ビューアビリティの「二重規範」に戸惑う媒体社たち:グループMが求めるより厳格な基準

英広告企業WPPのメディアバイイングユニットであるグループM(GroupM)の定める厳しいビューアビリティ(可視性)は、パブリッシャーにとっては厄介な問題だ。事実、あまりに厳密なことから、米DIGIDAYがこの記事のためにパブリッシャー6社に話を聞いたところ、録音録画して構わないという幹部はひとりもいなかった。ある幹部は「アップフロント(先行投資)の時期なんだよ」と語った。

世界の広告支出のおよそ3分の1を管理するグループMの影響力は大きい。そんなグループMは、ビューアビリティに関して、メディア評価評議会(MRC)が定める業界水準よりも厳しい定義を選んでいる。

ディスプレイ広告については、100%のインビュー(In-View :画面上に表示された)インプレッションを要求し、動画の場合は、動画プレイヤーの100%がインビューで、広告の半分が音声付き(かつ自動再生なし)で見られることを求めている。これに対しMRCが承認した基準は、ディスプレイ広告は50%のインビューが1秒間、動画は50%のインビューが2秒間で認められる。

グループM・コネクト(GroupM Connect)の会長、ジョン・モンゴメリー氏は、「広告を見てもらえる機会がないのなら、当社のクライアントには意味がない」と語った。それでもたくさんのトップパブリッシャーが、グループMの基準に不満を漏らしている。

MRCよりはるかに高いハードル

あるデジタル専業パブリッシャーの営業責任者は、「グループMの方針の根本的な問題は、MRCよりはるかにハードルが高い点で、とりわけ動画については、エピソードを丸ごと扱うところでなければ、彼らが取引において求めるものを満たすのは難しい」と語った。

また、デジタルと印刷媒体の両方を扱うパブリッシャーのある収益責任者は、「グループMは大きいため、第2の基準だと考える必要がある」としたうえで、「そんなものは存在すべきではない。すべてのエージェンシーが同意できるひとつの基準がなければ、何もかもが信じがたいほど困難さを増す」と訴えた。

結局のところ、ビューアビリティがデジタル広告の契約交渉におけるテーブルステークス(ポーカーでゲームに先立ち卓上に置く賭け金)になっている状況で、グループMの基準だと、売り手が買い手よりもさまざまな意味で損をするというのがパブリッシャー側の不満だ。

基準が厳しいほど、販売できるインベントリー(在庫)は減る。これにより、一部の有力なパブリッシャーは高いインプレッション単価(CPM)で広告を販売できるようになるが、そこには負担が存在する(グループMは、条件を満たすパブリッシャーに少しくらい多めに支払うのに異存がない)。当然、MRCの基準には到達しながら、グループMがお金を出したがらないインプレッションが出てきてしまう。さらに、パブリッシャーはまた時間とリソースをかけて、サイトと広告を、グループMの基準を満たしつつユーザーに嫌がられないにデザインを変更する必要がある。

いまやグループMが基準

あるデジタルパブリッシャーの幹部は、「エージェンシーがニーズと基準を発表するときには、エージェンシーのクライアントが払う料金が下がることが条件になっている」とし、「デザインと技術から見て可能なものは何かという点が、明らかに考慮されていない」と語った。

この幹部は、業界がMRCの規則を受け入れ、その規則に従うことを支持している。しかし、自分でも認めているように、この幹部の会社は、それらの基準を「捨て去って」いる。いまやグループMが基準なのだ。

モンゴメリー氏は、「不満の大半は、表示がされないインベントリーに依存しすぎているパブリッシャーによるものだ」としたうえで、「我々は業界を、もっと効果的で信頼できる、消費者に優しい環境へと少しだけ動かしたと考えている」と語った。

向上するビューアビリティ

モンゴメリー氏はさらに、グループMがより厳格な基準を採用したあとに出会った多くの提携パブリッシャーは、積極的にサイトのビューアビリティを向上させていると語った。その結果、グループMでは現在、2012年にはおよそ25%だった全体のビューアビリティが、いまでは55~60%に上昇している。モンゴメリー氏によると、グループMのプレミアムマーケットプレイスのパブリッシャーに限ると、ビューアビリティは60~70%を越えているという。

インターネット調査企業コムスコア(comScore) の最高調査責任者、ジョシュ・キャシン氏は、次のように述べている。「これはオーディエンス測定の歴史だ。メディア運営者はいろいろと言うが、より詳しい測定ができるようになると、まずはそれが気に入らないのだ。しかし、グループMだけが買い手ではない。グループMが欲しがらない動画でも、需要があり、ほかのところが欲しがるかもしれない」。

テレビ業界には未定着

しかし、ビューアビリティが定着したわけではない。いまはビューアビリティを基準として受け入れるとしても、これをモバイルとテレビの画面にどう適用するのかについて、上位の動画パブリッシャー(実際にはテレビネットワーク)は問題があると考えている。

しかし、テレビネットワークの複数の営業幹部によると、パブリッシャーとエージェンシーの間の意思疎通には無駄があるという。たとえばある幹部は、これまでにグループM傘下のメディアプランニングエージェンシーであるMECの18人と話をしたが、その全員が同じアカウントに取り組んでいるという。

ビューアビリティと測定を巡り、同様の問題の解決にあたっている別のテレビネットワークの営業幹部は、「テレビ画面なのに、ビューアビリティをこれからどれだけ向上させることができるというのだろうか。セットトップボックスの需要はいまよりすっとあるはずなのに、ビューアビリティによるチェックを受けている」と話す。

しかし、確かに浸透している

それでも、ビューアビリティが、とりわけグループMによる、より厳格な条件のビューアビリティが浸透していることは、誰も否定しない。

テレビネットワークのある営業最高幹部は、「ビューアビリティが最初に登場したとき、グループMとの最初の話し合いのなかで、これはあなた方のスケジュールどおりに進まないだろうと我々は言った。彼らが望んでいたより長くかかり、我々が望んでいたよりも早かったのは、解決の必要がある非効率性があったためだ。しかし、それもついには解決し、ビューアビリティはいまではテーブルステークスになっている」と語った。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)
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