがユーザーの消費行動と闘わなければいけないという考え方は、あまり理解されないだろう。人々の行動が変わり、それに反して動こうとすれば、置いてけぼりを食うことになるからだ。

テレビはラジオを殺さなかった。ソーシャルメディアは出版を殺さなかった。見つけるべきは、正しいバランスなのだ。パブリッシャーはオーディエンスの多様化を受け入れ、ひとつのプラットフォームに重度に依存することを避けなければいけない。賢く立ち回れれば、パブリッシャー、プラットフォームともに良好な関係を築けるはずだ。

Ricardo Bilton (原文 / 訳:吉田拓史)